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フェルナン・クノップフ展~(謎めいた絵の巨匠) [☆彡Paris  展覧会]

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昨年12月にパリのプティ・パレ美術館で見た展覧会。
クノップフは、ベルギー幻想美術の範疇の人で、このブログでもベルギー幻想美術展
ベルギー王立美術館展、で取り上げているが、知名度は低い。

回顧展だったので、まとまって150点と、絵だけでなく彫刻や写真も見れた。

最初の展示は、クノップフのアトリエ兼自宅の紙で出来た模型。
この展覧会は彼の家の中にいるように、間仕切りや窓を作り、彼が気に入っていた
青色の部屋を再現と、工夫がなされていた。


初期の作品から
「フォセにて ある夕方」 1886年
モデルは妹マルグリット。若い頃に住んでいたフォッセ村。ポンと人を置いた
ように不思議で静かな絵。

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「バラと日本の扇」1888年
当時、流行のジャポニズムの影響で掛け軸ふうの縦長の作品。扇は団扇(うちわ)。

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「マルグリット・クノップフの肖像画」1887年
マルグリットは妹。クノップフのほとんどすべての作品のモデルを務めた。
モノクロの絵に金を効果的に使った祭壇のような額縁が印象に残る。

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展覧会の入り口にあった細長い大きな絵の拡大写真もマルグリットがモデル。
実物は、クノップフの自宅に飾られていた。
写真の下の方をカットしたもの。
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7人の女性たちと見えるが、よく見ると、モデルはすべてマルグリット。
マルグリットに異なるテニスウェアを着せて写真を撮り、それをもとに描いたもの。
描くプロセスも展示されていた。絵のタイトルは「記憶」1889年
写実性と非現実的な雰囲気が入り混じっている。

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フェルナン・クノップフ(1858~1921)は、
裕福な家の出身。裁判所判事であった父親の転勤で、8歳までブルージュに住む。
18歳で大学の法学部に通うが、退学し、画家を志し、王立芸術アカデミーに通い、
数回パリに滞在。ドラクロワやアングルに感銘を受け、ギュスターブ・モローとも
知り合う。
1883年にアンソールたちと「二十人会」を結成。その時の出品作品は、母が
モデルの「シューマンを聞きながら」である。

1889年、イギリスの「ラファエル前派」のウィリアム・ハント、
ダンテ・ガブリエル・ロセッティ、エドワード・バーンジョーンズらと親交を持つ。

1891年「I lock the door upon myself」
ガブリエル・ロセッティの妹のクリスティーナ・ロセッティの同名の詩にインスパイア
された絵。当時、クノップフはHypnos(ギリシア神話の眠りの神)、、人の死はHypnosが与える最後の眠り
に関心を持っていた。女性の右上にブルーの布を右耳につけたHypnosの像と一輪の芥子の花。芥子は
死の象徴で、手前にあるオレンジ色のユリは萎れている。

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1898年、「ウィーン分離派展」へ「愛撫」を出品し、クリムトの作品形成にも
影響を与えた。横長の絵。

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オイディプスとスフィンクスの出会いを描いた絵。
チーターの身体と女性の顔を持つスフィンクスが若者に顔を摺り寄せる。
スフィンクスは通りかかる者に謎を出し解けないと食い殺すというギリシア神話
がもとになっている。

スフィンクスのうっとり表情が見てとれる顔の部分を表紙にした展覧会の案内本。
やはり、これがクノップフの代表作なのだろう。

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神話の世界に惹かれたクノップフは、ブロンズ彫刻で、メドゥーサも作った。
メドゥーサなので、髪の毛はたくさんの蛇から成り、叫び、威嚇をしている。

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「眠れるメドゥーサ」1896年。身体がふくろうのメドゥーサ。不気味で恐ろしい。
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クノップフは神話の世界に惹かれる一方で、子供の頃、住んだブルージュの景色を描き、
傑作と評判になった。
「忘れられた村」Une ville abndonnee 1904年

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ブルージュの聖ヨハネ施療院(*参照)を描いた絵の写真と
マルグリットをモデルに「ヘルメスとプシュケ」を描いた絵を一つの額に
入れた作品。「Secret-Reflet」
1902年

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マルグリットをモデルにした上の絵の制作過程の写真も展示されていた。
こんなふうに衣装を着せ、ポーズをとらせるのね、と思った。


神話の世界だけでなく、日常生活の一コマも描いた。「アジサイ」1894年

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「Neve氏の子供たちの肖像」1893年

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ベルギー王立美術館展で見た黒い毛皮の襟がついた白い服の
かわいい少女の絵もあった。、

象徴的で考えさせられる絵と、和む愛らしい子供や家族の絵、神話からのイメージ絵と
多岐にわたる絵。個人蔵をたくさん集めて来ての回顧展ならでは、だった。




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