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オルセー美術館その2(2023年春) [外国の美術館、博物館]

前記事にものせたゴーギャンだが、展示のの入口には彫刻「オヴィリ」
が置かれてる。奥に見えるのは、「自画像」1893年
 ☆オヴィリについての説明は、コメント欄のcocoさんへの返事にあります。
31Gaugun_Chamble.jpg


1,ロートレック
卓越したデッサン力で、一瞬の動きをとらえ、観察力で人物の内面性を
さらりと映し出す。写真のような生き生きした構図も特徴。
「手袋をはめた女性」1890年   カートン紙の上に油彩

36Lautrec_La femme aux gants.jpg

37Lautrec2mai.jpg

左がJustin Dieuhl 1891年 右がHenri Samary
左の女性がいる場所は、ロートレックの父の庭。服はロートレックがよく
使うブルーに紫のライン入りだが、スカーフが赤と補色効果。


2,ルノワール「大きな裸婦」1907年
後期の代表作。輝きを帯びた色彩。

38Renoir.jpg


3,ルドン「Domecy男爵の城の内装、壁の装飾画」1901年
「ダイニングルームの壁を夢のような想像の花で埋め尽くしたい」と制作途中で
語ってたそうだ。。

39Rudon.jpg

2つのパネルは対で、黄色い太陽が輝く右、銀色の月の左。

40Rudon_panel.jpg


4,点描画の5人。
4-1、スーラ「高潮のベッシン港」1888年
Port-en-Bessinは、ノルマンディにある小さな漁村。
夏にスーラはいつも風景画を描くために海岸に行っていた。
強い光が崖や崖へ続く道、水平線にあたり輝いているが、港には誰もいず、
見捨てられた海岸のようでメランコリック。

41Seurat_Avant port maree haute.jpg


4-2,シニャック「ジュヌヴィリエへの道」1883年
スーラに学んだシニャック。似ている色使い、画風。
42Signac.jpg
4-3シニャック「ラ・ロシェルの港への入港」1921年
点描画を開発したスーラは31歳で亡くなったため、シニャックが跡を継ぐ。
シニャックはスーラより明るいはっきりした色を使い、点も大きめ。
左側の建物がLa Tour de la Chaîne、右側がTour Saint-Nicolas de La Rochelle。41Signac_Port de L'Loche.jpg

 4-4,アンリ=エドモン・クロス「夕方の風」1893年
夕焼け色に染まった海辺。木立で休む女性たちが描かれている。
女性たちのポーズが、シャヴァンヌの『海辺の若い娘たち』に似ていると言われている。
43Edmond-Cross_The evening Air.jpg


4-5,ジョルジュ・モレン「ハーモニー」(公園)1891年

ジョルジュ・モレンはベルギーの画家で、エミール・クラウスに絵を学ぶ。
1891年から93年までは、点描作品を制作した。

42Georges Morran_Al'harmonie.jpg


5,メアリ・カサット「庭の少女」1880年
少女は、かぎ針でレース編みをしている。当時、裕福な家庭の娘は、
自分で作ったレース編みの品、花瓶敷、テーブルクロスなどを持って
嫁いだ。自分自身も裕福だったカサットは、ブルジョワの日常生活を描いて
人気があったが、モデルだった姉を亡くしてからは、母と子を描くようになった。
Cassatt20188020Jeune20fille20au20jardin.jpg


6,ベルト・モリゾ「ブーローニュの森のベンチにて」
この緑色はモリゾがよく使う色合い。優雅でのどか。

44Morissot_Sur un banc du bois de Boulogne.jpg

「穀物畑(ジェヌヴィリエの麦畑で)」 1875年
モリゾは23歳のとき、風景画でサロンに入選した。
その10年後の作品である。2019年にオルセーで開催された「ベルト・モリゾ展」
では、この絵が看板に使われた。ジェヌヴィリエは、パリ郊外で、この絵にある
ようにこの時代に都市化がすすみ、畑の向こうには家や工場が見えている。
49Cassatt_jeune fille au jardin.jpg



