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バーンズ・コレクション [外国の美術館、博物館]

今回、フィラデルフィアで一番見たかったのは、バーンズ・コレクション。

バーンズ・コレクションは、バーンズ氏の遺言で貸出禁止のコレクションなのだが、改装と
財源不足のために一度だけ、1994年GWの時に日本の西洋美術館で展覧会があった。
覚えている方もいらっしゃると思うが、連日、その混雑ぶりが報道された。
混雑に恐れをなし、「いつかフィラデルフィアで」と思っていた。

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バーンズ氏邸はフィラデルフィア郊外にあり、行きにくかったのだが、今は、市内の便利な場所に
移転し、建物も新しくなったが、各部屋の展示は、邸宅時代のままである(追記)

予約が必要と日本のネットに書いてあると、Y子に言うと、「平日はそんなことないわよ」
と断言され、実際、行ってみたら、すんなり入れ、らくに見てまわれた。


第1室
(バ―ンズの中は撮影禁止なので、展示室の様子の写真は、バーンズのサイトから借用)
http://www.barnesfoundation.org/

いきなりスーラの大きな絵「ポーズする女たち」、この絵、ここのだったのね。
前年に描いた「グランド・ジャッド島の日曜日」を背景に置き、点描画が室内でも有効と証明したかった絵。

下は、セザンヌの「カード遊びをする人たち」
そして、両横もセザンヌ。左は静物、右は「オランピア」にでてくるような漫画チックな裸婦像。
えー、こんなに全部、セザンヌ。それもいいものばかりと驚く。


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第1室の南壁面は、マティスの「ダンス」。これもかなり大きい作品。
下左の絵もマティス「座るリッフル人の男」 右はピカソ「農婦たち」シャガールっぽい絵。


北壁面:右側の一番下の段はセザンヌ。「セザンヌ夫人」や「赤いチョッキの少年」が見える。
他は全部ルノワール!それもあまり見かけない縦長の絵や横長の絵を左右対称に飾ってある。
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ルノアールとセザンヌばかり。

それも展示方法は、バーンズ氏の好みで並べられ、亡くなった今も同じ。
絵の形で並べたのだろうか?明らかに一般の美術館と違う個人美術館。


ルノワール180点、セザンヌ69点、マティス59点。
ピカソ46点、パスキン39点、アンリルソー、モディリアーニ、ドガ、キリコが各10点以上。

部屋数は24. ものすごいコレクション。特にルノワール好きは見逃せないと思う。

以上が第1室。グッズ販売コーナーに各部屋の目録を売っていた。一部屋分が11ドル。
つまりすべての部屋分を買うと、3万円近い。

第1室がすばらしかったので、この部屋のを買いたかったが売り切れだった。

しかたなく、第2室と第9室、それに好きな絵のポストカードを購入。


第2室
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下の段の右端、「ドルフィーヌ・ルグラン嬢」または「なわとびを持つ少女」1876年
たぶんフィラデルフィア美術館展で評判だった「ルグラン嬢」の妹だと思う。

左端は、モネの「アトリエ船」1876年
上の段真ん中はマティスの「黒い船」


代表作を集めた大きいサイズのポストカード
上の段右、ゴッホ「静物」1888年

中段 左からロートレック 「モンルージュ」1886年、ゴッホ「郵便配達夫ルーラン1889年、
モネ「アトリエ船」1876年、モディリアーニ「夜会服を着た赤毛の少女」1918年

下段、左からルノワール「書き取り練習」1905年、セザンヌ「カード遊びをする人たち」1890年

アンリ・ルソー「野うさぎの食事」1908年

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好きだったのは、ルノワール「ノルマンディ海岸のベルナーヴァルでムール貝を採る人たち」
「アーティストの家族」1896年 アーティスト=ルノワール、ココとガブリエルが手前にいる。

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「セーラー服の少年」1886年           マネ「洗濯」1875年
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全部で24部屋があるのだから、いろいろな画家の絵が揃っている。

