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自然と人のダイアローグ展 [展覧会(西洋画)]

国立西洋美術館では、リニューアルオープン記念として、ドイツ・エッセンの
フォルクヴァング美術館の協力のもと、自然と人の対話(ダイアローグ)から
生まれた近代芸術をたどる美術展を開催中。3か月余の会期も11日で終了なので、
記憶をたどって記事にしておきます。

構成としては、西洋美術館所蔵の作品7割とフォルクヴァング美術館の作品3割
の感じだったので、いつでも見れる西洋美術館の作品(常設の記事あり)を除き、
フォルクヴァング美術館の作品を写真でピンアップ。

チラシに使われているのは、ゴッホの「刈り入れ(刈り入れをする人のいる
サン=ポール病院裏の麦畑)1889年

20220604_3340650.jpg

別のヴァージョンは、カスパー・フリードリヒ「夕日の前に立つ女性」1818年
実物は予想より小さな絵だった。

tirashi2.jpg


ゴーギャン「扇を持つ娘」1902年

gogun _ougi.jpg

ポール・シニャック「ポン・デ・ザール橋」1912年

シニャック_ポンデザール.jpg
西洋美術館所蔵のポール・シニャック「サン=トロペの港」1901年~1902年
も展示されているので、比較して見れるのが興味深い。
シニャックのサントロペ.jpg


あまりの美しさに、この絵の前にしばし、佇んだ。
テオ・ファン・レイセルベルヘ「ブローニュ=シュル=メールの月光」1900年
ほの暗い青の画面。月明かりに照らされる水面のさざ波が点描で描かれる。
男3人のシルエットがストーリーをうむ。月明かりを描いたシダネルの
「月明かりの入江」より、だんぜん、こっちの方がいいな。

レイセルベルヘ.jpg


パウル・クレー「月の出(サンジェルマン界隈)」1915年。水彩の小品。
色の美しさが際立つ。

クレー月の出.jpg

モンドリアン「コンポジション X」1912年~13年
赤-黄・青の3色の水平、垂直の線からなる有名なコンポジションより前に描かれた。

モンドリアン_コンポジション.jpg

エミール・ノルデ「木材の積み込みⅠ」1911年
荒々しいタッチで強い色彩のエミール・ノルデは生命力あふれる作品。
以前、パリのグランパレで「ノルデ展」を見て以来、気になる画家。

エミールノルデ.jpg


アクセリ・ガッレン=カッレラ「ケイテレ湖」1906年
西洋美術館に新収蔵の絵。
ガッレン゠カッレラは、近年、国際的に高くj評価されているフィンランド の画家。
「ケイテレ湖」は彼の代表作。

カッレラ_ケイテレ湖1906.jpg

写真に加工をした作品で注目されているゲルハルト・リヒター「雲」1970年。
昨年、ポーラ美術館が作品を30億円で落札し、話題になった。
rihita-.jpg


さきほどのシニャックの作品のように、同じ作家の西洋美術館とフォルクヴァング美術館
作品を比較して見れる展示方法のところは他にもあった。
ギュスターヴ・クールベ《波》 1870年 左がフォルクヴァング美術館、右が西洋美術館。           

クールベ2.jpg

ホドラー「モンタナ湖から眺めたヴァイスホルン」1915年
デザインのような風景画。ホドラーのもくもく雲、好きです。

ホドラー.jpg


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ルートヴィヒ美術館展 [展覧会(西洋画)]

国立新美術館へ「ルートヴィヒ美術館」を見に行った。
「ルートヴィヒ美術館」は、ドイツ・ケルン市にある美術館で、20世紀初めから
現代までの作品を
多く所有している。
tirashi.jpg
私は、20世紀美術が好きなので、パリでは、ルーヴルに行くよりポンピドゥ美術館
に行くほうが多い。
20世紀美術は、「へぇ~、こんなのもあるのね」と感心したり、「これ!」と笑い
ながら見たり、気楽に楽しめる。

最初の絵は「ヨーゼフ・ハウプリヒ博士の肖像」1951年 オットー・ディクス
(写真なし)
オットー・ディクスは、ポンピドー・センターで見た絵「ジャーナリストの肖像」
が忘れられない。これ女の人よね、、だけど、こんなに風刺? という衝撃の絵だった。
ヨーゼフ・ハウプリヒ博士は、ドイツ現代美術のコレクターで作品をケルン市に寄贈。
この美術館の中核になっている。
この肖像画は依頼されて描いたものなので、ディクスといえど風刺はなし。知性と品に
あふれた肖像画だった。

並んで展示されていたのは、
「ペーター・ルートヴィヒの肖像」1980年 アンディ・ウォーホル
シルクスクリーンで転写した顔写真に手描きで加えた赤い輪郭線。さらに透過性の
ある青を重ね、次に赤を、緑をという肖像に色彩を加えるウォーホル流。
ウォーホル.jpg


