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アルポルト [レストラン(イタリアン、スペイン)]

 西麻布のイタリアン「アルポルト」は、予てから行ってみたいと思っていた店。
「おいしいから」と、Aが連れて行ってくれた新宿のパスタ中心の系列店が
良かったので、本店で、お料理を食べてみたかった。シェフの片岡護氏は、
日本のイタリアンの草分け的存在の有名人。

 その日は、「風邪がなおったばかりで、あまり食べられないけど飲める」という
M子さんといっしょだったので、コースでなく、アラカルトで、シェアした。
前菜盛り合わせ。

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帆立のパン粉焼き

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パスタは、
「メインをお魚にするので、ラグーソースっぽいのがいいんだけど、メニューになくて」
とソムリエ嬢に言うと、「ペンネのアマトリチャーナだったら、ワインのおつまみになって
ちょうどいいと思います。」との答。「アマトリチャーナ?」M子さんが「ほら、ベーコンと
玉ねぎのトマトソースのぶんよ」と教えてくれる。
ソースがしっかり、ペンネに絡んでいて、汁気が少ないので、ワインと丁度よかった。


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 ワインは、最初、イタリアのヌーヴォーをグラスでもらった。ジュースのように
甘かったので、スパークリングをグラスで頼み、それから、お料理に合わせて
選んでもらったのが、このボトル。「NINO NEGRI」
軽く、飲みやすく、ブルゴーニュのような味わいだった。

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メインは、魚介グリル盛り合わせ。
軽めのワインに好く合った。

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 コーヒーやデザートの写真、なくてすみません。

通り過ぎてしまいそうなわかりにくい場所なのに、長年、人気の店なのは、
やはり、お料理が美しく、工夫があって、おいしいからなのでしょう。
サービスも感じがよく、値段は安くないけれど、また行ってみたいと思う店だった。

※忙しいので、コメントへのお返事は、できるかどうか。。。


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世紀末、美のかたち展 [展覧会(西洋画)]

  職場での仲良しMが、「招待券もらったから行きましょう。紅葉が綺麗だと思うから、
カメラ持って行った方がいいですよ。」 というわけで、府中市美術館へ行った。
京王線府中駅からバスに乗ると、あまり歩かなくてすむが、この季節はひとつ手前の
東府中駅で降り、府中の森公園を散歩がてら通り抜けて行く方が気持ちがいい。
公園は米軍基地だった広い場所なので、大きなケヤキや桜の並木に、整備された
花壇、テニスコートと散歩に快適な場所。車椅子でも廻れるように全部がスロープ
になっているので、Eのお母様をお連れしたこともあった。

世紀末美のかたち展.jpg

 「世紀末、美のかたち」と銘打った企画展なので、19世紀末ヨーロッパの美術、
いわゆるアール・ヌーボーの時代の作品が展示されている。ガレ、ドーム兄弟、
ラリックなどのガラスの花器、ルドンの版画、絵、ミュシャのポスターなどが見れる。

展示は、わかりやすい形になっていた。
1.自然とかたち …… 花や蝶、水など、自然界にあるものを模様に取り入れた
のが、アールヌーヴォーのひとつの特徴。
左)ドーム兄弟の「けし模様の花器」  右) ミュシャ「百合」

けしの花.jpg       myusya.jpg  


ラリックは、トンボのブローチが有名だが、今回展示されていた「羽のあるニンフ」
(ポスター右下)も、形の美しさに加え、エナメルの緑色、金線とダイヤが輝いて綺麗。

私が一番、心奪われたのは、ラリックの蓋物「2人のシレーヌ」
水の妖精シレーヌは、旅人をとらえたら放さなかったという伝説があるが、
この水の泡の帯でぐるぐる巻きにして捉たのだろうか。

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2、文字を刻む……作品に文字を刻んだものが現れたのも世紀末芸術の特徴のひとつ。
なぜ、いきなり、ゴーギャンの絵?と思ったら、この絵に「NAVENAVE FENUA」
(かぐわしき大地)と、文字が刻まれているから。(写真左)
(写真右)ガレのカエル模様の花器にも「好かれようと気にかける」と文字がはいって
いる。 カエルがトンボをじっと見つめているが、普通、カエルはトンボを食べてしまうのに、、
好かれようとする、、真意は何?と私にはとっても疑問。

