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泉屋博古館で木島桜谷展 [日本の美術館]

ようやく緊急事態宣言が解除され、旅に出れるようになった。
以前から、京都で展覧会を2つ見る日帰り旅をしたいと思っていたので、早速出かけた。

駅を降りて向かったのは、泉屋博古館(せんおく・はくこかん)。
住友家が秘蔵のコレクションを公開するために、京都別邸を改築して美術館にした。
「鹿ケ谷」という万葉的な名前の住所なので、山の麓の谷を想像したが、
京都駅から市バスで20分ほど。閑静なお屋敷街。落ち着いた静かな佇まいは東京の
五島美術館を思い出す。


建物正面は西洋美術館に似た雰囲気。日建設計の設計。
芝生の庭にあるのは、水が湧く井戸。「住友」の江戸時代の屋号が「泉屋」センオク
だったことから、それを象徴している。11代小川治兵衛作による作庭で東山を借景
にしている。


泉屋博古館.jpg


企画展は、「木島桜谷 四季の金屏風」
木島桜谷は今までいくつか作品を見たが、東京の泉屋博古館で見た「燕子花の金屏風」
がシンプルながら堂々と立派だったのを覚えている。まさに現代の金屛風。

展覧会場入り口には、金屏風を仕舞っていた桐の箱が展示されていた。長い!
屏風収納箱.jpg


木島桜谷(コノシマ・オウコク 1877~1938)は、明治から昭和にかけての
京都画壇の重鎮。写生の技に秀でているが、屏風ではデザイン感覚も活きている。
今回は、春、夏、秋、冬、四季それぞれの金屏風が揃って展示されると、Web
の「泉屋博古館」のサイトで読み、それは魅力的!と、行きたくなった。
これらは、大正時代に住友家本邸新築に伴って制作された。従来の屏風より大きく、
金箔の分量も多いのだろうか、輝きに圧倒される。


季節柄、まず、秋の花、菊の金屏風が展示されていた。これは左隻。

《菊花図》左隻.jpg


冬:雪中梅花 右隻 
《雪中梅花》右隻.jpg


春:柳桜図 左隻

《柳桜図》左隻.jpg


夏:燕子花図 左隻

《燕子花図》左隻.jpg



若い頃の作品 猛禽波頭図 左隻
《猛鷲波濤図》左隻.jpg


屏風の他に、動物や風景の掛け軸の絵も展示されていた。
木島桜谷は、動物を描く名手として、近年、再評価されている。


「葡萄栗鼠」
真ん中にちょこんと栗鼠。葡萄をたらふく食べて満足顔なのが、近づいて見るとわかる。
葡萄の葉への光の当たり具合を葉の色を変えて美しく表現している。

《葡萄栗鼠》.jpg


10月23日~1月10日に京都「福田美術館」で、桜谷展「おうこくさん」が開かれ、
そちらには、動物の絵がたくさん出るようだ。



泉屋博古館のコレクションで価値あるものは、「中国の青銅器」で、常設。
世界でも名高いのだそう。

「き神鼓」きじんこ
今から3千年以上前、殷(商)の時代。
鰐皮を両面に張った太鼓の形をした器。上に奇怪な形をした2羽の鳥の飾りがつく。
内側が中空で厚み1~5ミリと非常に薄手の鋳造で、当時の高度な技術がわかる。
高さ82㎝。住友コレクションを代表する名品。

青銅器.jpg


「井仁ねい鐘」(せいじんねいしょう)。西周後期。
中国独特の漢字で「ねい」は「二」の下に「女」って書く漢字です。
(Inatimyさん、教えてくださってありがとう)

青銅器3.jpg


「鳥蓋こ壺」戦国時代前期・前5世紀 
瓢をかたどった器の上に、鳥の形の蓋がついている。器を傾けると鳥の嘴が開き、
なかのものを注ぐことができるいという趣向が凝らされている。出土数が少なく、
非常に貴重。

青銅器2.jpg


個人美術館で、それほど大きくないため、1時間半くらいで、企画展と
中国青銅器の両方が見れる。休憩室の前に、無料の飲み物提供マシンがある
ので、お茶を飲みながら、庭を眺め、静かな良い時間を過ごせた。




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angie17

日帰り旅で、美術鑑賞とは!
素敵ですね~~。
by angie17 (2021-10-09 16:12) 