(1)ドイツ・モダニズム
さきほどのオットー・ディクスと並んで風刺の名人といえば、ジョージ・グロス
(ポンピドゥーで見た絵はこちら。横浜美術館の絵はこちらこれもいい。

「エドゥアルト・プリーチュ博士の肖像」1951年 ジョージ・グロス
Gross_DrBriche.jpg

ちょっとクセのある表情。本人は気にいってたかしら?
エドゥアルト・プリーチュ博士は美

術史家で、ナチスの芸術政策に加担。
ナチ嫌いのグロスが描いてるのだから、ダンディな服装の紳士だが、一物ありかな。
座っている椅子は肘掛けが木製だから、当時流行りのリートフェルトかしらと
思ったり、、いろいろ想像して見るのが楽しい。


カンジンスキー「白いストローク」1920年
絵の具を置いたパレットに白いストローク、一筆。
抽象画のカンジンスキーなのに具体的にものが見える作品。
Kandinski.png

ヤウレンスキー「扇を持つおとぎの王女」の派手な色づかいを見た途端、bunkamuraで
見た「カンディンスキーと青騎士展」が良かったことを思い出した。
フランツ・マルクの「牛」1913年は牛と馬が描かれている。私はbunkamuraでの「牛」
3頭の色違い牛のほうが好きだった。
マックス・ベックマン「月夜のヴァルヒェン湖」1933年「恋人たち」1940‐43年
私はどうもベックマンは好きになれない。

レームブルックふりかえる女のトルソー」1913年 精神性の高い彫刻と言われてる

バルラハ「うずくまる老女」1933年 小さな木彫だが三角形構図で精神性が高い。


(2)ロシア・アヴァンギャルド

マレーヴィチ「スプレムス38番」一番上のチラシ写真の左側の絵。
ウクライナ出身。旧ソ連で最初に抽象画を描いた人物。
私は、マレーヴィチの働くおじさんの絵シリーズが、人形のようで
かわいくて好きだ。同じく人形のような服が派手なおばさん。
ゴンチャローヴァ「オレンジ売り」1916年
ゴンチャローヴァ.jpg


(3)ピカソとその周辺
モディリアーニはピカソの周辺に分類されていた。
「アルジェリアの女」1917年
Modiliani.jpg

マティス「静物」1941年
Matisse.png


この美術館は、ピカソ作品を多く持っているので有名。
ピカソ「アーティチョークを持つ女」1941年
第二次世界大戦中の絵。アーティチョークは棒のような武器。左手の爪は尖っている。
まさに今、戦おうとする女。
Picasso.jpg

ピカソ「頭部の描かれた長方形皿」1948年
戦後には、色彩共々こんなに穏やかになり、ユーモアを感じさせる。
自分の部屋に買ったこの絵葉書を飾った。
Picasso頭部の描かれた長方形皿1948.jpg

(5)1960年代から現代まで。ポップアートなど
リキテンスタイン「タッカ、タッカ」1962年
兵士は疲労困憊。毎日少ない睡眠で空腹、細菌や感染症に悩まされながらも戦い
続ける。タッカ、タッカは大砲の音。ベトナム戦争の戦場だろうか。
ぱっと見は、悲惨さを感じさせないコミック調。
リキテンシュタイン.jpg

ウォーホルの「二人のエルヴィス」1963年は、等身大で西部劇姿の拳銃を構えた
エルヴィス写真が2つ並んだもの。思わず「あら、エルヴィスが、、2人も」と
友だちと笑う。
さらに笑ったのは、カーチャ・ノヴィツコバ「ハシビロコウ」2014年
アルミニウムで出来ている。撮影可マークあり。
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チラシの写真、右側の作品は、
モーリス・ルイス「夜明けの柱」1961年
カラーフィールド・ペインティングというジャンル。

 友達と一緒に、あ~だ、こうだと(小声で)言いながら見て、楽しいひととき
でした。かなりすいてたので、「暑いし、よくわからないしと敬遠されるのよ。
来たら面白いのにね」と、誘った時は、渋った友達が帰りには上機嫌だった。

コメントでわかったのですが、ルートヴィヒ美術館展は、2010年に横浜の
「そごう美術館」で開催されています。yk2さんが記事を書いています。


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ボストン美術館展(東京都美術館) [展覧会(西洋画)]

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「ボストン美術館展に行きたいけど、あなたは、ボストンで行ってるから、
見たものばかりでしょ。行かないわよね」とM子さんが言ってきた。
手許にあったパンフを見たら、見たことがあるのは、1点だけ。
なぜなら、この展覧会は、ボストン美術館にある日本絵画の里帰り展で、
日本初お目見えのものが数点。ボストン美術館は、日本美術だけで10万点
所蔵しているので、実際に見に行っても展示されているものは、ごくごく
一部で、いつも変わらずあるのは、障子の部屋に飾られている「大日如来像」くらい。


