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井上道義のミュージカル・オペラ [オペラ、コンサート、バレエ]

錦糸町の「墨田トリフォニホール」へ井上道義のミュージカル・オペラ
「降福への道」The way from surrendar を見に行った。
井上道義.jpg
指揮者の井上道義76才は、「来年2024年12月に引退」と発表している。

 音楽人生の集大成として、戦争に翻弄され数奇な人生をたどった両親の
人生をオペラにしようと、15年の月日を費やし、ようやく今、完成した。

ストーリーは、日系2世でアメリカ人である父が来日、母と結婚したが、
戦争中、敵国日本で暮らすことが難しくなり、母とともにフィリピンに移住、
戦後、命からがら帰国。戦後70年の今、平和に見える日本だが、タイトルの
「降福」は、井上の造語で、平和とその基盤の危うさを示している。


ミュージカル・オペラという言葉も井上によるもの。オペラの技法での作曲だが、
聴きやすいリズムやメロディを多く用い、歌や芝居で表現するが、
井上は指揮者なので、あくまでもオーケストラ中心の作品である。


井上道義.jpg


すみだトリフォニーホールは、オケピットが舞台の下のボックスでなく、客席と
同じ平土間である。これは撮影OKのカーテンコール後の写真だが、舞台の前に
新日本フィルのメンバーがいるのがわかると思う。


あらすじは、「両親(正義とみちこ)の物語だが、第一幕は1970年代で、画家の
タローが自分の思いを歌う。二幕が1940年代のフィリピンで、正義の派手で楽しい
生活が暗転、終戦への数年間が描かれる。第三幕は再び70年代。タロー
と子供たちが平和へのメッセージを歌う。コーラスとの大合唱は讃美歌
「主、我を愛す」のメロディを編曲したもの。
タローは岡本太郎を想定、舞台中央に岡本が価値を発見した火焔型土器
が置かれている。


総監督(指揮/脚本/作曲/演出/振付)井上道義

タロー(テノール):工藤和真
正義(バリトン):大西宇宙
みちこ(リリック・ソプラノ):小林沙羅
マミ(ソプラノ):宮地江奈
エミ(メゾ・ソプラノ):鳥谷尚子
ピナ(ソプラノ):コロンえりか


[ー(長音記号1)][ー(長音記号1)][ー(長音記号1)][ー(長音記号1)][ー(長音記号1)][ー(長音記号1)]

すみだトリフォニーホールは、東武ホテルと同じ建物なので、ここへ行くときは
いつも、東武ホテルでごはんを食べます。この日は2時開演だったでランチ。
2Fの中華「竹園」はゆったりできておすすめ。たくさん食べたいときは、同じ2F
「ヴェルデュール」のビュッフェが手ごろです。東武カードで5%引き。

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ボリス・ゴドゥノフ [オペラ、コンサート、バレエ]

新国立劇場へロシアオペラ「ボリス・ゴドゥノフ」を見に行った。
チャイコフスキーの「オネーギン」と並ぶムソルグスキーの傑作である。
雨だったので、写真がきれいに撮れてないけれど、入口の立て看板。
borisGo.jpg


「ボリス・ゴドゥノフ」はロシア、プーシキンの原作で1830年に刊行されたが、帝政批判と
いうことで、舞台初演は46年後だった。イワン雷帝亡き後の1598年から1605年までの
ロシアを題材にした歴史劇。
ボリスはイヴァン雷帝の側近で、妹と雷帝の息子の結婚により次期皇帝の義兄となった。

雷帝亡き後、皇帝の座に就いた人物。

オペラでは、先帝の皇嗣ドミトリーを暗殺させて皇帝に収まったボリスが、自分の罪の重さに苦しみ、
本当は殺されずに生きていたドミトリーだと名乗る僧侶(偽ドミトリー)の出現、挙兵に恐怖を
覚え、幻覚状態になり死に至るストーリーだ。音楽はムソルグスキー。

私が見た1994年のウィーン歌劇場日本公演の「ボリス・ゴドゥノフ」は、映画監督アンドレイ・
タルコフスキー演出の歴史を再現する壮麗な舞台だった。指揮はクラウディオ・アバド。
その時のプログラムに載っていた写真。
1994BorisG.jpg