7,モネ
7-1,「ジベルニーでの舟遊び」1887年
深い緑色と服の白との対比が、水面に映ったとき、さらに美しい。
モデルは、オシュデ家の3姉妹。後ろの2人、シュザンヌとブランシュ
だけを描いたのが、西洋美術館の「舟遊び」である。
モネは晩年、戸外の人物像を描かなくなるので、これは最後の試みだろう。
47Monet_Le barque a Giverny.jpg


7-2「積みわら:夏の終わり、朝の光」1891年。
太陽の光を受けて刻々と変化する「積みわら」色彩を眺めながら、
モネは何枚もの絵を描いた。結果、約30点の「積みわら」を制作した。
48Monet_Paille fin de ete.jpg
7-3,「ルーアン大聖堂」左は陽光、右は正面。
並べて展示してあった。これも何枚もあるはず。

51monet.jpg


8、カイユボット「プチジュヌヴィリエの庭のひまわり」1885年
カイユボットは、1881年にセーヌ川のほとり、アルジャントゥイユの近く、
プチジュヌヴィリエに土地を購入し、移り住んだ。
51Caillebot_Sunflower.jpg

 


「屋根眺め(雪の効果)」1878年
カイユボットのアパルトマンはパリの中心地、高い所の部屋を持っていた
ので、そこから外を見下ろす図の絵をいくつか描いている。
54Caillebotte_tView de toits de neige.jpg



9,ジャン・ベロー「聖トリニテ教会のミサの後で」1890年
1890年のパリのようすがよくわかる絵。大人も子供も教会のミサには、
きちんとした服を着て行くので、服装を見るのも楽しい。華やかな時代のパリ。
56Berrad_AlfredStevance_bonheur famille.jpg
絵を見たい気持ちが先走り、写真は、記録程度でいいわと思ったら、この記事を書くのに、
絵のタイトルや制昨年の字がはっきり見えず、探すのに時間がかかりました。
次回は、ちゃんとタイトルを別に撮ってこないと。



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フランクフルト現代美術館とリービークハウス [外国の美術館、博物館]

前の記事で、フランクフルトのシュテーデル美術館を紹介しました。
シュテーデルから歩いて行ける範囲の2つの美術館もおすすめです。

1,リービークハウス
シュテーデル美術館へ向かって、川べりの道を歩いていたら、立派なお屋敷があり、
古代彫刻の美術館と書いてあった。(入口の写真はLiebieghaus のサイトからお借りしました)

lh_eingang_tor.jpg


誰もいなかったが、「開館中」と書いてあったので、受付で入場料を払い入った。
静かで、自分の足音だけが響く。部屋ごとにギリシア彫刻が置かれている。
カメラを持っていなかったので、以下は図録の写真から。

Liebieg_PlastikRoom.jpg

半円形のアトリウムがあり、この彫刻だけが置かれていた。
Myron作「アテナ」1世紀 そのレプリカで5世紀のもの。
これがこの美術館でのお宝作品。

Liebieg_6.jpg

半円形のアトリウムは外から見ると、六角形になっている。
庭はフランクフルト随一と言われていて、庭にも彫刻が置かれていた。

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先ほどの「アテナ」。アテナは戦いの女神なので、強そうな彫刻が多いが、
これは気品ある美しさ。
よく見ると、頭に「ゴルゴン」の仮面をのせている。ゴルゴンは恐ろしい。
目を合わせたら石になるという言い伝えがある。そういえば、クリムトに
「パラス・アテナ」という金ぴかの絵があったと思い出す。

Liebieg_Athene2.jpg

「ヒョウに乗ったアリアドネ」Johann Heinrich Dannecker 1812~14
"Ariadone on the panther"
作者のダンネッカーは、19世紀ドイツを代表する彫刻家。

Liebieg_Plastik.jpg


この建物はリービーク男爵の邸宅として建設された。1910年当時の写真があった
ので、その頃、建てられたのだろう。
インテリアはドイツらしく派手さはないが重厚で斬新。
古代ギリシア彫刻が中心だが、エジプトの石のレリーフ、彫刻、19世紀のもの
と幅広い年代の彫刻が約3000点ある。
全部が展示されているわけではないので、コレクションを持っているお宅に
伺ったような感覚で部屋をまわりながら見れる。居心地がよかったので、
「アテナ」と「アリアドネ」の優美さにしばらく見とれていた。