会場に入ると、まず目に飛び込んでくるのが、2枚の肖像画。
メアリー王女、チャールズ1世の娘」1637年 ヴァン・ダイク。
ヴァン・ダイクは、ファン・ダイクともよばれる。
ベルギー・アントワープの裕福な家庭の出身でルーベンスの筆頭助手を務めた。
芸術好きの英国チャールス1世に招請され、王の一家や貴族たちの肖像画を多く描き、
英国肖像画の発展に寄与した。
この絵は、ボストン美術館の所蔵品の中でも有名な絵であり、ほぼいつも展示されて
いるので、私も何回か見ている。6才の王女が大人の正装と同じドレスを着ているので、
とても違和感があり記憶に残っている。ドレスの描写がすばらしい。
ヴェラスケスの「マルガリータ王女」のような愛らしさがなく大人びた顔立ち。
PrincessMary2.jpg

この絵の横にあるのが、ナポレオンの肖像画。
戴冠式の正装をしたナポレオン1世の肖像」1812年 ロベール・ルフェーヴルと工房
豪華な衣装の描写、金の刺繍が盛り上がって見え、実際の刺繍のように見える。
Napoleon.jpg


第一室は、「力を示す」というタイトルなので、2つの肖像画の他に
エジプトの「ホルス神のレリーフ」、30㎝くらいの石片の一部にハヤブサの
頭部がある。
古代エジプトのペンダントも展示されていた。
古今東西の芸術品を所蔵しているので、ムガール帝国時代のインドのもの、
南宋時代の「龍虎図」、朝鮮王朝の「架鷹図」、日本の刀剣もあった。

素晴らしかったのは、「平治物語絵巻 三条殿夜討巻」鎌倉時代、13世紀後半。
最初に載せたチラシの絵で、日本絵巻史上最高傑作と言われている。
描かれているのは、藤原信頼と源義朝らが後白河上皇の御所である三条殿を襲撃し、
上皇を拉致した場面。そばで見ると、戦いの混乱の中のそれぞれの人の動き、
弓を構える者、馬で走り去る者の表情までがはっきり見える。

第二室は「聖なる世界」というタイトル。
エル・グレコの大きな絵が目にとまる。
祈る聖ドミニクス」1605年頃
ドラマティックな雲。聖ドミニクスの背後には十字架にかかるキリストが
描かれている。

saint_dominic_greco.jpg


日本の平安時代の仏像、大日如来坐像(1105年)も展示されていた。
大日如来は密教の教主で天照大神と同一視される。所々、金箔がわずかに残っていた。
私がボストンで見たものと同じなのだろうか。大日如来坐像だけでも、何点かあるのかも
しれない。
華厳経(二月堂焼経)」は、東大寺に伝来した紺紙に銀字で書かれた経で、楷書の字が
美しい。表装がモダンだと思ったら、杉本博司が巻子であったものを表装に変えたそうだ。
展示される時、巻子より見やすい。


第三室は、「宮廷のくらし」というタイトルで、王侯貴族や枢機卿など権力の座にいた
人びとの贅沢な暮らしぶりを見ることができる絵や工芸品、宝飾品が展示されていて
華やかだった。
「灰色の枢機卿」1873年 ジェローム
パリに今もあるパレ=ロワイヤル宮殿の大階段が舞台の作品。
聖書を読む前方の修道士に向かって、色鮮やかな服を身にまとい頭を下げる貴族たち。
当時、ここはルイ13世の宰相リュシリーの館、この修道士はリュシリーの腹心で、
「灰色の枢機卿」よばれるほど力を持った黒幕だった。大きな絵で印象に残る。

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「1902年8月のエドワード7世の戴冠式にて国家の剣を持つ、第6代ロンデンテリー候爵
チャールズ・スチュワートと従者を務めるW・C・ポーモン」1904年 サージェント
長いタイトル。王様かと思ったら貴族。目を惹く立派な衣装だが、第一室のナポレオンの
戴冠式の正装には負ける。
charles_stewart _bySargent.jpg
ムガール帝国では、
「モンスーンを楽しむマハーラージャ、サングラーム・シング」1720年~25年頃。水彩画
統治者サングラーム・シングが郊外の宮殿を訪れたときの様子を描いている。
屋上から広大な領土を眺めるサングラーム・シングが上段で、下段では傘を捧げ持つ3人の
侍女を従え宮殿に入るサングラーム・シング。彼に権威が集まっているとわかる。

OldIndia.jpg


一番目の保養になったのは、エメラルド6カラットが中央に配置された
アメリカの大富豪、マージョリー・メリウェザー・ポストのブローチ

ナポレオン皇妃ジョセフィーヌのために、セーヴル磁器製作所で作られた
平皿「マルメゾン城の植物のセルヴィス」1803~1804年は、絵柄が
上品で、落ち着いた雰囲気がすてきだった。セルヴィスは食器セットのこと。



