ボストン美術館展(東京都美術館) [展覧会(西洋画)]
「ボストン美術館展に行きたいけど、あなたは、ボストンで行ってるから、
見たものばかりでしょ。行かないわよね」とM子さんが言ってきた。
手許にあったパンフを見たら、見たことがあるのは、1点だけ。
なぜなら、この展覧会は、ボストン美術館にある日本絵画の里帰り展で、
日本初お目見えのものが数点。ボストン美術館は、日本美術だけで10万点
所蔵しているので、実際に見に行っても展示されているものは、ごくごく
一部で、いつも変わらずあるのは、障子の部屋に飾られている「大日如来像」くらい。
会場に入ると、まず目に飛び込んでくるのが、2枚の肖像画。
「メアリー王女、チャールズ1世の娘」1637年 ヴァン・ダイク。
ヴァン・ダイクは、ファン・ダイクともよばれる。
ベルギー・アントワープの裕福な家庭の出身でルーベンスの筆頭助手を務めた。
芸術好きの英国チャールス1世に招請され、王の一家や貴族たちの肖像画を多く描き、
英国肖像画の発展に寄与した。
この絵は、ボストン美術館の所蔵品の中でも有名な絵であり、ほぼいつも展示されて
いるので、私も何回か見ている。6才の王女が大人の正装と同じドレスを着ているので、
とても違和感があり記憶に残っている。ドレスの描写がすばらしい。
ヴェラスケスの「マルガリータ王女」のような愛らしさがなく大人びた顔立ち。
「メアリー王女、チャールズ1世の娘」1637年 ヴァン・ダイク。
ヴァン・ダイクは、ファン・ダイクともよばれる。
ベルギー・アントワープの裕福な家庭の出身でルーベンスの筆頭助手を務めた。
芸術好きの英国チャールス1世に招請され、王の一家や貴族たちの肖像画を多く描き、
英国肖像画の発展に寄与した。
この絵は、ボストン美術館の所蔵品の中でも有名な絵であり、ほぼいつも展示されて
いるので、私も何回か見ている。6才の王女が大人の正装と同じドレスを着ているので、
とても違和感があり記憶に残っている。ドレスの描写がすばらしい。
ヴェラスケスの「マルガリータ王女」のような愛らしさがなく大人びた顔立ち。
この絵の横にあるのが、ナポレオンの肖像画。
「戴冠式の正装をしたナポレオン1世の肖像」1812年 ロベール・ルフェーヴルと工房
豪華な衣装の描写、金の刺繍が盛り上がって見え、実際の刺繍のように見える。
「戴冠式の正装をしたナポレオン1世の肖像」1812年 ロベール・ルフェーヴルと工房
豪華な衣装の描写、金の刺繍が盛り上がって見え、実際の刺繍のように見える。
第一室は、「力を示す」というタイトルなので、2つの肖像画の他に
エジプトの「ホルス神のレリーフ」、30㎝くらいの石片の一部にハヤブサの
頭部がある。
古代エジプトのペンダントも展示されていた。
古今東西の芸術品を所蔵しているので、ムガール帝国時代のインドのもの、
南宋時代の「龍虎図」、朝鮮王朝の「架鷹図」、日本の刀剣もあった。
素晴らしかったのは、「平治物語絵巻 三条殿夜討巻」鎌倉時代、13世紀後半。
最初に載せたチラシの絵で、日本絵巻史上最高傑作と言われている。
描かれているのは、藤原信頼と源義朝らが後白河上皇の御所である三条殿を襲撃し、
上皇を拉致した場面。そばで見ると、戦いの混乱の中のそれぞれの人の動き、
弓を構える者、馬で走り去る者の表情までがはっきり見える。
第二室は「聖なる世界」というタイトル。
エル・グレコの大きな絵が目にとまる。
「祈る聖ドミニクス」1605年頃
ドラマティックな雲。聖ドミニクスの背後には十字架にかかるキリストが
描かれている。
エジプトの「ホルス神のレリーフ」、30㎝くらいの石片の一部にハヤブサの
頭部がある。
古代エジプトのペンダントも展示されていた。
古今東西の芸術品を所蔵しているので、ムガール帝国時代のインドのもの、
南宋時代の「龍虎図」、朝鮮王朝の「架鷹図」、日本の刀剣もあった。