ルーベンス、ティツィアーノ、ヒエロニムス・ボス、フランツ・ハルス、エルグレコ、
ゴーギャン、ボナール、ヴュイヤール、ドガなどなど。。

入場料は25ドルと高いが、それだけの価値がある。


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ロダン美術館(フィラデルフィア) [外国の美術館、博物館]

ロダン美術館が、フィラデルフィアにあるとは、知らなかった。

ロダンの作品に魅せられたフィラデルフィアの実業家が作った美術館で、入口には、「考える人」。

入場料は寄付で8ドル。つまり払わなくてもOK。

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入ってすぐの所にあるのが、なんと、これ。

横たわった肢体、死体?

「The Martyr」(殉教者) 痛々しく生々しく、、正視するのが憚られる。
地獄の門の一部として考えられたそう。


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隣は、大広間(ホール)で、室内には、天窓からの柔らかい光がさす。
脇にスツール(椅子)が置いてあるので、すわってゆっくりと彫刻を眺めることができる。


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一番手前にあるのは、「神の手」。単なる手ではなく、神が握りしめているものは私たち人間?

複雑な造形。

わかりやすいのは、左側に見えてる「The Kiss」のコピー。


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ホールの横に、それぞれ小さい部屋があり、入ったら、画家の像。
「バスティアン・ルパージュ」と書いてあった。ルパージュの絵には、ちょっと
馴染みがあるけど、こういう人だったんだと、しげしげと眺めた。
ルパージュはロダンの友人。風景を主に描いていたので戸外での制作が多かった。
だからケープつきのウールの短いコートにブーツという冬の衣装でパレットを
持つ姿でロダンは制作した。

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「Bellona」(ベローナ)は、ローマ時代の戦いの神。
モデルは妻ローズ。古代風の兜をかぶっている。
(ベローナは西洋美術館の松方コレクションにもある)

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ロダンは、若い頃、妻と共にイタリアへ行き、ドナッテッロとミケランジェロの彫刻に衝撃を
受けた。パリに戻り、人間の真実の姿を彫刻で表現しようと、「青銅時代」を制作した。
これがあまりにリアルだったので、実際の人間の型をとったのではないかと噂されるほどだった。
その疑いをはらすため、ロダンは、人間より大きい「青銅時代」を制作し、人気となった。

「ミネルバ」 大理石 ローマ時代の知恵の神。
大理石の彫刻は、気品があって美しい。


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「永遠の春」 今にも動き出しそうな姿勢。
東京上野の西洋美術館にあるのは、これのブロンズ版。


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外には、代表作「地獄の門」があった。

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<追記>
*今年はロダン没後100周年。
ロダンには、「カミーユ・クローデル」という22才下で若く美しく才能ある弟子がいた。
カミーユはロダンを尊敬し愛し、ロダンもカミーユを愛したが、内縁の妻ローズがいたため、
結婚してもらえず、ついには精神を病み入院。社会復帰はできなかった。
激情の生涯は、イザベル・アジャーニ主演で映画にもなった。


カミーユの才能はすばらしく、初期はロダンに似た力強い動的な作品だが、後には女性的感性の
やさしいものを制作している。今年3月、パリの郊外に「カミーユ・クローデル美術館がオープンした。
ロダンとの三角関係を題材にした作品「分別の年代」は、オルセー美術館でも人目を惹く。
弟のポール・クローデルは詩人で外交官。つねにカミーユの味方で姉を支えた。




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ポンピドゥー・センターの作品1920年~抽象へ [外国の美術館、博物館]

前回の1906年から1914年は、フォービスムからキュビスムへの時代だった。
1914年に第一次世界大戦が始まり、画家たちの中には徴兵される者もいたが、
大戦は1919年に終わった。モダニズムの時代が始まる。

大戦後、ドイツのオットー・ディクスは辛辣な風刺で戦後の社会を描いた。
「ブリュッセルの飾り窓の思い出」1920年
ドイツの将校が敵国フランスのシャンパンを飲み、酔って赤い顔で金髪の
売春婦と一緒にいる。キュビズム技法でガラスに映る様子も描いている。

