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クラーク・コレクション [展覧会(西洋画)]

 丸の内の三菱一号館美術館の「クラークコレクション」は、今度の日曜26日まで。
2月からやっていたのに、まだ大丈夫と行きそびれ、ようやく連休中に出かけた。
お天気もよかったので、混んでいて、30分程並んではいった。

クラコレちらし.jpg

 クラーク・コレクションは、その名の通り、アメリカ人クラーク夫妻のコレクション。
ルノワールのコレクションが有名で、他にも印象派作品の良いものをたくさん持って
いる。クラーク氏はシンガーミシン設立者の孫、相続遺産でコレクションをふやして
いった。美術館はボストンからさらに列車で3時間くらいかかる場所にあるので、
実際に行くのは不便だから、今回は、良いチャンス。

 上にあるチラシの絵は、ルノワール「劇場の桟敷席にて」(1880年)
黒のドレスが少女の肌の美しさを際立たせる。白い手袋、花束を包む白い紙と
黒、白、赤の取り合わせが綺麗。もちろんルノワールなので少女の顔は美しい。

 「鳥と少女(アルジェリアの民族衣装をつけたフルーリー嬢)」(1882年)
何て色がきれいなんでしょう。しかも女の子はかわいい。見たかった絵。

クラコレアルジェリアの少女.jpg

 「金髪の浴女」(1881年)
モデルは、妻アリーヌ。あれれ、、こんな美人だった?
背景はナポリの海。光あふれる色彩豊かな景色は印象派だが、ルノワールは
イタリア旅行でラファエロのフレスコ画「ガラテアの勝利」に感銘を受けたと語っていた。
その時の制作なので、人物の描き方は輪郭をはっきり描く古典的手法である。

クラコレ裸婦アリーヌ.jpg


 「シャクヤク」(1880年) 
色鮮やかで豊かな花たち。葉の線が絵全体を引き締めている。

クラコレ芍薬.jpg

 他のルノワール作品で気になったのは、
「眠る少女」……猫を膝に抱いて椅子にすわったまま眠る少女。いつものモデルと違って
庶民階級の少女。よく見ると、猫も目を閉じて寝ている。
「テレーズ・ベラール」……背景は青、テレーズの服は青と白という色彩。控えめで
きちんとした顔つきの少女。

 会場にはいると、コローが5点、ミレーが2点、トロワイヨン、ルソーのバルビゾン派
が最初のコーナー。
 ブーダンの「港へ戻る帆船」、低い雲が迫り来て波も高くなっている。
一方、モネの「海景、嵐」(1866)は、暗い色の海。白い厚塗りの波。26歳の作品。

 1885年の「エトルタの断崖」は、画家として円熟した頃の光が輝く明るい絵。

クラコレ_エトルタ.jpg

 「小川のガチョウ」(1874年)
秋の光景。モネとしては数少ない縦長画面の景色。水面の波が手前から奥へと
視線を導く。円形の波が作品に動きを与えている。

クラコレ小川のガチョウ_monet.jpg

 モネは他に3点あった。モネとくれば次はマネだが、マネは小さな絵「花瓶モスローズ」だけ。
(下の写真左) 
花の絵で、インパクトがあったのは、ジェームズ・ティソの「菊」(1874年)。かなり大きな絵。
ていねいに描かれた菊。一見、写真のよう。印象派の人たちと同時代のティソだが、
アカデミズムの画風で上流階級の日常生活を描き、好評を博していた。

クラコレ花瓶のばらマネ.jpg   クラコレ菊tissot.jpg

カイユボット「アルジャントゥイユのセーヌ川」(1892年) 
三角形の川、手前に山道。画家が崖の上から描いているとわかる。
  
遠く地平線上に煙突や工場が見えている。近代的な産業を絵に取り込むのが
当時の流行りだった。青と緑がちょうど今の季節に呼応して清々しい。        

クラコレカイユボット.jpg


 
「おやっ、この絵はここのだったのね!」
印象派の中で唯一のアメリカ人、メアリー・カサットの「闘牛士にパナルを差し出す女」
yk2さんのカサット記事で、大きな写真のこの絵を見ていたので馴染みがあった。

クラコレ闘牛士カサット.jpg

 この絵は、カサットが画家として大成しようとしていた時期の作品(1873年)。
カサットは、はじめ、ジェローム(下の絵)に師事していたが、マドリッドでベラスケスの
絵を見て感銘をうけた。たっぷり絵の具を使った重厚さはベラスケス作品に学んだ
のだろう。

 トルコブルーに目を奪われるこの絵は、ジェローム「蛇使い」(1879年)
ジェロームは歴史画とオリエンタリズムで、時代の寵児だった。
透き通るような青の壁面のタイル装飾は、トプカピ宮殿のパネルの模写で、
蛇使いはジェロームがエジプトで見たもの。つまり、実景ではなく、ジェロームが
作り上げた光景。

クラコレ蛇使い.jpg


 ロートレック「待つ」(1888年)
ほんとに相手が来るのかしら? と見ている側が不憫になるほど。顔が見えなくても
感情は伝わってくる。非常に薄い塗りと画面と色合いが静けさを漂わせる。
 ボナール「犬と女」(1891年)
日本の版画に影響を受け、平面的に絵を構成しようとしていた試みが格子模様
の服からわかる。手前の花、後方の花の大きさの違いで遠近を表現し、装飾的。
ボナール24歳の作品。モデルは妹で、他の絵でもモデルをつとめている。

クラコレLautrec待つ女.jpg クラコレBonard.jpg

 入場制限のため30分待って入ったが、会場内は絵が見えにくいほど混まず、
きちんと見れた。会期はあと数日ですが、オススメです。


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