Gogan.jpg    garre.jpg


そういえば、ミュシャのポスターにはいっている文字も、文字の形がビザンティン風で、
装飾的な工夫がみられる。

 3、異形の美……端的に言うと、グロテスクなもの。たとえば、ルドンの目玉シリーズ
の黒白版画群。これはどうも好きになれない。。
ガレの「海馬文花器」も、かなりおどろおどろしい。海馬はタツノオトシゴのことだが、
愛らしい形ではなく、むしろ蛇に近く、とぐろを巻いている文様。
ドーム兄弟の作品も、蜘蛛の巣文様の壷だった。


4、光と闇……ルドンやガレは、光や闇を単なる自然現象ではなく、神秘的なもの
として捉えようとした。絵画と工芸と違う分野ではあるが、世紀末という同時代として
の共通した何かを共有している。生命力への憧れ、科学文明への関心、自然主義
への共感など、19世紀末が持っていた時代のかたち、そして未知のものを目指した
芸術家の仕事が見て取れる。

ルドンの「目を閉じて」は、いくつかのヴァージョンがあるときいていたが、これは
個人蔵(1890頃)。オルセー美術館のもの(1904)は、フランス政府買い上げ作品。
顔立ちが違う。くらべてみてください。

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ルドン「目を閉じて」(1890年頃)     ガレ 「樹陰」(1900年頃)
                           「薔薇文花器」(1890~1900年)

ガレの有名なリボンが巻き付いているような「蘭文花器」もあった。

モーリス・ドニ《それは敬虔な神秘さだった》 というパステル調の絵もよかった
窓の外から入る光が、マルトを照らし、神秘的に輝いていた。これらは、
町田市美術館のものだったので、また見れるという感覚がうれしかった。

今回の展示の花器の大半は、北沢美術館からのものだったので、これも
また見れると思いたい。

府中市美術館は、府中の森公園の中にある。公園内には、いろいろな
現代日本作家の彫刻があり、これらを見るのも楽しい。
舟越保武の「鳩を持つ少年」
ナイーブな少年のフォルムが美しい。

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まるで仏像のような穏やかな顔の少年。
鳩を慈しむかのように、大切に捧げ持つ手。
舟越さんの彫刻については、yk2さんが詳しく記事を書いてらっしゃいます。

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<追加>府中の森公園の紅葉は、始まったばかり。見頃には、ちょっと早かったよう
でした。     

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池のまわりのモミジもまだうっすらと赤いだけ。

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紅葉を探していたので、チェリーセージの赤に目がとまりました。


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秋のコンサート [オペラ、コンサート、バレエ]

  今年は、例年に比べると、コンサートに行く回数が少ない。
楽しみにしていたオペラが外人出演者のキャンセルで中止になったり、
行ってみたものの出演者交代で淋しく、、という結果の春だった。

巷では、夜の外出を控える人がふえ、どのコンサートも昨年より入場者数
が減っているそうだ。音楽家たちにも大変な年となった。

毎秋、同じ時期に、私が楽しみに出かけるコンサート2つは、例年通りの
盛況だったので、終わって会場を出るときは、いつもの満たされた気持ちと
同時にほっとする気持ちがあった。

1、大貫史朗バリトンコンサート(10月12日:銀座王子ホール)

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大貫さんは、日本で私が一番好きなバリトン歌手。
深みのある声とドラマティックな表現力に、いつも心奪われながら聴いている。
芸大在学中に「安宅賞」受賞、大学院卒業後、イタリア留学、アルド・プロッティ氏
のもとで学び、「最高」とお墨つきのメダルをもらった実力派。
コンサートのタイトル「スプレンディド」は、イタリア語で、すばらしいという意味。

わりあいと知られている曲が多いし、大貫さんの歌の合間のトークが楽しいので、
友達を誘っても皆満足して、ご常連になってくださるのがうれしい。
休憩時間にM子さんが、ワイングラスを2つ持ってきた。「あなた、これ、飲んで
ブラボーって言わなきゃ」。勇気づけのワイン(笑)。ブラボーって、思っても、
なかなか言いにくいから。
賛助出演の冨平安希子さんは、声、姿共に美しく、若いけれど堂々としたソプラノ
のオペラ歌手。