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フェルナン・レジェの「立っているふたりの女性」1922年
幾何学的に描かれた人体だが、大らかで明るく、素朴なイメージ。
「ふたりの女性」というタイトルだから、母と子ではないのだろう。
黒髪の対称性、スカートの色の対比が背景の事物と違和感なく、戦後の
明るい雰囲気を出している。

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ホアン・ミロ「室内(農婦)」1922~23年
ミロの具象最後の作品。この後、私達に馴染みのあるミロスタイルになる。
農婦の足の大きいこと!お座り猫の威嚇っぽい表情が何とも。。
農婦がぶら下げているのはウサギ。漫画っぽい表情のウサギ。

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パブロ・ピカソ「アルルカン(アルルカンに扮する画家サルバード)」 1923年
ピカソは、生涯アルルカン(ピエロ)の絵を何枚も描いている。
喜劇を演じるアルルカンの裏にある孤独、憂欝、脆さをアーティストの自分に
重ねて、年代ごとに描いた。
ピカソはアルルカンの衣装を持ってて、それをサルバードに着せて描いた。
同じこの衣装で、サルバードはアンドレ・ドランのモデルにもなった。
この絵は、非常に丁寧なデッサンで、ダビッド、アングル風の古典的技法で
描かれている。

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ポンピドーセンターには、絵画だけでなく、デザインされた椅子や小さな彫刻
も展示されている。
下の写真の椅子は、ドイツで始まった近代的デザイン運動「バウハウス」の作品。
バウハウスのデザインポリシーは合理主義。簡潔で幾何学的なデザインは、
装飾が多いアール・ヌーヴォーへの反発でもある。
手前2つは、ミース・ファン・デル・ローエの椅子 1927年
籐とパイプを組み合わせた軽い機能的な椅子。
奥の木製学校椅子タイプは、マルセル・ブロイヤーの椅子 1922年

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奥の方の机の上に乗っているのが、小さな彫刻たち。
グレーの椅子の前、綺麗な色の幾何学的作品2つは、ドローネーだと思う。

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絵画を幾何学的な方向に進めた作品。
ロシアン・アヴァンギャルドのアントワーヌ・ペヴスナー「コンポジション(構成)」1923年
後にペヴスナーは、幾何学的な彫刻で有名になった。「平和の柱」1954年

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フランティシェク・クプカのこの大きな作品にも目を引きつけられた。
「点のまわり」Autour d'un point 

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イヴ・タンギー
「夏の4時に、希望」1929年
砂漠のような空間に骨や石が落ちている絵、という印象のタンギー。
ここでも何かが陸に落ちていて、海の上を不思議な鳥が飛ぶ。
タンギーは、見えるものではなく、無意識に感じるものを描くシュルレアリスム。
絵はストーリーが読めないが、色合いはパステル調でふんわりしていることが多い。

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ジャン・デビュッフェ
「幸せな田園風景」1944年
児童画とよばれる領域である。のどかさは伝わるが。。。

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ジャクソン・ポロック「深淵」1953年
絵筆を持って絵を描くのでなく、刷毛で空中から絵の具を流し込むドリッピング
という技法も出て来た。めちゃめちゃに流すのではなく、計算して流しているのだそう。
ポロックの作品には、数学的なフラクタクル効果が表れているので、天才的な勘で、
作品構成をわかっていたといえよう。

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セザール「圧縮」1958年
セザールはフランスの彫刻家で、このプレス機で圧縮した自動車の作品で
有名になった。これは、1960~70年の大量生産・消費社会に対するアンチテーゼ。
単なるスクラップと思う人もいるだろう。

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アルマンワーテルローのショパン」1962年
アルマンは何でも箱に閉じ込めてしまう作品で有名になった。

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最後は、ルチオ・フォンタナ「La Fine di Dio」1963年
画布に穴を開けただけの作品だが、空間を開けることによって芸術に新しい次元を
見出し、宇宙に結び付くことを願ってるのだそう。
真っ赤に塗られた画布の縦方向に、3本のかぎ裂きのような裂け目を入れた
作品も有名。