2,フランクフルト現代美術館

観光の中心地レーマー広場からすぐの場所にある。三角地を利用して建てられた
ユニークな建物。(写真はWikipedia のサイトからお借りしました)


220px-Museum_fuer_Moderne_Kunst_Portalseite.jpg

アンディ・ウォーホル、ロイ・リキテンシュタイン、ロバート・ラウシェンバーグ、
フランシス・ベーコンなどニューヨーク派の作品が多い。オブジェ、写真、広告など
多岐にわたる展示で楽しめる。村上隆、写真家アラーキーの展覧会もあったそうだ。
建物の造りも面白い。


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シュテーデル美術館(フランクフルト) [外国の美術館、博物館]

ここへ行ったのは、20年以上前。カメラを持たないひとり旅だった。
だから写真はないが、パンフと買った絵葉書が、整理をしてたら出てきた。

パンフ1ページ(表紙)
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当時は、パリへの往復チケットを買うと、ヨーロッパ内へ1か所、無料で
行けたので、フランクフルトへ行くことにした。
パリでの宿のE子を誘ったら、
「フランクフルト、美術館もソーセージも興味ないわ。一人で行ってらっしゃい」

駅に近く美術館に歩いて行ける安全なホテル、インターコンチネンタルを予約した。
シュテーデル美術館は、銀行家シュテーデル氏のコレクションで、1818年に開館、
1878年にマイン川のほとりの現在の場所に堂々とした立派な建物を作った。
上のパンフにあるように、コレクションがすばらしい。


右上はボッティチェリ「若い女性の肖像」1480年

Botticelli_.jpg


中段は、ルノワール「昼食の後」1879年
庭で昼食を終えたばかりのくつろぎの瞬間。印象派時代の作品。

Stedel_Renoir2.jpg


中段:フランツ・マルク「雪の上に横たわる犬」1910年
動物が好きでたくさん描いたフランツ・マルク。カンディンスキーの影響を受けて
描いたこの犬は、輪郭が角ばっている。
私はこの色使いが好きだ。
marc_Hund.jpg


下段:左マックス・ベックマン「サキソフォンのある風景」1926年
ベックマンは、シュテーデル氏が画家育成のために設立した美術研究所で教えていた。
しかし、ナチから頽廃芸術として弾圧されたため、アムステルダムに逃げ、戦後、
アメリカに移住した。


パンフ2ページ

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左:キルヒナー「帽子をかぶった裸婦」1910年
キルヒナーはドイツ表現主義を代表する画家。大胆なデフォルメと色使いが特徴。
ナチにより、頽廃芸術と認定されたことから悲観し、自殺をした。

中央:レンブラント
右:フレマールの画家ロベルト・カンピン「聖ヴェロニカ」1424~30年
初期ネーデルランド絵画。15世紀の祭壇画の一部。他に「聖母子」「磔刑後のキリスト」
の2枚が並んで展示されている。ヴェロニカが、手に持っているのは、ゴルゴダの丘へと
向かうイエスが疲労で倒れた時、顔の汗と血をぬぐった聖布。イエスの顔が見える。



パンフ3ページ

Stadel3.jpg


パンフに書き込みがしてあるので、誰の絵かわかる。
上段の丸い絵は、カナレット「ヴェネツィア サンマルコ寺院からの眺め」1730~40年
下段、左: マックス・ベックマン「シナゴーグ」(ユダヤ教の会堂)1919年
ドーム屋根と三日月がユダヤ教を示している。
右:ジャン・デビュッフェ

自分で書きこんでるのに、Müller  Ophelia  Hamlet und Horatio
どんな絵かわからないので、調べたら、ビクター・ミュラーという画家で、
池の畔、柳によりかかるオフェーリアの絵があった。


もう一つの書き込み「O.Müler Adam & Eva」
オットー・ミューラーの「アダムとイブ」
これは、当時の私には、衝撃だったのだと思う。現代版の男女。
OttoMuller_Adam&Eve.jpg