素晴らしかったのは、「平治物語絵巻 三条殿夜討巻」鎌倉時代、13世紀後半。
最初に載せたチラシの絵で、日本絵巻史上最高傑作と言われている。
描かれているのは、藤原信頼と源義朝らが後白河上皇の御所である三条殿を襲撃し、
上皇を拉致した場面。そばで見ると、戦いの混乱の中のそれぞれの人の動き、
弓を構える者、馬で走り去る者の表情までがはっきり見える。
第二室は「聖なる世界」というタイトル。
エル・グレコの大きな絵が目にとまる。
「祈る聖ドミニクス」1605年頃
ドラマティックな雲。聖ドミニクスの背後には十字架にかかるキリストが
描かれている。
日本の平安時代の仏像、大日如来坐像(1105年)も展示されていた。
大日如来は密教の教主で天照大神と同一視される。所々、金箔がわずかに残っていた。
私がボストンで見たものと同じなのだろうか。大日如来坐像だけでも、何点かあるのかも
しれない。
「華厳経(二月堂焼経)」は、東大寺に伝来した紺紙に銀字で書かれた経で、楷書の字が
美しい。表装がモダンだと思ったら、杉本博司が巻子であったものを表装に変えたそうだ。
展示される時、巻子より見やすい。
第三室は、「宮廷のくらし」というタイトルで、王侯貴族や枢機卿など権力の座にいた
人びとの贅沢な暮らしぶりを見ることができる絵や工芸品、宝飾品が展示されていて
華やかだった。
「灰色の枢機卿」1873年 ジェローム
パリに今もあるパレ=ロワイヤル宮殿の大階段が舞台の作品。
聖書を読む前方の修道士に向かって、色鮮やかな服を身にまとい頭を下げる貴族たち。
当時、ここはルイ13世の宰相リュシリーの館、この修道士はリュシリーの腹心で、
「灰色の枢機卿」よばれるほど力を持った黒幕だった。大きな絵で印象に残る。
人びとの贅沢な暮らしぶりを見ることができる絵や工芸品、宝飾品が展示されていて
華やかだった。
「灰色の枢機卿」1873年 ジェローム
パリに今もあるパレ=ロワイヤル宮殿の大階段が舞台の作品。
聖書を読む前方の修道士に向かって、色鮮やかな服を身にまとい頭を下げる貴族たち。
当時、ここはルイ13世の宰相リュシリーの館、この修道士はリュシリーの腹心で、
「灰色の枢機卿」よばれるほど力を持った黒幕だった。大きな絵で印象に残る。
「1902年8月のエドワード7世の戴冠式にて国家の剣を持つ、第6代ロンデンテリー候爵
チャールズ・スチュワートと従者を務めるW・C・ポーモン」1904年 サージェント
長いタイトル。王様かと思ったら貴族。目を惹く立派な衣装だが、第一室のナポレオンの
戴冠式の正装には負ける。
チャールズ・スチュワートと従者を務めるW・C・ポーモン」1904年 サージェント
長いタイトル。王様かと思ったら貴族。目を惹く立派な衣装だが、第一室のナポレオンの
戴冠式の正装には負ける。
ムガール帝国では、
「モンスーンを楽しむマハーラージャ、サングラーム・シング」1720年~25年頃。水彩画
統治者サングラーム・シングが郊外の宮殿を訪れたときの様子を描いている。
屋上から広大な領土を眺めるサングラーム・シングが上段で、下段では傘を捧げ持つ3人の
侍女を従え宮殿に入るサングラーム・シング。彼に権威が集まっているとわかる。
「モンスーンを楽しむマハーラージャ、サングラーム・シング」1720年~25年頃。水彩画
統治者サングラーム・シングが郊外の宮殿を訪れたときの様子を描いている。
屋上から広大な領土を眺めるサングラーム・シングが上段で、下段では傘を捧げ持つ3人の
侍女を従え宮殿に入るサングラーム・シング。彼に権威が集まっているとわかる。
一番目の保養になったのは、エメラルド6カラットが中央に配置された
アメリカの大富豪、マージョリー・メリウェザー・ポストのブローチ。
ナポレオン皇妃ジョセフィーヌのために、セーヴル磁器製作所で作られた