第四室は「貢ぐ、与える」というタイトルで、外国への貢ぎ物がなされる場面
を描いた絵の展示。
「韃靼人朝貢図屏風」伝狩野永徳 桃山時代 16世紀後半
韃靼人(ダッタンじん)とは、モンゴルの騎馬民族のことで、上部に貢ぎ物を積んだ
唐舟に乗った一行が描かれ、下部にはそれを受け取る準備をしている馬に乗った韃靼人
たちが描かれている。狩野永徳が、外国どうしの貢ぎ物の様子を描いていることに、ほぉうと思った。

第五室は「たしなむ、はぐくむ」、権力者たちは芸術家のパトロンとなり、工芸品にも
すばらしいものが登場した。
ギター(キタラ・バッテンテ) ヤコポ・モスカ・カヴェッリ イタリア 1725年
象牙、鼈甲、真珠母貝など豪華な素材を使用している。金属弦。見とれるほど美しい。
Guiter.jpg
このギターの時代ということで、カナレットの「サン・ジョルジョ・マッジョーレ聖堂」
を描いた絵もあった。

左:「メアリー・トッド・リンカーンのブローチ」アメリカ大統領リンカーンの妻メアリー。
大変な浪費家で宝石が大好きだったそう。ダイヤモンドをふんだんに使い金とエナメルで
縁取り。イヤリングもあった。
右:「日本風のブローチ」ラクロシュ・フレール社 1925年頃
ラクロシュ社はフランスの宝石ブランド。ジャポニスムの影響が濃いアールデコ様式。
縁取りのある長方形にダイヤモンドを敷きつめ、日本画的な白い余白を作り、ルビーで
梅のような花を表現している。英国王ジョージ5世の妻が注文。孫の結婚式のお祝いに
贈った。
Broach_mary-todd-lincoln150.jpg  日本ふうのブローチ_ラクロシュ社200.jpg
「吉備大臣入唐絵巻」 平安時代後期〜鎌倉時代初期 12世紀末
遣唐使として海を渡った吉備真備は高楼に幽閉され、難題を吹っかけられるが、
先に入唐して現地で亡くなった阿倍仲麻呂の亡霊(赤鬼)の力を借りてこれを
退ける話を絵巻にした。鎌倉絵巻の傑作。
絵の下に説明がついているので、この箇所はこう、とわかりやすい。見に来ている
人たちが全員、ここで文字を読みながら絵と照らし合わせるので混みあう。
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急いで駆けつける場面の描写、漫画で笑える。この図柄のTシャツを売っていた。
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日本初公開の狩野派の絵もあった。
狩野山雪「老子・西王母図屏風」 江戸時代 17世紀前半
狩野探幽「楊貴妃・牡丹に尾長鳥図」平安時代後期~鎌倉時代初期
 
修復して日本初公開の孔雀図」 増山雪斎 江戸時代(1801年)
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フェルメールとオランダ絵画展 [展覧会(西洋画)]

4月3日で終わってしまった展覧会です。
予約制だったので、Webの予約ページに行ったら、1週間前で、ほぼ満杯。
夜間開館の4月1日、5時がとれました。
みごとな桜だったので、撮影している人が大勢。頭が入らないように
撮ったら、看板がちょん切れました。

東京都美術館.jpg


今回の「フェルメールとオランダ絵画展」の目玉作品は、フェルメールの
「窓辺で手紙を読む女」。
この絵は、2005年、1972年に来日したのだが、その時は、背景に何もなし。
fermel2005.jpg
ところが、最近の放射線を使った研究で、「この絵の背景には、キューピッドの絵が
描かれていたのだが、フェルメール没後の数十年後に、塗りつぶされた」とわかり、
大規模な修復が行われ、元の姿になり、今回、日本で初公開。

1フェルメールえはがき窓辺.jpg

このキューピッドの絵とほぼ同じようなものが、「ヴァージナルの前に立つ女」
の壁にもかけられていることからも、まさにフェルメールの筆。
なぜ塗りつぶされたのかは、諸説あって、まだ明確な答えはでてないそう。
mozさんの記事に、説明があります)

2フェルメール ヴァージナルの前に立つ.jpeg


17世紀オランダ絵画は、印象派に次いで、日本に来日する機会が多い気がする。
だから、17世紀オランダ絵画というと、風俗画、肖像画、風景画が連想され、
レンブラント、ライスダール、フェルメール、ヤン・ステーン、フランス・ハルス
の名前が思い浮かぶ。

レンブラントが妻を描いた「若きサスキアの肖像」1633年が、まず第一室にあった。
大きなつばの帽子の下で、光が顔、首、肩に差し込み、そこだけが明るく描かれている。
写真で見ていた時は、おばさんっぽかったのだが、実際の絵の中のサスキアは、はにかんだ
表情に愛らしさが伺えた。衣装の描写が際立っている。シルクの質感、透け感、金糸の細かい
刺繡は金が輝いていた。