絵葉書を買ったのは、
クラーナハの「ヴィーナス」1532年。
上野の西洋美術館で2016年に「クラーナハ展」があり、これがメインだった。
「500年後の誘惑」というキャッチコピーがついていた。シュテーデルの所蔵品、
この展覧会の図録に、パンフ2ページキルヒナー「帽子をかぶった裸婦」は、
裸婦なのに、帽子、ネックレスという装飾品、ミスマッチな演出は、クラーナハ
のヴィーナスに基ずくものである。キルヒナーらドイツ表現主義のアーティストは、
ドイツ中世への民族主義もありクラーナハを崇拝していた。と書いてあった。

krVinus.jpg


ルドン「ヴィーナスの誕生」
海からあがって来るヴィーナス。ヴェールを被り天使はいない。
海の水の色がこの色とは。
Stadel__Redon2.jpg




パンフ4ページ

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パンフの左下にあるのが、フェルメールの「地理学者」。海図を見ているところ。
Vermeer_Geograph.jpg
後ろの家具の上に地球儀が置かれている。
ルーヴルの「天文学者」と対をなすと言われてる。

中央:ティシュバイン「ローマのカンパーニャにおけるゲーテ」1787年
ドイツが誇る文豪ゲーテはフランクフルトの生まれ。これはかなり大きな絵。

右:赤い服が強烈に目立つ。ポントルモ「婦人の肖像」1532年。
宗教画の多いポントルモの肖像画は、マニエリズムの初期と言われている。

買った絵葉書の中から
モネ ”Hauser am Wasser(Zaandam)" 1871~2年

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マネ ”La partie de croquet" 1873年

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キルヒナー"Wildboden" 1924年頃

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カール・フィリップ・フォール ”Wolkenstudie” 1815年
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雲の習作。こういう雲、あるのかな?色合いが好きだったし、デザイン性が
あって面白いと思った絵。フォールは23才で川で溺れて亡くなった。



ドイツで一番歴史が長い美術館なので、所蔵作品に良いものが多い。
2時間あれば見れる規模なので、またいつか行ってみたいと思う。


美術館のサイトで、主な所蔵作品が見れますが
日本の旅行社の案内のサイトがわかりやすいです。




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リージョン・オブ・オナー美術館(2) [外国の美術館、博物館]

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美術館からは、サンフランシスコ湾が一望のもと、海が見えて気持ちがいい。
正門を入った広場に、ロダンの「考える人」が鎮座していたが、ロダン作品がいくつもあるので、
丸天井のドームのような明るいロダン部屋がある。
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(Ⅲ)19世紀
展示室には、彫刻を適宜、配置してあり、アクセントになっている。
ロダンの師Carrier Belleuse 「スコットランドのメアリ女王」 1860年

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メアリ女王の彫刻の後ろに見える絵は、英国のラファエル前派に属する
ウィリアム・ホフマン・ハントの「誕生日」1868年
妻の21歳の誕生日の記念肖像画。ルネサンス風の構図で豪華な衣装。
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一際明るい風景で人目を惹くのは、英国人エドワード・リア 「MASADA」 1858年
MASADAは、この頃、発見されたイスラエル、死海の城址遺跡。
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フランス革命で、ロココの画風は凋落し、古典的画法の新古典主義がもてはやされた。
そして、より一層躍動感を求めた色彩豊かなドラクロワに代表されるロマン派も生まれた。
左)新古典主義の女流画家エリザベート・ヴィジェ・ルブラン「Mornington伯爵夫人」 1791年 
右)ドラクロワ「Charles de Verhinacの肖像画」 1826年


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左)カロリュス・デュラン「マリー=アンヌ・カロルス・デュラン(アーチストの娘)」
  犬と少女、かわいい! 
右)バスティアン・ルパージュ 「サラ・ベルナール」1879年
大女優サラ・ベルナール、威厳あふれる表情。手に持っているのは、竪琴を弾く人物の木彫。

名称未設定 3のコピー.jpg

 

この時代、中東(オリエント)への憧れがあり、中東を描いた色彩豊かな絵は人気だった。
ジェローム「The Bath」 1880年   目撃者のような視点で描かれた絵。
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写実主義で、貧しい庶民の生活を多く描いたドーミエ 「三等車」1856年
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(Ⅳ)印象派(1874年~ 

シスレー  ロワン河岸 Banks of the Loing 1891年
シスレーは、ロワン河岸のモレ=シュル=ロワンで晩年の10年を過ごしたので、
ロワン河岸を描いた作品はいくつもある。これは緑がまばゆく美しい。