2、ヴァイオリンとピアノのデュオコンサート「La Sala」
                   (11月3日:広尾、明治屋レストラン、シェ・モルチェ)

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 フランス料理の明治屋のレストランでのディナーコンサート。
といっても、飲み物1グラス付きのコース料理で9450円だから、高くない。 
お料理内容は、昨年の記事をご覧ください

ヴァイオリンの中藤さんとピアノの新井さんは、叔母と姪の関係。
                           残念ながら私の親戚ではありません)
いつもお揃いのドレスで、上品な雰囲気のコンサート。
上の写真は、新井さん手作りのプログラム。イラストも彼女が描いている。
さらに新井さんは、趣味がフラメンコ。きりっとアップにしたヘアスタイルで、
細身の美しい人。
今回のゲストは、ヴィオラとヴァイオリンの吉田篤さん。
2つの楽器を持ち替えての演奏。
客席50の部屋なので、演奏者との一体感があって音楽に浸れた夜だった。
歌姫、N嬢(開炉だったからと着物姿)、M子さん、私の4人。



3、ベリーカフェ・青山

 明治屋でのコンサートは夜。昼間1時からは、コーラスの練習日だった。
M子さんから電話があり、「コーラスでしょ?」「そうなんだけど、起きれなくて、
まだパジャマ」「疲れてるんだから、休みなさい。夕方、この前、あなたが行きたい
って言ってたケーキ屋さんに寄ってから、広尾に行きましょ。タクシーで5、6分よ」

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青山通りと骨董通りの交差点の角にあるケーキの店、「ベリーカフェ」。
夜、ケーキのウィンドウがきらきらと輝き、たくさんのケーキが並んでいるのが見え、
目立っている。
フルーツタルトばかり10種類以上。カフェは2階なので、1階の売り場でケーキを
選んでから、階段を上がった。どれもおいしそうだったけど、マンゴと苺のタルトにした。
850円だから大きいのかな、と思ったら、普通サイズ。おいしかった。
コムサ系列の店。

明治屋コンサートの帰りは、4人でショットバーで軽く。
乗換駅で、コーラスのM氏と遭遇。「練習のあと、Iさんと飲んでたんですよ」
とご機嫌モード。「すみません、私、休んだんですけど、夕方から元気になって。。」


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モーリス・ドニ展 [展覧会(西洋画)]

 損保ジャパン東郷青児美術館で開催されているモーリス・ドニ展に行ったのは、
かれこれ1か月前。もうすぐ会期が終わってしまうので、書いておかないと。。

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 モーリス・ドニ(1870~1943)は、印象派のすぐ後、「象徴派」を代表する画家。
私は好きな画家なので、パリ近郊の彼の住居だった美術館に行ったりオルセー
で特別展
を見たりしたが、「こども」の絵がたくさんあったという印象がない。
しかし、今回は、「こどものいる風景」がテーマの展覧会。どんなのだろうと、
疑問と期待の入り混じった気持ちで出かけた。

今回展示されているドニの絵は、家族の日常を描いたもので、長い間、ひっそりと
ドニの家や親戚の手元にあったのだが、2009年に初公開された。この新しく
公開された絵を中心に昨年、オルセー美術館で、「モーリス・ドニ、子供のいる風景」
という特別展が開かれ、評判となった。その巡回展なのだろう。

 ドニは、22歳でマルトと出会い結婚。翌年、長男ジャンポールが誕生した。

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(左)マルトは黒い輪郭線ではっきりと浮かびあがるように描かれている。
(右)はだかんぼうのジャンポール。
若い母親のやさしい幸せな笑顔。絵の中心は赤ちゃん。
だが、ジャンポールは3か月で亡くなってしまう。

 しかし、その後、3人の娘が生まれ、ちらしに使われている「家族の肖像」に
ある幸せで輝いた生活がはじまった。

「子供のみづくろい」(1899)
お風呂上がりの次女の髪の水分をスポンジで拭く母マルト。
下絵では、マルトの服は暗い無地だった。絵全体、そして子供をはっきり
浮かびあがらせるために、敢えてこのストライプを選んだのだろう。縞模様服
は、「青いズボンの子供」にも効果的に使われていたのを思い出した。