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過去のポンピドゥーセンター作品記事は、2014年春の展示、 2008年冬の展示

                 2008年冬の展示のキュビスム  2008年春の展示 


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ポンピドゥー・センターの1906年から1914年の絵画 [外国の美術館、博物館]

ポンピドゥー・センターは、フランスの現代美術館。
1905年から1965年までの20世紀の美術品を見ることができる。
(ルーヴルは中世の絵画、オルセーは近代の絵画(1905年まで)と年代的に
分けられて、収蔵されている。)

常設展示は5階だが、数年毎に大きく入れ替わる。
今回は、入ってすぐがマチスの「黒猫と少女(マルゲリータ)」1910年。
少女の強い瞳に吸い寄せられ、膝の黒猫を見落としてしまいそうになる。

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次のコーナーからは、フォービスム作品が続き、明るい色合い。
ブラックの「レスタック」L'Estaque 1906年
レスタックはマルセイユに近い小さな漁村で、ここで多くの印象派の画家が絵を描いた。
ブラックというと、キュビズムの印象が強いが、キュビズムになる前は、フォーブで
こんな明るい色彩の可愛らしい絵を描いていた。画中に描かれた小さな2人の姿が、
景色の壮大さ、大地と自然のエネルギーを際立たせている。
セザンヌは普仏戦争の間、レスタックに住み、たくさんの風景画を残している。
ブラックはセザンヌに影響を受け、レスタックの風景をいくつも描き、1908年の作品
が、事物を単純な形で表すキュビスムの創造となった。

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1906年、デュフィも明るい色彩表現。
「トゥールヴィルの広告板」
佐伯祐三もパリの広告板をいくつも描いていたのを思い出す。

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アンドレ・ドランの「タミーズ河岸」Les Quais de la Tamise 1906年
シニャックの点描の影響も見られる。

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ここからは、風景画でなく、人物画。
顔に添えられた強烈な色彩に目が行ってしまう。

ソニア・ドローネーの「眠る女性」1907年
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ピカソの「女性の上半身」 1907年
単純な形での表現が見られる。

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クプカの「黄色の連続的変化」1907年
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ローランサンの「アポリネールとその仲間たち」1909年
かなり大きな絵。
詩人アポリネールは、当時の文壇の実力者。「キュビスム」を理論的に先導し、
彼に多くの人が賛同した。絵の中央にいるのがアポリネールで、彼の周りに
、ピカソ、ガートルード・スタイン、ピカソのミューズの詩人、そしてローランサン
自身もピアノの前にいる。アポリネールはローランサンの恋人だった。
キュビスム的手法で、円形を多用した絵。
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ロシアの画家ナターリア・ゴンチャローワの「収穫物を運ぶ女たち」1911年。
当時ロシアでは、ロシアン・アバンギャルドという自国の芸術を大切にする
運動があり、素朴な民衆や労働をテーマにした絵が多かった。
この絵も、大地にしっかり足をつけ、素朴でたくましい女性たちを描いてる。

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同じ年、1911年のシャガール「ロシアとロバとその他のもの」
シャガールは、ロシアで生まれ、美術教育を受け、23才の時(1910年)パリに来た。
時代の波を受け、フォーブ、キュビスムの影響を受けた絵を描く。
この絵も、雌牛と手桶を持った農婦に幾何学的なものが見られ、色合いは青や緑の
強い色彩。下の方に、ロシアをイメージするロシア正教会が描かれている。
どこにロバ?実際ロバはいない。ロバは平和な労働者を意味するのだそう。
首が飛んでいるのに驚くが、これは夢見ていることを示してるのだそう。
私は赤い牝牛の睨む目つきが気になった。
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エミール・ノルデの「踊る人たちの絵がある静物画」1914年
ノルデはドイツ表現派の画家。(エミール・ノルデ展の記事