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ピサロ 「ディエップの港」 1902年
ノルマンディ地方の港町ディエップは、ドーバー海峡に面し、ピサロの時代には、
フランスでも有数の保養地だった。ピサロにしては珍しい海を描いた絵。

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左)スーラ「エッフェル塔」1889年 
右)マネ「キリストの頭部」晩年の作品。キリストの表情を描いている。
宗教画の主題だが、描き方は近代風で注目された。
 この絵は、シカゴ美の「兵士に侮辱されるキリスト」の表情研究として描かれた。

SF_Soula_Manet.jpg   

ドガ「トロッティング(速足)で走る馬」
左後ろに、ルドンの絵。

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美しい大理石の彫刻。
ジュリオ・モンテヴェルデ「少年時代のコロンブス」1892年
左後ろは、英国のアルマ・タデマ「見晴らしのよい場所」1895年

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左)モネの「睡蓮」
右)カイユボット「セーヌ川沿いのひまわり」1885年
カイユボットはパリ郊外アルジャントゥイーユのレガッタで有名な場所に別荘を
持っていた。遠くのレガッタを庭に咲くひまわり越しに見ている。
 

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ルノワール、セザンヌ共に森を描いた風景画、ロートレック、ファンタン・ラトゥール
作品は、私にとっては平凡だったので、写真は撮らなかった。
ゴッホの栗や洋梨がある静物画、マネの少年、帽子屋など、パンフに載っている
見たい作品は、貸出中とのことだった。

もっと時間があれば、ゆっくりと過ごしたい美術館だった。
ここのチケットで、少し離れた所にあるアメリカ美術専門の美術館にも行けるように
なっていた。



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リージョン・オブ・オナー美術館(1) [外国の美術館、博物館]

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リージョン・オブ・オーナー美術館は、サンフランシスコの高台、ゴールデン・ゲイトブリッジの近くにある。
海が見渡せる風光明媚な場所に、1924年、フランスの宮殿、Palais de la Legion d'Honour
(レジオンドヌール)を真似て造られた。
入ってすぐ中央の広場に、ロダンの「考える人」がある。

所蔵品は、ヨーロッパのバロックから印象派まで、作品数は多くないが、各時代の代表的な作品
を揃えているので、美術の歴史のように眺めることができる。

(Ⅰ)17世紀

バロックの代表格ルーベンスの「ルーベンスの初期作品」展をやっていた。
左は、「ソドムを去るロトとその家族」1618年頃  中央「ライオンの穴の中のダニエル」1615年
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左の絵を見て驚いた。西洋美術館の常設に同じものがあり、長らくルーベンスまたは工房作とされてたが、
西洋美術館が1993年に綿密な調査を行ったところ、衣服の色彩の特徴などから、同時代のヤーコブ・
ヨルダーンスがルーベンスの構図をもとに描いた作品と推定されたのである。
だから、これが、本物のルーベンスね、と思って眺めた。
中央の「ライオンの穴の中のダニエル」、有名な絵だが、ワシントン・ナショナル・ギャラリー所蔵。

ヤーコブ・ヨルダーンスの「聖家族」1614年(左)もあった。
バロックの時代、アントワープのルーベンスと並んで有名だったのは、オランダのレンブラント。
"Portrait of Joris de Caullery"(右)Joris de Caulleryは、ハーグの市警団のメンバーだったそう。

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ルーベンスと同時代、アントワープで活躍した後、英国に渡り、貴族の肖像画をたくさん描いたのは、
ファンダイク。「ある夫人の肖像」1620年

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オランダのPieter Clasezの「静物画」1647年
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ジョルジュ・ラトゥールの Old Woman 1618年
ラトゥール初期の作品。スカートの絹の光沢は、光と影の画家ラトゥールならでは。
背景が中央から2色に分かれているのも面白い。
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フランス人だが、ローマで大半を過ごし、ローマの景色に理想郷を見出したクロード・ロラン。
「夕暮れのティボリの眺め」1642年 古い廃墟、滝があるティボリ、ロランが好きな夕焼け。