平皿「マルメゾン城の植物のセルヴィス」1803~1804年は、絵柄が
上品で、落ち着いた雰囲気がすてきだった。セルヴィスは食器セットのこと。
アメリカの大富豪、マージョリー・メリウェザー・ポストのブローチ。
ナポレオン皇妃ジョセフィーヌのために、セーヴル磁器製作所で作られた
平皿「マルメゾン城の植物のセルヴィス」1803~1804年は、絵柄が
上品で、落ち着いた雰囲気がすてきだった。セルヴィスは食器セットのこと。
第四室は「貢ぐ、与える」というタイトルで、外国への貢ぎ物がなされる場面
を描いた絵の展示。
「韃靼人朝貢図屏風」伝狩野永徳 桃山時代 16世紀後半
韃靼人(ダッタンじん)とは、モンゴルの騎馬民族のことで、上部に貢ぎ物を積んだ
唐舟に乗った一行が描かれ、下部にはそれを受け取る準備をしている馬に乗った韃靼人
たちが描かれている。狩野永徳が、外国どうしの貢ぎ物の様子を描いていることに、ほぉうと思った。
を描いた絵の展示。
「韃靼人朝貢図屏風」伝狩野永徳 桃山時代 16世紀後半
韃靼人(ダッタンじん)とは、モンゴルの騎馬民族のことで、上部に貢ぎ物を積んだ
唐舟に乗った一行が描かれ、下部にはそれを受け取る準備をしている馬に乗った韃靼人
たちが描かれている。狩野永徳が、外国どうしの貢ぎ物の様子を描いていることに、ほぉうと思った。
第五室は「たしなむ、はぐくむ」、権力者たちは芸術家のパトロンとなり、工芸品にも
すばらしいものが登場した。
すばらしいものが登場した。
ギター(キタラ・バッテンテ) ヤコポ・モスカ・カヴェッリ イタリア 1725年
象牙、鼈甲、真珠母貝など豪華な素材を使用している。金属弦。見とれるほど美しい。
象牙、鼈甲、真珠母貝など豪華な素材を使用している。金属弦。見とれるほど美しい。
このギターの時代ということで、カナレットの「サン・ジョルジョ・マッジョーレ聖堂」
を描いた絵もあった。
を描いた絵もあった。
左:「メアリー・トッド・リンカーンのブローチ」アメリカ大統領リンカーンの妻メアリー。
大変な浪費家で宝石が大好きだったそう。ダイヤモンドをふんだんに使い金とエナメルで
縁取り。イヤリングもあった。
右:「日本風のブローチ」ラクロシュ・フレール社 1925年頃
ラクロシュ社はフランスの宝石ブランド。ジャポニスムの影響が濃いアールデコ様式。
縁取りのある長方形にダイヤモンドを敷きつめ、日本画的な白い余白を作り、ルビーで
梅のような花を表現している。英国王ジョージ5世の妻が注文。孫の結婚式のお祝いに
贈った。
「吉備大臣入唐絵巻」 平安時代後期〜鎌倉時代初期 12世紀末
遣唐使として海を渡った吉備真備は高楼に幽閉され、難題を吹っかけられるが、
先に入唐して現地で亡くなった阿倍仲麻呂の亡霊(赤鬼)の力を借りてこれを
退ける話を絵巻にした。鎌倉絵巻の傑作。
絵の下に説明がついているので、この箇所はこう、とわかりやすい。見に来ている
人たちが全員、ここで文字を読みながら絵と照らし合わせるので混みあう。
急いで駆けつける場面の描写、漫画で笑える。この図柄のTシャツを売っていた。
先に入唐して現地で亡くなった阿倍仲麻呂の亡霊(赤鬼)の力を借りてこれを
退ける話を絵巻にした。鎌倉絵巻の傑作。
絵の下に説明がついているので、この箇所はこう、とわかりやすい。見に来ている
人たちが全員、ここで文字を読みながら絵と照らし合わせるので混みあう。
急いで駆けつける場面の描写、漫画で笑える。この図柄のTシャツを売っていた。
日本初公開の狩野派の絵もあった。
狩野山雪「老子・西王母図屏風」 江戸時代 17世紀前半
狩野探幽「楊貴妃・牡丹に尾長鳥図」平安時代後期~鎌倉時代初期
狩野山雪「老子・西王母図屏風」 江戸時代 17世紀前半
狩野探幽「楊貴妃・牡丹に尾長鳥図」平安時代後期~鎌倉時代初期
修復して日本初公開の「孔雀図」 増山雪斎 江戸時代(1801年)