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 1897年、マルトと長女と共にフィレンツェ郊外に滞在したドニは、風景、聖堂、
美術館から多くの刺激を受け、ルネッサンスの巨匠たちの模写も勢力的に行った。
パリに戻ってから、「フラ・アンジェリコ風のショーソン夫人」という聖母子に見立てた
子供を抱く夫人の肖像画を描いたり、「朝食、フィリッポ・リッピふうに」と、リッピの
古典的な画風で、赤ん坊にスープを飲ませる母親の絵を描いた。象徴主義を深める
ために古典の巨匠の研究をしていた時代である。 

 1907年、ヴェネティアに家族で旅をしたドニは、光あふれるこの場所で、
逆光に照らされた子供たちを描いた。顔にも足元にも強い光が差し込んでいる。
背景の海に浮かぶサンジョルジュ教会の建物も光を浴びてピンク色になり、
海のきらめきもはっきりとわかる。

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ヴァイオリンのおけいこ(1909)
フェリックス・ヴァロットン風の絵だが、強い光がさしているところがヴァロットンとは
一線を画している。
ドニは、子供たちをモデルに絵を描きながらも、いろいろな手法を試みた。

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 この年、待望の男の子ドミニクが生まれた。
「ドミニクの最初の一歩」(1911年)
長女ノエルがドミニクを支え、マルトは後ろで見守っている。
左に2人の女性が立っているが、白い布をまとう女性が、マルトに似ているのは、
これもマルトがモデルだから。
初めの一歩を祝うために集まった人々という配置で、宗教画のような構図。
ドニは熱心なカソリックなので、宗教画を研究していた。

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 6年後、さらにもう一人男の子、アコも誕生。
いっそうにぎやかになるはずが、妻マルトが病気で入院。入院は何年にも及んだ。
母親がいなくて、淋しいアコをドミニクが遊んであげている絵。
「活き活きして「かわいい!」と思って見たのだが、裏話を読むと胸がつまる。
「ボクシング」(1918)

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 その後、マルトは亡くなるが、ドニは、次女のヴァイオリンの先生エリザベツと結婚。
(ヴァイオリンのおけいこのモデルの人?) さらに2人の子供をもうけた。

ドニは、子供たちのしぐさを描くことによって得た手の動き、表情、身体表現などを
聖書を題材とした絵や象徴派としての絵にも応用していったことがわかり、興味深
かった。

ここで描かれている子供たちは、モデルとしてポーズをとっているのでなく、切り取ら
れた日常生活の一コマ。おすまし顔でなく、いろいろな表情があり、見ていて、和やかな
気持ちになる。
ドニをよく知らなくても、ほっとしたい時におすすめの展覧会です。


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「酒井抱一と江戸琳派の全貌」展 [展覧会(日本の絵)]

 抱一生誕250年に因んで企画された展覧会。会場は千葉市美術館。
新宿から千葉まで総武線に1時間近く乗り、駅を降りて15分歩くので、私の家から
2時間近くかかる。初めてここを訪れたのは、今年1月の「ギッターコレクション展」。
アメリカ人ギッター氏の応挙、若冲、宗達、抱一など江戸時代を代表する画家たちの
コレクション展。遠かったけれど行ってよかったという充実した内容の展覧会だった。
今回も、抱一の多芸さに魅せられ、予想以上の感動だった。

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 薄くて軽いが、写真がたくさん載っている「酒井抱一」という新潮日本美術文庫を
電車の中で読んで行ったら、本に出ていたものの本物が、続々登場。お~!
電車の中でにわか勉強をして、試験にその部分が出た時のようなうれしさ。
「あっ、同じのが出た」っていう体験。(みなさんもあるでしょ)

 会場入り口には、「桜に小禽図・柿に小禽図」(個人蔵)
おなじみの12か月花鳥図の構図。白い桜に瑠璃鳥の青、桜の木のたらしこみ、と
色合いもみごと。間近で見ると、花びら、つぼみ、鳥の羽、木の幹が本物そっくりな
までに描かれ、光琳継承のたらしこみがアクセントを添えている。
初めの一枚から見入ってしまう。