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(Ⅱ)18世紀
パリがヨーロッパの美術の中心地になった。バロックは衰え、風俗画、静物画が人気となった。
ワトー「4人組」1713年
背中を向けてる白い服の男はピエロ、逆端はメズタン(イタリア喜劇の定番)女性2人の計4人組。
さて、これから何が始まるのか。音楽と芸術の楽園アルカディアを思い起こさせる。
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フランスでは、優美な女性像のロココが人気となった。
ブーシェ「Competitions of Diana」 1745年
狩りの女神ダイアナが、狩りの道具を横に置いたまま疲れて眠っていると、もう一人の
女性が、羽根でダイアナの顔をなで、いたずらをしているところ。

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英国では、優美な肖像画が人気だった。
ジョシュア・レーノルズ「Anne,Townshend子爵夫人」

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イタリアのティエポロ「The Empire of Flora 花の神フローラの帝国」 1743年
ロココ調。背後には、ネプチューン(ローマ神話海神)の噴水が描かれている。
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19世紀の絵は、次回に。

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ブランディワインリヴァー美術館 [外国の美術館、博物館]

今春、フィラデルフィアに行った時の話です。
「ブランディワインリヴァー・ミュージアムへ行く?」って訊かれ、「ワイナリーはカリフォルニア
で行ったけど、こっちにもあるの?」「ワイナリーじゃなくて、ワイエスの美術館なのよ」
ワイエス美術館は、フィラデルフィア郊外。ブランディワインという名の川があるらしい。
ロングウッドガーデンに行く時、ちょっと回り道をすれば行けるから、行ってみる?」
「もちろん、行くわ!」


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この左手に正面入口がある。右手には、ブランディワイン川が流れる。
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これ、まさに、ワイエスの絵の世界の景色!
枯れ木と草の静かなたたづまい。
川縁に牛のブロンズ彫刻が寝そべっていた。美術館の建物の2階ロビーから撮った写真。
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2階のロビー
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アンドリュー・ワイエスは、ここ、ペンシルヴァニア州チャッズフォード ChaddsFordの生まれ。
父親は人気の挿絵画家で、かなり収入があったので、ここに広い土地を購入し、アトリエを作った。
ワイエスは、ここと避暑地のメイン州以外には、行ったことがなく、旅もせず、91才で生涯を
終えるまで、ここで過ごした。
従って、ワイエスの絵に登場する場所は、こことメイン州だけである。
ワイエスは、身の回りのものを注意深く観察し、デッサンを何枚も描いてから絵を完成
させた。ワイエスの人物画は肖像画でなく、一生懸命生きる人の生活を描こうとした。
ありのままを描いているので、ぱっと見、地味だが、よく見ると、力強さ、深みがある。

この美術館は、ワイエスの父、息子、親子三代の作品及び同時代のアメリカ作家の絵を
展示している。絵は、撮影禁止だったので、以下は、絵葉書から。
ちょっと驚いたのは、この豚の絵。かなりリアル。干し草の一本、一本が丁寧に描かれている。

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「スノーヒル」 Snow Hill
雪の白、みごとな明るさ。楽しくダンスをする人たち。自分の住む地域から出なかったワイエスなので、
ここに登場する人たちは、皆、ワイエスの知り合いである。

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親子三代美術館なので、アンドリュー・ワイエスの作品数はさほど多くない。
父親の挿絵は、挿絵と言う範疇にないほど、丁寧に描かれ、いきいきとしている。
息子も画家で似たような作風。周辺の風景や室内を描いた絵が多かった。
単に浴槽だけという絵は、他の人が描かない題材。

ワイエスというと、思い浮かべる絵は、「クリスティーナの世界」だが、これは、NYのMOMA蔵。
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東急文化村のミュージアムで開催された「アンドリュー・ワイエス展」の図録に使われてのは、
「春か彼方に Fareaway 」 少年の帽子があらいぐまの毛皮。
内向的に見える少年なので、遥か彼方を見つめているのだろうか。

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代表的な作品は、各地の美術館にあり、ここにはないとわかった。


案内してくれたY子が、以前ここに日本人の画家を連れて来た時、とても熱心に見てるので、
ワイエスの親戚って名乗る人が、「画家か?」とたずね、Yesと答えると、「それなら、僕のうちを
見せてあげよう。ワイエスが描いたものもあるから」と少し離れた所にある家の中に入れて
くれたのだそう。

ワイエスが描く世界そのものという場所に行けて、ワイエスの絵にいっそうの親しみを感じた。



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