今回の演出は、ポーランドのトレリンスキ。指揮は大野和士。
舞台を現代に置き換えているので、大道具は大きな箱3つの枠だけ。簡素。

衣装も現代なので、皇帝の衣装もカジュアル。え?ハーフパンツという感じ。
照明を用いて舞台に広がりを見せる。
舞台に立って民衆役を演じる新国立劇場合唱団のコーラスが質が高くすばらしい。
主役ボリスはバスの低音、準主役はテノールと男声中心のオペラなので、コーラスのソプラノ
の美しい声が沁みる。


公演のようすは、ボリス・ゴドゥノフ | 新国立劇場 オペラ (jac.go.jp)

ポーランド国立歌劇場との共同制作。ポーランドで先に上演予定だったが、ウクライナの
戦争で、ポーランドでのロシアオペラの上演は難しくなり、日本での上演がこの演出での
初演となった。


【指 揮】大野和士
【演 出】マリウシュ・トレリンスキ
【美 術】ボリス・クドルチカ
【衣 裳】ヴォイチェフ・ジエジッツ
【照 明】マルク・ハインツ
■キャスト:
【ボリス・ゴドゥノフ】ギド・イェンティンス
【フョードル】小泉詠子
【クセニア】九嶋香奈枝
【乳母】金子美香
【ヴァシリー・シュイスキー公】アーノルド・ベズイエン
【アンドレイ・シチェルカーロフ】秋谷直之
【ピーメン】ゴデルジ・ジャネリーゼ
【グリゴリー・オトレピエフ(偽ドミトリー)】工藤和真
【ヴァルラーム】河野鉄平
【ミサイール】青地英幸
【女主人】清水華澄 

【合 唱】新国立劇場合唱団
【児童合唱】TOKYO FM 少年合唱団
【管弦楽】東京都交響楽団
 


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ダン・タイ・ソン ピアノリサイタル [オペラ、コンサート、バレエ]

8月30日(火)四谷の紀尾井ホールで「ダン・タイ・ソン ピアノリサイタル」
を聴いた。
ダン・タイ・ソンは、ショパンコンクールで、アジア人で初めて優勝した人。
さらに昨年のショパンコンクールで、弟子の中国系カナダ人ブルース・リウが
優勝。自分も優勝、弟子も優勝という偉業を成し遂げた。6位入賞のJJジュン・リ・ブイ
も弟子である。このコンクールでは、反田恭平さんが2位、小林愛美さんが4位
と日本人もかつてない好成績で素晴らしかった。ショパンコンクールは5年に1度
の開催なので、次回挑戦はハードルが高い。
ダンタイソン.jpg


ダン・タイ・ソンはベトナム・ハノイの出身。ハノイ音楽院のピアノ科教授の
母からピアノを学び、モスクワ音楽院に留学。ベトナム戦争の最中は、ピアノが
使えなかったので、紙の鍵盤を使って練習をしたというエピソードが有名である。
現在はカナダ在住で、モントリオール大学で教えている。


この日のプログラムは、バッハ→ モーツァルト→ ベートーヴェン→ ショパン
最後にアンコールでドビュッシーと次々、異なる作曲家の作品を異なる表現で弾く。
ダン・タイ・ソンのピアノは、とにかく音色が美しい。玉を転がすような音色。
そしてフォルテはピアノが壊れるのでは、と思うほどの音を出していた。
会場中が聞き惚れている感じだったが、コロナ禍ゆえ、「ぶらぼー」が聞こえない
のは残念だった。


<プログラム>
J.S.バッハ/フェインベルク編
オルガン・ソナタ ハ長調 BWV529より ラルゴ イ短調

モーツァルト:ピアノ・ソナタ 第11番 イ長調 KV331「トルコ行進曲付き」
第1楽章 主題と変奏:アンダンテ・グラッツィオーソ
第2楽章 メヌエット 第3楽章 トルコ風

ベートーヴェン: ピアノ・ソナタ 第30番 ホ長調 op.109   第1楽章 ホ長調 
第2楽章 ホ短調 第3楽章 主題と変奏:ホ長調

~休憩~

ショパン:
  • ポロネーズ 第4番 ハ短調 op.40-2
  • 4つのマズルカ op.24
  • 3つのワルツ ヘ短調 op.70-2 /イ短調(遺作)/変イ長調 op.34-1「華麗なる円舞曲」 
  • 3つのエコセーズ op.72-3
  • タランテラ 変イ長調 op.43
  • 英雄ポロネーズ 第6番 変イ長調  op.53
~アンコール~
ドビュッシー
  • 「パックの踊り」前奏曲第一集より
  • 「風変わりなラヴィーヌ将軍」前奏曲第二集より。
 追記:ドビュッシーの「パックの踊り」、初めて聞いた曲だが、妖精パックがぴょんぴょん
 跳ねて踊っているかのようで楽しい。気まぐれで軽快な踊り。
 ダン・タイ・ソンのコンサートへ2017年に行った時の記事。

