秋の箱根 [日本の美術館]
秋は高原の空気が、澄み切ってひんやりと気持ちがいい。
「ルネ・ラリックの美術館に行きたい」という友達を案内して、箱根に行った。
10時半に東京を出たが、途中、工事渋滞があったので、ラリック美術館に着いた
のは、1時近かった。
目の前の芝生の緑と大きな木を見ながら、テラス席で食べるランチは快適。
時折、頬をなでる風がさわやか。ワンプレートに鶏もも肉グリルとタラのフリット、
ラタトゥーユが載っているランチは、サラダ、パン、コーヒー付きで2200円。
美術館棟は2階建て。はいってすぐは、1925年のアールデコ・パリ万博で展示
された女神像。細長い体がこの世離れして美しい。
左)ベッドサイドランプ「日本のリンゴの木」という名前だが、これはどう見ても梅の花、
と説明がついていた。たしかにそう。ラリックは当時の流行だったジャポニズムに惹かれ、
モチーフに積極的に取り入れている。
右)香水びん 三羽のツバメ。ツバメはジャポニスムの代表的なモチーフ。アーチ型の
瓶のふたは、日本刀の鞘をイメージしたもの。
この美術館は撮影禁止だが、「サラ・ベルナールの部屋」から見える庭をガラス越しに
撮影するのだけが許されている。モネの庭のような造りで、池では睡蓮が咲いていた。
人気女優サラ・ベルナールは、ラリックの宝飾品を気に入って次々と注文したそうだ。
形がおもしろいバロック真珠を使ったブローチがすてきだった。
次、ラリック美術館から車で5分の湿生花園に行った。
入口では、ススキが迎えてくれた。
湿地なので、足元が濡れないよう、尾瀬と同じく「すのこ」状の木道をずっと歩く。
ハイキング姿の人たちが多かった。
湿生花園の植物は、もう紅葉が始まっていた。マユミの実も赤くなってはじけそうだった。
ワレモコウや女郎花が草原に咲いている向こうに山が見えた。
湿生花園でポーラ美術館といっしょのチケット2500円→2000円を買った。
ポーラ美術館は、湿生花園から、車で10分。
ポーラ美術館に着いたのは4時。閉館が5時なので、絵画コーナーから見た。
企画展は「コレクター鈴木常治のまなざし」、先代社長のコレクションを見せている。
まず、在りし日の会長室を再現してあった。大きな平山郁夫の絵が横の壁にあり、
執務机の後ろに、カンジンスキー、前には、ケース入りの小さな彫刻。決断に迷った
とき、いつも絵を見ながら、考えたのだそう。
この美術館は、印象派の絵画をたくさん揃えている。
気になったのは、ルノアールの「髪かざり」。
顔にルノアールらしさが見られない。背景もちょっと。。。全体に柔らかさがなく、きつい。
コレクターである会長は、岡鹿之助がお好きだったそうで、かなりの点数があった。
岡鹿之助は、フジタを崇拝してパリに留学と説明書きがあったが、「掘割」は
アンリ・ルソーに似た構図と筆運び。「村の発電所」は、ブリヂストン美術館の「雪の発電所」
と似ていて、はっとした。シリーズなのだろう。
秋の日はつるべ落としと言うように、5時に美術館を出て、山道を下っているうちに、もう
暗くなってしまった。箱根での滞在時間は約4時間と短かったが、良い休日だった。
*前回、ラリック美術館へ行ったときの記事は、こちら
* ポーラ美術館へ行ったときの記事は、こちら