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マティスの「金魚鉢のある室内」 1914年
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この後、1920年代の絵画は次回に。


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バルベリーニ美術館(ローマ) [外国の美術館、博物館]

 毎日、暑いですね[晴れ]
3年前に行ったローマが記録的な暑さだったことを思い出します。
バルベリーニ美術館の記事が下書きにはいったまま、随分時間が経って
しまったけれど、載せますね。

バルベリーニ美術館は、ローマ教皇を輩出したバルベリーニ家の館で、
17世紀に建てられたバロック様式の宮殿。  (私が行ったのは2012年夏)
この建物の門は、重厚なので、映画「ローマの休日」でアン王女が滞在
する某国大使館の門として使用された。

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この美術館は、イタリア国立古典絵画館で、ラファエロの「ラ・フォルナリーナ」、
カラヴァッジョ3点、グイド・レーニ、フィリッポ・リッピなどイタリア人画家の作品を
揃えている。
ボルゲーゼ美術館は、予約しないと入れないのだが、ここは大丈夫。

美術館の入り口を示しているのは、ラファエロの「ラ・フォルナリーナ」の垂れ幕。
館内案内のパンフも、ラ・フォルナリーナ。
ラ・フォルナリーナは、ラファエロの恋人で、フォルナリーナとはパン屋の娘。

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美術館内は撮影禁止なので作品はポストカード。
部屋は時代順になっている。

フィリッポ・リッピ「タルクィニアの聖母」
リッピ初期の作品。玉座の生母。
いつもリッピの描く聖母は優雅で美しく、赤ちゃんはまんまる顔。
モデルは妻と息子フィリピーノ

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フリック・コレクションで見て以来、気に入っているブロンズィーノ。
一目で「ブロンズィーノ!」とわかる冷たく研ぎ澄まされた美しい肖像画。
「コロンナ家のステファノ4世」
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こちらも、「ヘンリー8世!」とすぐわかるホルバイン作品。
衣装が豪華。

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カラヴァッジョ「ナルシス」
ナルシストの語源であるナルシス。水に映る自分の姿に惚れ込み微動だにしない。
カラバッジョ独特の明暗で、劇的な効果を出している。
見ていると、吸い込まれそうになる絵。
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カラヴァッジョ「聖フランシスコ」
聖フランシスコは、イタリアの守護神。両手で持った頭蓋骨をじっと見つめている。
死について考えているのだろう。
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カラヴァッジョ「ホロフェルネスの首を切るユーディット」。
非常に残酷なシーン。かわいらしいユーディットが顔をしかめて、酒に
酔わせて眠らせた敵の大将ホロフェルネスの首を切ろうとする場面。
ホロフェルネスの「殺すのか!」という驚きの顔。それを固唾をのんで
見つめる老婆の表情。緊迫感にあふれている。

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カラヴァッジョのあとには、美しい少女
グイド・レーニ「ベアトリーチェ・チェンチの肖像」
気品のある美しさ。白のこの服は?気になって調べたら、これは囚人服。
チェンチ家は貴族なのだが、父親の家庭内暴力がひどかったため、ベアトリーチェは
家族を守るため、父を殺した。そのため処刑になったのだそう。この微笑は、死の直前
の無欲の表情なのだろう。
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クエンティン・マセイス「ロッテルダムのエラスムス」
マセイスは、今年のルーヴル展で見た「両替商とその妻」を描いた人。
思想家エラスムスと両替商に共通点を見つけようとしてはいけないけど、
似たところがある?