レンブラント・サスキア2.jpg


写真はないが、ピーテル・コッドの「家族の肖像」1643年頃
レンブラントの「夜警」の中央の人物のような白い大きなレースの襟がついた
黒い服(たぶん、その時代の正装だったのだろう)を着た男たち。女性や子供も
大きな白い襟の服。服装から裕福な家庭とわかる。手前には、白に黒のブチの犬。
犬には「善良、忠実、正義」の意味があるので、画中に使われることが多い。

フランス・ハルスの「灰色の上着を着た男の肖像」1633年頃 も写真はないが、
黒いつば広帽子に灰色の繻子の服。白いレースの大きな襟が目をひく。

ヘラルト・デル・ボルフ「手を洗う女」1655~56年
奇妙な題材に思えたが、手を洗うという行為は、清純を意味し、足元に「忠実」を
意味する犬がいることから、若い女性に求められるのは「純潔」という教訓的な絵。
銀色の繻子のドレスの光りかたが半端ない。

4手を洗う女.jpg


同じくヘラルト・デル・ボルフの「白繻子のドレスをまとう女」1654年以前。
後ろ姿の絵がハマスホイの静寂さを思い出す。


ハブリエル・メツー「レースを編む女」1661~64年頃
こちらを見る女性の美しい!お人形のような顔立ち。
こちらも繻子のスカートが輝く。白いふわふわの毛の縁飾りがついた上着は、
フェルメールの絵にも何度か登場する。(フェルメールのは黒でなく黄色)
見えにくいが、左下にはネコが足温器の上にちょこんと。猫は官能の象徴。

5レースを編む2.jpg


同じくハブリエル・メツー「鳥売りの男」1662年
これも教訓画。白い毛のふわふわがついた赤い上着の女性は娼婦だそうで、
鶏は性的な意味を持つ。男が鶏を差し出しているので、「正義」の象徴の犬が
吠えている。説明がないと、現代ではこういう意味は絵から読み取れない。
6・4メツー鳥を売る男.jpg
メツーは他に、締めた鶏を開いた窓から、部屋の中にいる女性に見せている歯が抜けた
老婆を描いた「鳥売りの女」があった。

珍しい鶏を描いたメルヒオール・ドンデクーテル「羽根を休める雄鶏」制作年不詳
中央の真っ白な雄鶏はトルコ産の「サルタン」種。右後ろに「アジア産孔雀」と
「アメリカ産七面鳥」(暗くて見えないかも)。
ドンデクーテルは鳥を描いては、天下一品。鳥のラファエロと呼ばれたそうだ。


7.2022羽根を休める雄鶏.jpg


ヨセフ・デ・プライ「ニシンを称える静物」1656年
ニシンを称えるというタイトル通り、ニシンを称える詩文が中央に吊るされた
ニシンに守られて配置されている。鉛色の光、ニシンの鉛色、白いテーブルクロス
が際立ち、ビールのグラス、パン、皿の上には、ニシンの切り身。
当時のオランダでは、ニシンが重要なたんぱく源だった。
6-にしんを称える250.jpg


ワルラン・ヴァイヤン「手紙、ペンナイフ、羽根ペンを留めた赤いリボンの状差し」
1658年  だまし絵。そばに寄って見てもリボンが本物に見えてしまう。立体的。

7no2だまし絵.jpg


ヤン・デ・ヘーム「花瓶と果物」1670~72年頃(写真なし)
黒が背景の季節を問わないたくさんの花の絵は、デ・ヘームの定番。


ライスダール「城山の前の滝」1665~70年
割合大きな作品なので、雲の様子と水の勢いが真に迫る。
中央に二階建ての家が見え、人が2人、家の方に向かって歩く姿が見える。
雄大な景色の中で、和む一コマになっているようだ。

8ライスダール城山の前の道.jpeg


ヤン・ステーン「ハガルの追放」1655~57年頃
旧約聖書にのっている話。
アブラハムは妻サラとの間に子供がいなかったため、サラは女奴隷のハガルを
アブラハムに差出し、イシュマエルが生まれた。数年後、サラ(90才!)に子供が
生まれたため、ハガルとイシュマエルは家から追い出される。別れを惜しむ場面。
イシュマエルは無邪気に犬に話しかけている。

9ハガル.jpg

同じく、ヤン・ステーンの「カナの婚礼」1674~78年頃(写真なし)は、
手前にほろ酔いでけんかになりそうな男2人、ソファーにもたれかかる女、
奥に見える祝宴も終わりの頃だろうか、キリストはどこに?左上、ほの暗い
中に浮かび上がる。


ヘンドリク・アーフェルカンプ「そりとスケートで遊ぶ人々」1620年頃
オランダは溜池が多く冬には凍るので、スケート場となる。夕暮れなのだろうか、
オレンジ色とブルーの空が美しい。こういう大勢の人が三々五々遊ぶ姿の絵では、
一人一人の様子を細かく観察するのも面白い。