 酒井抱一(1761-1828)は、白鷺城で有名な姫路藩の大名・酒井雅楽頭家の二男と
して江戸に生まれた。酒井家は書や絵、俳句に秀でている家系であった。
兄の書に抱一画の共作、父の絵に母の句書の共作、叔父松平の絵、どれも素人離れ
の腕前。

 若い頃、二十代の抱一は、当時流行の浮世絵を描いていた。
「美人蛍狩図」(1788) 面長の顔、首をかしげたスタイルは、歌川豊春風。
10年後の「元禄美人図」(1797)は、抱一風。 着物の柄が光琳風である。   

美人蛍狩図.jpg  元禄美人図.jpg

 抱一は、37歳で出家、自由な立場になる。そのころから、光琳の琳派様式を私淑し、
光琳、乾山の構図を踏襲した「立葵図」を描いている。
抱一は、光琳の百回忌に光琳作品から100点を選んで縮図を載せた画集「光琳百図」
を作成したが、それも展示されていた。

作品は、ほぼ年代順の展示。抱一は48歳の時、身受けした吉原の遊女「小鶯」と
共に生活を始めた。「小鶯」書、抱一画の「紅梅図」は、梅の枝や幹の墨表現に
粋さがある。

「麦穂菜花図」(静嘉堂文庫)
すくっと真っ直ぐ伸びた麦に対し、曲線の菜の花。鳥の位置も好対照。
春らしいさわやかさ、軽やかさのある絵で、とても気に入った。

麦穂菜の花図.jpg

 

「四季花鳥図巻」(東京国立博物館)
琳派では、花の絵と鳥の絵は別々だったが、抱一は、花と鳥を同じ画面に描いた。
愛らしい画面構成。

四季花鳥図2.jpg


 光琳の屏風の模写と共に、抱一も屏風の作成を始めた。50代後半のことである。
四季花鳥図屏風(六曲一双) 陽明文庫
美しい。見入ってしまう。金色の輝きに鮮やかな絵。この会場で一番豪華だったと思う。
この写真は小さいが、実物は、六曲の屏風なので大きい。

四季花鳥図屏風.jpg


「青楓朱楓図屏風」は、同じく金地。左三曲が青楓一本、右三曲が朱楓一本という大胆さ。
「波図屏風」(細見美術館)は、小さい銀地の屏風だが、波の迫力が印象に残る。

「月に秋草図屏風」(旧襖二面)
月に秋草図屏風.jpg

シンプルな美しさで上品。ススキの配置が粋。現代のデザインに通じるものがある
と思う。

「十二か月花鳥図」は、いくつか種類があるが、宮内庁三の丸尚蔵館のものは、
特にすぐれていると定評がある。部屋の二面を使っての展示には惹きつけられる。
五㎝四方くらいの小さい豆画帳の十二か月花図もあり、ケースが立派だった。
持ち歩いて見るものだったのだろうか。

会場は8階と7階で、8階の絵から見る順序。7階は工芸品と弟子たちの作品。
7階の入口すぐに展示されていた着物は、「大琳派展」で光琳が模様を描いた着物
といっしょに展示されていたことを思い出した。

「白地梅樹木模様小袖」     

梅模様小袖.jpg 四季草花蒔絵茶箱.jpg


「四季草花蒔絵茶箱」は、抱一の下絵に蒔絵師「原羊遊斎」が蒔絵を施したもの。

抱一の作品は約160点、高弟の鈴木其一、池田孤邨らの作品もかなりあったが、
長くなるので割愛。 
其一は斬新な作品が多い。表装には遊び心の多いものがあり、楽しいので、
ひとつだけ貼っておく。
「夏宵月に水鶏図」(個人蔵)。
其一夏宵月に水鶏図.jpg

抱一の画業がわかる展覧会だった。花鳥画、風俗画、仏画、やまと絵、俳画など
実にさまざまなジャンルの作品を描いている。ヒポクラテス像は厳粛に、かぼちゃ顔
の吉原の置屋の主人は漫画風に、猛虎は猛々しくと、それぞれの主題を描きわけて
いる多才ぶりに改めて感心した。姫路藩主の家柄ゆえの大らかさが絵にあらわれて
いて見る者をなごませる。ますます抱一びいきになった。


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