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デトロイト美術館展 [展覧会(西洋画)]

 デトロイト美術館には20年前に行った。でも何の絵を見たのか思い出せない。
記憶にあるのは、白亜の壮麗なアメリカン・ルネサンス様式の建物、エジプトコーナー、
立派なアトリウムのカフェ[喫茶店]。ロビーのディエゴ・リベラの壁画、デトロイトの自動車工場の
様子を描いたもの。それだけ。4~5時間いたのに。。

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ゴッホの自画像(1887年)がチラシに使われている。
アメリカの公的な美術館に初めて収められたゴッホの作品。
力強く明るい色彩と激しい筆使いが特徴。

ゴッホの自画像と対角線の位置にあったのが、ゴーギャンの自画像(1893年)。

東京都美術館で開催された「ゴッホとゴーギャン展」と、この展覧会が重なっていた時期も
あるので、両方の展覧会を見た人は特に興味深かったと思う。

展示は4セクションに分かれている。
1、印象派 2、ポスト印象派c 4、20世紀のフランス絵画 

1、印象派

モネ 「グラジオラス」 1876年頃
夏の陽の下で傘を差しているのは妻のカミーユ。
パリ郊外のアルジャントゥイユに住んでいた時の作品、

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ドガ 「楽屋の踊り子たち」 1879年頃

ドガ 「ヴァイオリニストと若い女性」 1871年頃
この時代に写真機が使われ始め、ドガも撮影をしていた。
これは、一瞬の情景を切り取ったスナップショットのような構図。
モデルはドガの妹らしい。ドガはベルト・モリゾ一家と互いの家で、時折、音楽と
会話の夕べを開催していたので、そんな折の一コマだろう。

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ルノワール 「白い服の道化師」 1901-02年
白がまぶしいほどに光り、ドレープがゆるやかに流れる。白いサテン地のピエロの服。
子供にはかなり大きいのが可愛い。モデルは次男ジャン。椅子に半座りのポーズがいいなぁ。

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ルノワール 「座る浴女」 1903-06年
ルノワールの浴女は作品数が多いので、時には、がっかりするものもあるが、これはすばらしい!
輝く肌。絵が華やいでいた。晩年、1900年以降の裸婦には、衣装が作品に描きこまれている。
ここでも左側に脱ぎ捨てられた帽子と服が見られる。

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カロリュス・デュラン 「喜び楽しむ人々」 1870年
肖像画や人物画が多いカロリュス・デュラン。時代の人気画家だった。
西洋美術館の常設「母と子」は好きな絵だが、それとは大いに違う動きのある人物。
笑う女性が実にリアル。印象派ではなく、それ以前のアカデミックな手法で描かれている。

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2、ポスト印象派

セザンヌ 「画家の夫人」 1886年頃
原田マハの著書「デトロイト美術館の奇跡」で主人公が会いたいと願っている絵がこれ。
mozさんの記事で紹介されているので、そちらをご覧ください。

セザンヌ 「サント=ヴィクトワール山」 1904-06年頃
セザンヌが描くサント=ヴィクトワール山の絵も何枚もあるけれど、これは、かなり近景。
横長ではなく肖像画のサイズのため岩山の存在感が高まっている。
幾何学的な表現の試みが手前の針葉樹林にはっきり見れた。

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ゴッホ 「オワーズ川の岸辺、オーヴェールにて」 1890年
この場所は、当時パリ市民が休日に魚釣りや舟遊びに訪れる行楽地だった。
力強いタッチ、木の葉の激しい描写と寒色系の表現。この絵を描いてしばらくして
ゴッホは37歳の生涯を綴じた。

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ルドン 「心に浮かぶ蝶」 1910年頃
落ち着いたオレンジ色の背景にさまざまな形の14の蝶が舞う。
心に浮かぶ蝶というタイトル通り、実際にいる蝶ではない。

ドニ 「トゥールーズ速報」 1892年
「トゥールーズ速報」という新聞のための広告ポスター。
女性の肢体、新聞紙が曲線、模様化された雲。アールヌーヴォー調。
女神のような女性が落とす新聞に手を伸ばす人々。

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ヴァロットン 「膝にガウンをまとって立つ裸婦」 1904年
ボナール 「犬と女性」 1924年 
縦長画面。食卓にすわるマルトは傍らの犬を見ていて顔は見えない。



3、 20世紀のドイツ絵画

カンディンスキー 「白いフォルムのある習作」 1913年
抽象画を描き始めて、数年しかたっていない頃の作品。右上に金色と青色のドームを
持つロシア教会が見てとれる。カンディンスキーは敬虔なロシア正教徒であった。

キルヒナー 「月下の冬景色」 1919年
冬景色なのに、こんなに明るい色合い。からまつの林はピンク色。
中央にぽつんと家がある。
不眠症に悩まされながら、アトリエの窓から見えた景色を描いた。
森や山岳などの自然に神秘性や崇高性を感じるドイツ的心性。

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マックス・ベックマン 「オリーブ色と茶色の自画像」 1938年
ベックマンの「ホルンを持った自画像」は、「ノイエ・ギャラリー」で見、記事にした。
松本人志に似てるとコメントをくださったかたがいたのを思い出す。

ココシュカ 「エルベ川・ドレスデン近郊」 1921年
ココシュカはオーストリア兵として第一次世界大戦に従軍した後、ドレスデンに移った。
ウィーンで修業したので、ウィーン分離派の影響を受けていたが、この絵のような
ドイツ表現主義的描写に移っていった。
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ココシュカ 「エルサレムの眺め」 1929-30年
古い建物や頑丈な砦からもエルサレムだなとわかるが、上の絵と異なり形状がはっきりしない。

ノルデ 「ヒマワリ」 1932年
少し萎れうつむき加減になったヒマワリ2本。たくさんの種がついているので、
次代への生命をつなごうとする瞬間。


4、20世紀のフランス絵画

モディリアーニ 「女の肖像」 1917-20年
楕円形の顔、長い首。恋人ジャンヌがモデルと言われている。

スーティン 「赤いグラジオアラス」 1919年頃
強烈な赤い色。強い筆のタッチ。印象に残る作品。

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マティス 「窓」 1916年
窓の線やテーブル、椅子の線が交差。ラジエーターの輪郭線と椅子の線が重なる。
空間は右奥の窓の外へとのびている。すべての形が響き合い、色の対比とハーモニー
が全体を調和させている。アメリカの公的な美術館に初めて収められたマティスの作品。

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マティス 「ケシの花」 1919年頃
華やかな静物画。背景は青い屏風。

ピカソ 「肘掛椅子の女性」 1923年頃
1920年代初めからピカソの絵の主流は古代やルネサンス美術に学んだ古典主義
になっていった。女性は古代の女神のように理想化された姿で描かれている。

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 ピカソ 「読書する女性」 1938年
恋人である写真家のドラ・マールがモデル。顔が歪み指が肥大したシュルレアリスム。
ドラ・マールは「泣く女」のモデルにもなった。


アメリカの主要な美術館は、美術に情熱を注いだコレクターに恵まれていることが多い。
デトロイト美術館には、ハドソンズ百貨店の創業者の家系のロバート・ハドソン・タナヒル
が個人で収集していたものが死後(1969年)寄贈された。今回展示されているマティス、
ゴーギャン、ピカソなどである。

[晴れ]名画揃いのとっても良い展覧会です。
展示点数が52と多くないので、疲れず、飽きずに見れますから、オススメ。
21日(土)までです。
 


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