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ペレアスとメリザンド(新国立劇場) [オペラ、コンサート、バレエ]

pelleas_panf.jpg

なんで、こんなポスターなんだろう?
と思う人が多いと思う。前記事で紹介したように、メーテルリンク原作の
この作品では、メリザンドの長い髪というのが、大事なモチーフだった。
メリザンドに恋しても、兄嫁ゆえ触れることができないペレアスは、長い髪
の裾に口づけする。
19世紀末当時、男性を誘惑し破滅させる「ファム・ファタール(運命の女性)」
という言葉が流行し、文学や絵画の主題となった。ワイルドの「サロメ」が
その代表格でビアズリィの挿絵、ミュシャによって描かれたサラ・ベルナール主演の
舞台ポスターが評判になった。それらの女性は長い髪である。

「新制作」と書かれているように、今回の演出は、イギリス出身のケイティ・ミッチェル。
独自の感性と論理でのリアリティが評価されている。これは2016年に先鋭的なオペラの
上演で注目されているエクサンプロヴァンス音楽祭で初演されたもの。

新国立劇場では、芸術監督の大野和士が自ら指揮をし、東京フィルハーモニーの演奏。
大野は、ブリュッセル・モネ劇場やリヨン歌劇場でフランス・オペラを数多く手がけてきた
ので、新国立劇場着任以来、年1本はフランス・オペラを欠かさず企画している。
主役の3人は、有名劇場の舞台でその役を演じてきている人たち。
特にゴロー役は、エクサンプロヴァンス音楽祭にも出演し、ゴロー役に定評がある。

舞台装置は池の畔でもお城でもなく、現代の個人宅。2階建て。メリザンドは赤い服。
16年エクサンプロヴァンス音楽祭公演より [コピーライト]Patrick Berger/ArtComPressPelleas_Scene1.jpg

サイトでこの写真を見ていたので、驚きはしなかったが、馴染めない。
幕が開くと、寝室。白いウェディングドレス姿のメリザンドがベッドの上にいる。
そこへゴローが銃を持って、入ってくる。「えっ?出会いは森なのに、、泉はどこ?」
と思っているうちに話が進む。違和感の連続。
ドビュッシーの音楽だから、森や泉という自然の空気感がほしいのに、
この個人宅は。。。塔もなく、左隅にあるらせん階段が塔の役割らしい。
これでは「ウェストサイドストーリー」の舞台のよう。

ペレアスとメリザンドが待ち合わせる「盲目の泉」は庭のプール。
しかもメリザンドは超積極的。ファムファタルや妖精の雰囲気ゼロ。
Pelleas_Pool.jpg


さらに、メリザンドは食卓の上を傍若無人に歩いたり、ベッドに座ってるペレアスの
上に覆いかぶさったりと、行儀が悪い。奔放といえばいいのだろうか。いやいや、、。
現代に置き換えた演出といえど、私はすんなり受け入れられなかった。
最後に、この話は全部メリザンドの夢だったとわかる演出。
だから、最初の場面が寝室だったのだ。銃を持ったゴローが現れたのが夢の
始まり。黙役でメリザンドの分身が登場するが、ちょろちょろ動いて邪魔と
しか思えなかったが、これも夢だからの演出とわかり腑に落ちた。
同行の友だちが一回見ただけではわからないからと、今回2度目なのも納得。


しかし、音楽はすばらしかった。2012年版を見てから行ったので曲が頭に
残っていて、ドビュッシーの軽やかさに浸れる部分、心理的に盛り上げる
部分と緩急つけた演奏が心地よかった。
メリザンド役のカレン・ヴルシュ(ソプラノ)は、きれいな声のソプラノ。
同行の歌姫は、「声が足りない。もう少し大きな声が出ないと」と辛口。
演技部分が多いのだが、俳優なみにこなしていた。
ペレアスのベルナール・リヒター(テノール)は、ハンサム。柔和な顔立ち。
ゴロー役のロラン・ナウリはエクサンプロヴァンスでも同役を歌った人。
フランス一の迫力のあるバリトン。
日本人キャスト妻屋秀和、浜田理恵が、主役の3人に引け劣らず上手く、
自然体で役をこなしていた。