10アーフェルカンプそりで遊ぶ人々.jpg


終わった展覧会ですが、これから先にオランダ絵画を見る手引きになれば、
と思い記事にしました。

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メトロポリタン美術館展・後編 [展覧会(西洋画)]

2,第二室 絶対主義と啓蒙主義の時代 前編のつづき

9、ニコラ・プッサン「足の不自由な男を癒す聖ペテロと聖ヨハネ」1655年
横165㎝の大きな絵。
聖書「使徒行伝」3章に基づく絵。プッサン晩年の作で、輝かしい色彩は、古代絵画に
倣っている。プッサンはルイ13世の首席宮廷画家だったが、その地位を捨て、若い頃
学んだイタリアに移住し、古代、歴史、自然を生かす宗教画や風景画を描いた。
この絵は、ラファエロの同じ主題の絵から着想を得たのだろうと言われている。


二コプッサン‗足の不自由な「男を癒す聖ペテロ.png


10、フェルメール「信仰の寓意」1670年
メトロポリタン美術館は、フェルメール作品を5点持っていて世界一である。
フェルメールらしくない仰々しい女性と思っていたのだが、支援者からの
「信仰」を表す絵を、という注文なのだった。
頼まれたフェルメールは、信仰をどう擬人化するか考え、
「イコノロージア」と言う本を参考にした。白(純潔)と青(天国)の服を着た
女性が壇の上に座り、片足を地球儀の上に置き、教会が世界の上に立つことを
示している。背後にはキリストの磔刑の絵がかかり、女性の横のテーブルには、
十字架、聖餐杯、ミサ典書が置かれている。左脇、上からの豪華なタピストリーは、
この室内空間を礼拝堂のように区切っている。
天井から下げられたガラス玉に光の反射で事物が映り、左上が明るくなっている
ことから、光の効果がはっきりわかる描き方は、フェルメールの技である。
フェルメール信仰の寓意.jpg


11、ヴァトー「メズタン」
メズタンという名前は、イタリア生まれのコメディ、即興劇のキャラクターである。
メズタンは惚れやすく、恋に溺れ、報われない恋に悩む従者。背後に見える大理石の
女性像に恋してるメズタンはギター片手に愛の歌を歌う。優雅な構図で、メズタンの
肌の描写がルーベンス風の色調と評されている。
ヴァトーは、「シテ島の巡礼」が代表作。
この絵は、私がメトで買った「美術館ガイド」の表紙に使われている。
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12、ブーシェ「ヴィーナスの化粧」1751年
この絵はルイ15世の寵妃ポンパドゥール伯爵夫人の化粧室にもう一枚の絵と
対で飾られていた。ブーシェは裸体画では、ルーベンス、ルノワールと並ぶ腕前で、
ルイ15世の首席画家をつとめ、ポンパドゥール夫人がパトロンであった。ヴィーナスの
アトリビュート(象徴物)として、天使と鳩、貝殻の形をした水盤が置かれている。
ブーシェ」_ヴィーナスの化粧.jpg


13,マリー・ドニーズ・ヴィレール「マリー・ジョセフィーヌ・シャルロット・
デュ・ヴァル・ドーニュ」1801年
逆光の中に浮かぶ美しい人。実施にこちらを見つめているかのよう。端正に描かれている。
窓の外には、小さく見えるのは楽しそうに歩く恋人たち。
この絵は長らく、新古典主義のダヴィッドの作品と思われていたが、「1801年のサロンの
展示風景」という版画の中にこの絵があるとわかり、ダヴィッドはその年出品していなかった
ことから、女性画家マリー・ドニーズ・ヴィレールの作品と判明した。腰にサッシュベルトを
しめた女性のロングドレスは当時の最新スタイルである。
この時代、女性は美術学校に入ることが許されなかったので、絵は個人的に学ぶしかなかった。
マリー・アントワネットの肖像画を多く描いたエリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブランは、
画家の父に学び、画商と結婚したので、画家として自立できた。
マリー・ドニーズ・ヴィレール
は、ヴィジェ=ルブランの20年後に生をうけたが、今、残る真筆は3点しかない。
マリージョセフィーヌblog.jpg


3,第三室 革命と人々のための芸術

1、ターナー「ヴェネツィア、サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂の前廊から望む
1835年頃
英国の風景画家ターナーは、頻繁に旅をしたが、中でも、ヴェネツイアは最も刺激的な
場所だった。ゆらめく光と真珠色に輝く大気の中に浮かぶ建物を122㎝の画面にみごとに
映し出している。
ターナーヴェネツィア.png


2,クールベ「漁船」1865年
写実主義のクールベは、人物画と風景画が多い。海を初めて見たのは22才の時だった
そうだが、人生の後半には海や波、海景を多く描いている。私は西洋美術館の「波」
の力強さが好きだが、これは穏やかな波。反射光でオレンジ色がはいる灰色も空、
ブルーグレーの波と美しい穏やかな色合い。上のターナーの海の輝きとは異なる静けさ。
クールベ.jpg