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他にも、良い絵がたくさんあった。
私が行ったときは、とてもすいていて、どの部屋もひとりでの鑑賞、ぜいたくだった。
特にカラヴァッジョの「ナルシス」と静かに向き合えたのが印象に残っている。


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メトロポリタン美術館のフランス絵画1874~1923 [外国の美術館、博物館]

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ヨーロッパ絵画の所では、「レンブラントとドガの若い頃の自画像」という特別展示が
開催されていた。美術館内は撮影OKだが、ここの部分だけは禁止だった。

レンブラントは生涯に85枚もの肖像画を描いた。ドガ(1834~1917)は40枚。
その大半は、20代の初めに描かれたが、秘密にしていたため、亡くなるまで、
わからなかった。20代初めにイタリアに留学したドガは、レンブラントを筆頭に
過去の巨匠の絵を学んだ。「紫色の帽子をかぶった若い男~レンブラントに倣う」という
タイトルのデッサンは、帽子や髪型、服が220年前の巨匠レンブラントにそっくりである。

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レンブラントとドガ、それぞれの肖像画が展示され、両者を比較した解説があった。
光の効果や技法が似ていても、二人は全く顔立ちが違うので、似ていると書いて
あっても、私には、すぐ納得できなかった。


19世紀後半、印象派がおこった頃からのフランス絵画を、絵が描かれた年代順に
載せてみた。

①マネ(1832~1883)
1874年 「舟遊び」 
マネは印象派の先駆者である。印象派が得意とした
主題は、この絵のように余暇を楽しむ人々のようすである。
水平線が無い平面的な構図は日本の版画の影響と言われている。
女性モデルは、モネの妻カミーユ。光を浴びて服の縞模様がゆらめいている。

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②シニャック(1863~1935)
1887年 「コリウール(南フランスの地名)からの眺め」
スーラの影響で、点描画家として知られているシニャックだが、これは初期の作品
なので、まだ彼の特徴の大きな点描になっていない。

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③セザンヌ(1839~1906)
1887年 「Jas de Bouffan 付近の木々と家々」
Jas de Bouffanは、プロヴァンスのセザンヌの家のそば。中央部分は緑と黄色を絵筆で
置いただけ、塗らずに、色のパッチワークのように描かれているため、落葉し、やせ細った
木々が装飾帯のように見える。 (訂正・加筆しました)

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④ゴッホ(1853~1890)
1887年 「ひまわり」
咲き終わって落ちた花の頭だけのひまわり。
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1888年 「ルーラン夫人と赤ちゃん」
ゴッホはアルルで、一緒に暮らす予定のゴギャンを待ちながら、近所の郵便配達
ルーラン一家をモデルに何枚も絵を描いた。

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⑤ルノワール(1841~1919)
1892年 「ピアノに向かう2人の娘」
フランス政府から「リュクサンブール美術館」に所蔵するための絵を依頼された
ルノワールが考えた主題は、ピアノに向かう娘たち。ブルジョワの日常生活を描いた
温かみのある絵。フランス政府お買い上げの絵は、現在オルセー美術館にある。
これは、カイユボットの所蔵だった絵。同じ主題のものは、オランジェリー美術館にもある。

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⑥ピカソ(1881~1973)
1903年 「盲人の食事」
寒色系ブルーの濃淡で表された絵。盲人の指にふれるものだけが、暖色系オレンジ
色で表されている。光の当たり方もすばらしい。

PicassoDinnerBlind.jpg

⑦アルベール・マルケ(1875~1947)
1906年 「植民地連隊の軍曹」
マルケはフォーヴィスムの画家として知られているが、激しい色調でなく、グレーや
薄い青を基調とした穏やかなものが多い。
海辺の景色が多く肖像画が少ないマルケだが、この絵では、人物よりも軍服のみごとさが
目立っている。

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⑧シャガール(1887~1985)
1911年 「パッシー橋とエッフェル塔」
シャガールはロシア出身のユダヤ人だが、パリが好きでパリで暮らした。
1911年、文明化が進む時代のパリを描いている。奥に橋があり、鉄橋の上を鉄道が
走っている。手前には荷馬車。中央にシャガールの好きなエッフェル塔が配置されている。

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⑨アンリ・マティス(1869~1954)
1923年 「スペイン女性、青のハーモニー」
モデルは真正面を向き、あたかも肖像画のようだ。同じモデルで背景が別の絵や、
服が別のもあるそうだ。

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やはり、メトは、それぞれの画家の代表作に近い良い絵が多い。 


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