指揮:大野和士
演出:ケイティ・ミッチェル
美術:リジー・クラッチャン
衣裳:クロエ・ランフォード
照明:ジェイムズ・ファーンコム
振付:ジョセフ・アルフォード
演出補:ジル・リコ
舞台監督:髙橋尚史

ペレアス:ベルナール・リヒター
メリザンド:カレン・ヴルシュ
ゴロー:ロラン・ナウリ
アルケル:妻屋秀和
ジュヌヴィエーヴ:浜田理恵
イニョルド:九嶋香奈枝
医師:河野鉄平

合唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団


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ペレアスとメリザンド(2012年パリ・オペラ座公演) [オペラ、コンサート、バレエ]

フランスの作曲家ドビュッシー(1862~1918) は、生涯でひとつしかオペラを
作曲しなかったが、それはオペラ史に残る名作となった。「ペレアスとメリザンド」である。
原作は、「青い鳥」で有名なメーテルリンクの戯曲。
日本で上演されることが少ないオペラだが、目下、新国立劇場で公演中。見に行く予定
なので、その前にパリ・オペラ座での2012年3月公演の紹介を書いておく。
私は、NHKーBSの「プレミアムシアター」で日本語字幕で見たが、DVDも発売されている。
(DVDは英語字幕)
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ドビュッシーは、19世紀末、象徴主義、印象派の作曲家と言われている。
メーテルリンクも象徴主義の作家。リアリズムとは正反対の象徴主義ゆえ、
このオペラには、意味ありげな暗示が所々に込められていると思った。


<あらすじ>
【第1幕】いつとも知れない時代、架空のアルモンド王国が舞台である。
アルモンド王の孫のゴローは、森の中で道に迷い、泉のほとりで泣いている
美しい乙女メリザンドに出会う。ゴローはメリザンドを城に連れて帰り、結婚を
取りはからってもらうため異父弟のペレアスに手紙を書いた。
【第2幕】
ペレアスとメリザンドは「盲目の泉」に出かけた。メリザンドは
この泉に結婚指輪を落としてしまう。ちょうどその時、森で狩をしていた
ゴローは落馬で怪我をした。ゴローは怪我の看病をするメリザンドが指輪をしてないと
気付き激昂し、指輪を捜すように命令した。
【第3幕】
星空の美しい夜。城の塔の窓辺でメリザンドは長い髪をとかしていると、ペレアスが現れ、
メリザンドの美しさに惹かれる。窓辺から落ちるメリザンドの長い髪に手を伸ばし抱擁するペレアス。
その光景を見ていたゴローは、ペレアスを咎め、メリザンドが妊娠していると伝えた。
【第4幕】
その後もペレアスとメリザンドが二人でいる時があると知ったゴローは、
怒りをメリザンドにぶつけ、彼女の髪をつかんで手荒な仕打ちをします。
ペレアスは旅に出ることを決意、別れの夜、メリザンドに愛を告白、抱擁する二人。
そこへゴローが現れ、ペレアスを剣で刺し、メリザンドを追う。
【第5幕】
瀕死でベッドに横たわったメリザンドは女の子を授かる。ゴローはメリザンドに
ペレアスとのことを問うと「愛したけれど、罪は犯していない」と答え息を引き取った。

つまり、ストーリーは、美しい不思議な口数少ない女性を巡る兄弟の恋の鞘あてである。
オペラの舞台は、青みがかった照明で幻想的な雰囲気、象徴性を意識した演出。
そして、パントマイム劇のように、ゆったりとした動きで要所、要所でポージング。
衣装は白と黒。シンプルな舞台装置。兄弟2人から想われるメリザンドは美しいことが必須条件。
実際、メリザンド役のエレナ・ツァラゴワは、見とれるほど美しい。
これは始まり。ゴローが森の泉でメリザンドに出会う場面。
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このオペラには、メロディがあるアリアはなく、音楽に合わせてフランス語で
話すように歌う。曲にフランス語の響きが合う。心のざわざわ感や怒り、感情の
高揚、人の気持ちを音で表現しているとわかる。
照明の使い方が上手で、シルエットを使う表現も数か所あり、象徴的だった。
また、満月や三日月、月を照明で表していた。
不思議だったのは、塔から落ちて来るメリザンドの長い髪、これは何かの象徴
なのだろうか。


periasu2.jpg


出演:

ステファヌ・ドゥグー(Br ペレアス)
エレナ・ツァラゴワ(S メリザンド)
ヴァンサン・ル・テクシエ(Br-Br ゴロー)
フランツ=ヨーゼフ・ゼーリヒ(Bs アルケル)
アンネ・ゾフィー・フォン・オッター(Ms ジュヌヴィエーヴ)
ジュリー・マトヴェ(S イニョルド)
ジェローム・ヴァルニエ(医師)
フィリップ・ジョルダン(指揮)パリ・オペラ座管弦楽団,合唱団

ロバート・ウイルソン(演出)
フリーダ・パルメッジャーニ(衣装)
ハインリヒ・ブルンケ(照明)



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鈴木優人 バッハ、ピアソラを弾く [オペラ、コンサート、バレエ]

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鈴木優人は、指揮者で鍵盤奏者。パイプオルガン、チェンバロ、ピアノ、キーボード
と鍵盤楽器を何でもこなす。ご尊父は、著名なパイプオルガンの名手鈴木雅明氏。
友達が「鈴木雅明のパイプオルガンコンサート、行ったことあるわ。え~、もう息子さん
の時代なのね」息子の多芸さは父君以上で、このコンサートではタンゴバンドと共演した。


鈴木優人は、1981年オランダ生まれ。父は当時、アムステルダムの音楽院でチェンバロと
オルガンを学んでいた。親子とも得意なのはバッハで、バッハの曲を演奏するバッハ・コレギウム
を結成している。
今回の会場、渋谷のオーチャードホールはパイプオルガンを持っていないので、この日のために
簡易パイプオルガンが舞台に設置され、チェンバロ、ピアノが同じ舞台の上にあった。

第一部はバッハ中心。pipeOrgan.jpg
「トッカータとフーガ」から始まる。タラ・ラーン.....ジャー~ン
サントリーホールの立派なパイプオルガンの長い残響とは違うが、バッハの時代は、
これくらいの感じだったそうだ。調律もそれに合わせてるとのこと。
バッハ3曲のあとは、チェンバロを演奏。クープランの「神秘的なバリケード」は、
単純なメロディが基本だが多様な変奏が楽しい。
ラモー「めんどり」は、コッコッコッコと本当にそこにめんどりがいるかのよう。チェンバロならでは
の曲。武満徹の「夢みる雨」、これも軽やかな雨粒のようすが伝わってきた。
その後、クープランのミサ曲とバッハの小フーガ。

第二部はタンゴバンドとの共演。
BandNeon.jpg
鈴木優人は、ある時、後輩にあたる芸大の学生「鈴木崇朗」に会い、
「同じ鈴木ですね」というと「僕は鈴木3人でタンゴ・トリオをやってるんです」
それは面白い。今度4人の鈴木でコンサートをやりましょうというきっかけだそう。
なので、この日のコンサートは出演者全員鈴木さん。


バッハ「フーガの技法」ではじまる。この曲は、鍵盤楽器で演奏するように
されていながら、オープンスコアで他の楽器でも演奏できるので、主題とその模倣が
繰り返されるフーガは、テーマ+アドリブのJazzには丁度良い。
鈴木優人は、「僕がチェンバロを弾くので、順番にインバイトしてみましょう」
インバイト、これがもうジャズのノリ。
ソプラノサックスとチェンバロ。チェンバロの楚々として美しい音を追いかける
サックスがクラシックの金管楽器の音色で、格調高い演奏。次はギターが呼ばれた。

鈴木優人は、MCも上手い。簡潔で的を得てる。もっと話しててもいいのにと思うが、
すぐに楽器に戻ってしまう。
バンドネオンは、その昔、アルゼンチンに宣教に行く人たちが、パイプオルガン
を持って行かれないので、音色が似ているバンドネオンを持って行ったのだそう。
「パイプオルガンとバンドネオンのフーガ、音色が似ていることを確認しながら
聞いてください」まさにその通りだった。
この日は、ピアソラ特集で、ブエノスアイレスの春、夏、秋、冬を演奏。
私が好きな「リベルタンゴ」は、最後の曲で、鈴木優人は、ピアノを担当。
体をゆすって鍵盤を叩く姿、音は、まさにジャズメンだった。
八面六臂の活躍ぶり、Bach to Piazollaのタイトル通りの素晴らしいコンサート。
同行の友だちが「これで7千円は安いわね」と終わるなり言った。







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