3,コロー「遠くに塔のある川の風景」1865年 (写真なし)


4,ドーミエ「三等客車」1879年
ドーミエは、20年以上もの間、三等客車に乗る人々、待合室の人々を油彩、水彩、
リトグラフで描いている。ブルジョワ生活を鋭く風刺する政治評論家でもあった。
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5,ゴヤ「ホセ・コスタ・イ・ボネルス」(通称ベビート)1828年頃(写真なし)
ベラスケスの「マルガリータ王女」も可愛いけれど、同じスペインのゴヤが描いた
この裕福な家庭の男の子のあどけなさも印象に残る。
白いツーピースの上に金モール付きの深緑のベルベットのジャケットを着て、
右手に羽根飾りのついた帽子、左手におもちゃの木馬の手綱を握っている。
薄い茶色の髪の毛。5~6才くらいだろうか。


6.マネ「剣を持つ少年」1861年 (写真なし)
モデルはマネの息子だが、一緒に暮らす親密な仲ではなかった。10歳の誕生日に
父のためにベラスケス絵画ふうの衣装を借りてポーズをとる。気取った表情でなく、
マネに向かって、「これでいい?」と言ってるかのようだ。


7.ルノワール「ヒナギクを持つ少女」1889年 (写真なし)
金髪、バラ色の肌の少女が服と共にルノワール独特の背景色に溶け込む。手に持つ
ヒナギクの白と赤い芥子が鮮やか。


8,ドガ「踊り子たち、ピンクと緑」1890年頃
ドガには踊り子たちを描いた絵がたくさんあるが、緑の衣装は珍しい。
全体の色彩も豊かな色合いになっている。
doga.jpg


9,ゴッホ「花咲く果樹園」1888年
一緒に行った友達に「今日見た中で何一番良かった?」ときいたら、
「ゴッホ、あんな穏やかなゴッホの作品は、初めてみたわ。足元草は大きな
点描だけど細いし、うねうねしたところもないし、好きだわ。亡くなる少し前
なのかしら」亡くなったのは1890年。「花咲くアーモンドの木」も穏やかで
丁寧な筆致の作品だったと思い出す。
花咲く果樹園.png

10,セザンヌ「リンゴと洋梨のある静物」1891~92年頃 
セザンヌの作品にはリンゴ、洋梨、オレンジ、プラムが多く登場する。それらは、
セザンヌが暮らしていたエクス=あん=プロヴァンスの特産品であり、長持ちする
ので、セザンヌが配置を変えたりしながら観察しても様子が変わらないので都合が
よかった。セザンヌは形に立体感を与えるため色のグラデーションでなく、異なる
色を使った。例えば、下のリンゴは、赤、ピンク、黄色、緑と塗り分けられている。
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 11,モネ「睡蓮」1916~1919年
モネは40年以上もの間、ジヴェルニーで暮らし、時間と共に変化する光を観察・
研究しながら。池の睡蓮を描いた。
この作品では、池は柳の反映によって緑色に色づけされ、睡蓮の葉は紫と青、根は白、
花は赤で示されている。
2022モネ睡蓮.jpg

紙面の都合上、ここで紹介しきれなかった絵がたくさんあります。
傑作ぞろいなので、ぜひ、ご覧になってください。(5月30日まで)
予約をおあすすめします。





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メトロポリタン美術館展・前編 [展覧会(西洋画)]

メトロポリタン美術館展を国立新美術館で見た。
作品の貸し出しをあまりしないメト美術館だが、今回は「ヨーロッパ美術部門」の
大々的な改装のため、重要な作品群が大阪・東京にやってきた。

サブタイトルは「西洋絵画の500年」、つまり、15世紀からの重要絵画作品が
年代順に展示されている。

1,第一室 信仰とルネサンス
重厚な青い壁の部屋は、入るなり、荘厳な気持ちにさせてくれる。
600年も前の絵がこんなに綺麗な状態で、金がピカピカ輝いているのに驚く。
テンペラ画は油絵よりも経年劣化が少なく、修復もなされてるだろうが、
今なお光輝き、活き活きとした絵の魅力に引き寄せられた。
1,フラ・アンジェリコ「キリストの磔刑」1420~30年
フラアンジェリコ キリストの磔刑.jpg

2,カルロ・クリヴェッリ 「聖母子」1480年頃(写真なし)
ロンドン。ナショナル・ギャラリー展で名前を覚えた画家。ヴェネティアで活躍。
北方ルネサンスの影響か、大きなリンゴときゅうりが聖母の顔の両側にあった。


3,ダビデ・ギルランダイオ「セルヴァッジャ・サッセッティ」1487年
(写真なし)テンペラ/板
婚約記念の若い女性の肖像画。赤いサンゴのネックレスと大きな真珠と奇石の
ペンダントが控えめな服を際立たせていた。

