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ムンク展 [展覧会(西洋画)]

 国立西洋美術館で開催中の「ムンク展」に行った。
ムンクの作品では「叫び」が有名なので、両耳を両手でふさいだポーズで「僕、もうムンクです」
と、仕事の行き詰まりを表現するひょうきんな同僚もいる。
 今回、「叫び」は展示されていないが、「不安」と「絶望」の2枚の絵を見ることができる。

「不安」                     「絶望」
   

 2つの絵の背景の空や海、道、が同じなのは、並べて飾る装飾的な壁画の意図だったから。
不安や絶望が渦巻いているのに、どこか温かみを感じる色合い。
 ムンクは、ノルウェーの画家。幼い頃、母と姉が結核で亡くなった。
印象派の時代にパリに留学し、いろいろな画風の作品を遺しているが、この展覧会は、
「壁画の装飾性」に焦点を当てたもの。北欧は冬が長いため、インテリアは温かみを
感じさせる赤や青などはっきりした色合いのもの、デザインの優れたものが多い。
ここに展示されている作品も、色がきれいで大きめのものが多く、見たあとに、
「不安や絶望」でなく、色彩の豊かさが心に残った。

「生命のダンス」
これも色がきれい。
月と水に映るT字型の長い月の影、これは他の作品にもたびたび登場。
この絵を下地に、ムンクは後に、ベルリンの小劇場のホールの壁画を仕上げた。



「声/夏の夜」
 ムンクの最初の恋人。表情が魅力的な人。
木立の中に立つ彼女。遠景に月の白く長い光。
愉しい時間を過ごしたけれど、彼女は人妻だった。



「赤い蔦」
赤い蔦のからまる家。
ムンクの描く男の人は、逆三角形の顔、まん丸の目というパターンが多い。

 

 興味をひいたエピソードは、眼科医の邸宅の子供部屋の壁画を依頼され、制作したが、
「子供部屋にふさわしくと頼んだのに、これではダメ」と受け取りを拒否された話。
その壁画が並んでいたが、「教育上好ましくない」と拒否されるのも無理ない絵。Rー18。

そんなムンクも50歳過ぎ、オスロ市庁舎のための壁画では、主題を「労働者」に決め、
「建設現場で雪かきをする人々」や、「家路に着く労働者」、炭鉱で働く人々など、
骨太の写実的な迫力ある絵を描いている。ムンクの意外な面を見た感じ。

 ↓これも晩年の作品。「橋の上の女性たち」。私が気に入った絵。
穏やかさが感じられる。 

 

 1月6日(日)まで開催中。

 


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