4,ラファエロ・サンティ「ゲッセマネの祈り」1504年 油彩/板
ラファエロは若くして頭角を現し注文が多く来ていた。これは21才の時の作品。
均整のとれた構図、人物の端正さはこの頃から表れている。
ラファエロ_ゲッセマネ.png


5,ドッソ・ドッシ「人間の三世代」1515年頃(写真なし)油彩
面白い絵で印象に残った。画面は森のような風景画である。
左端。木の下に若い男女、それを岩陰から見る男の子と女の子。
右奥には木陰で愛を語る老年の男女。関係がない3世代のカップルである。


6,ピエロ・ディ・コジモ「狩りの場面」1494年 テンペラ画 (写真なし)
横に長い画面。テンペラ、油彩/板に移し替え
背景の薄暗い森の奥で火の手があがり、動物たちが逃げ出している。
逃げて、画面手前に現れた動物たちは、人間(ケンタウロスやサテュロス)から
襲撃を受ける。死は生き物に平等に来るという訓戒。ヒエロムニス・ボスにも似た
画風。残酷さとグロテスクが同居。


7,ヘラルト・ダーフィット「エジプトへの逃避途上の休息」1512~15年油彩/板
気品あふれる聖母子。青い服のマリア。後退してゆく街並みは、画家ダーフィット
が住んでいるネーデルランド。背景の高い木々の森には小さくロバに乗った聖母子
の姿が見える。中央の聖母子の左横にはアダムとイヴを想起させるリンゴの実が
ついた小枝、右横には、魂の救済を意味するツタが見える。空からの光が地平線上
で消える色のグラデーションが美しい。
背景の上にポンと聖母子を置いたかのような遠近法。
ヘラルド・ダーフィット_エジプト逃避途上の休息.jpg

8,フラ・フィリッポ・リッピ「玉座の聖母子と二人の天使」1444年頃 テンペラ、金/板
分解された三連祭壇画の中央パネルなので、縦長の絵。
色大理石の玉座にすわる聖母子の威厳、聖母の金の光輪がすばらしい。
フィリッポ・リッピ玉座の聖母子.jpg


9,ルカス・クエラーナハ(父)「パリスの審判」1528年頃 油彩/板
クラーナハ展でも、ルーブルでも見た絵。クラーナハのこの主題での絵は少なくとも12枚
あるそうだ。


10,エル・グレコ「羊飼いの礼拝」
1605~10年 油彩/カンバス
中央にいるキリストに光が当たっている。みんながキリストの誕生を祝っていると、
一目でわかる構図。白の使い方が効果的。
エルグレコ_羊飼いの礼拝.png

11,ティツィアーノ・ヴェッチェッリオ「ヴィーナスとアドニス」1550年代 写真なし)
ヴィーナスは、狩りに出ようとするアドニスが怪我をするのではないかと
引き留める場面。豊満な身体のヴィーナス。かなり大きい絵。


2,第二室 絶対主義と啓蒙主義の時代
1,ルーベンス「聖家族と聖フランチェスコ、聖アンナ、幼い洗礼者ヨハネ」1630年代初頭
ルーベンスは大きな絵が多い。これも大きな画面に6人が並ぶ。

2,サルヴァトール・ローザ「自画像」1647年頃
葬礼のために頭に糸杉の冠をつけ、筆で哲学者セネカの本の上に置かれたドクロに
「やがて いずこへ 見よ」と書いている。


3,ピーテル・クラウス「ドクロと羽根ペンのある静物」1628年
17世紀にオランダで流行したドクロのある静物画は、世のはかなさを戒めている。


4,バルトロメ・エステバン・ムリーリョ「聖母子」1670年代
赤の外衣と青い布をまとった聖母は幼子を見下ろしながら、将来を憂える。
幼子が丸々としてかわいい。背景は何もなく茶褐色だけで塗られているが、
聖母子には後光がさしている。


5、カラヴァッジョ「音楽家たち」1597年
カラヴァッジョ20代の作品。写実が素晴らしい。静物画家の工房で働いていたので、
花や果物を描くのが上手い。
Caravajo音楽家たち.jpg



7、レンブラント「フローラ」1654年頃

フローラは、春、花、豊かな実りを司る古代ローマの女神なので、ティツィアーノも
同じ主題の絵を描いている。この絵は、構図やフローラのポーズにティツィアーノの
影響が見られる。背景の色はレンブラントの肖像画によく使われる色。

レンブラント「_フローーラ.png


8、ジョルジュ・ラ・トゥール「女占い師」
この絵は展覧会のチラシに使われているので、今回の目玉先品と言えよう。
女占い師は、右端の老婆で、占いのカードを中央の若い男性に見せている。
このカードによるとあなたの運勢は、、と男性の興味をひくことを言う。
その間に一味の3人の女たちが男性から金品を盗もうとしている場面。
ルーヴル美術館の「いかさま師」も同様の主題の絵ですね。
女占い師.jpg



後編に続く




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