ふにゃいの

キレイですね~。
優しい感じで
ほんと現代の金屏風。
満足顔の栗鼠さんも本物を見たいです^^


by ふにゃいの (2021-10-09 16:59) 

yk2

好い展覧会だなぁ~、観たいなぁ、泉屋なら六本木一丁目の方にも巡回してくれないかなぁ~なんて都合の良いコトを望んでみましたが、今東京館は22年までリニューアル休館中なんですね。因って巡回展の予定はなし。残念。

木島桜谷って、名前に覚えがなかったのでちょっとググってみたんですけど、漱石に鹿の絵をけちょんけちょんに貶されたってエピソードが書いてあって、あれっ?と思い『漱石の美術世界』展の図録で”同時代美術”のところを探してみました。ああ、この画家だったか~!ですね。月に照らされる雪の竹林に銀狐一頭。とても写実的な絵でモダンでシャープ。僕は良いい絵だなって思うのですが、漱石せんせはやっぱり気に入らなくて「写真屋の背景」だなんて腐してますが(笑)。

四条派なれど、燕子花や桜は琳派的ですね。デッサンがシャープだからかな、京都で本場なのに光琳よりも江戸琳派に近い感覚。そして菊花図は其一の朝顔図を思わせる。

青銅器のコレクションも充実してるんですね。京都の泉屋本館は、東京で云えば根津美術館に似たイメージなのかな?なんて想像してます。
by yk2 (2021-10-10 00:55) 

よしあき・ギャラリー

素敵な美術館ですね。
次回京都へ行ったときは是非観たいものです。
by よしあき・ギャラリー (2021-10-10 05:44) 

Inatimy

美術館のサイトものぞいて、作品見てきました。 屏風、どれも美しい。
白い菊にちょっぴり入る朱色の花の割合が心地よく。
「雪中梅花」も、雪に埋もれた笹、樹皮についた地衣類(ウメノキゴケ)とか、たまりませんね^^。
動物を描く同じ時代の京都の画家といえば、竹内栖鳳。どちらもライオンやトラを描いてるから、見比べるのも面白いかもしれませんね。
私としては神坂雪佳のほのぼのした動物も好きだけど。
中国の青銅器、正体不明なのは、おそらく、「井仁ねい鐘」(せいじんねいしょう)。西周後期。中国独特の漢字で「ねい」は出てこないようで、「二」の下に「女」って書く漢字です。・・・と、気になって、また探してしまいました^^;。
美術手帖のサイトで2019年に東京で開催された「金文―中国古代の文字―」の紹介記事に写真があったので、多分同じかと。
by Inatimy (2021-10-10 21:58) 

TaekoLovesParis

Inatimyさん、ありがとうございます。なおしました。
by TaekoLovesParis (2021-10-13 23:55) 

coco030705

こんばんは。
泉屋博古館、有名で名前は知っていたのですが、まだ行ったことがなかったです。今度ぜひ行ってみます。
木島桜谷の屏風絵を観るだけでも、行く価値がありますね。
ところで、京都は日帰りでいらしたのですか。京都グルメのほうはいかがでしたでしょうか。
by coco030705 (2021-10-14 22:39) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます。お返事遅くて、すみません。
▲angieさん、緊急事態宣言の間、美術館も行きにくかったので、新幹線に乗りたいのと併せて、らくに行ける京都にしました。行ったことがない美術館、2つで、新鮮な感じでした。

▲ふにゃいのさん、ここは周囲を緑に囲まれ、落ち着く立地です。昔、この辺りは、お金持ちの別荘地域で、ここも大阪に本家がある住友家の別荘でした。ここの写真では、金色が輝いていませんが、実際に見ると、まさに金ピカで素晴らしかったです。お客さんが3名だけだったので、独り占め感があった良かったです。休憩室からは、広いお庭を眺めながら、無料のお茶を飲めます。

▲yk2さん、泉屋・東京は休館ですか。東京も良い立地ですよね。泉屋・東京の「近代の京焼と京都ゆかりの絵画展」で、木島桜谷の金屏風「燕子花図」を見て、琳派を意識しながらも現代的な感覚で金色が輝き、いいなと感心したので覚えてました。だから四季の金屏風を全部見たいなと思ったのです。
yk2さんがおっしゃるように菊の花の配置は「朝顔図」を思い起こしますね。

「漱石の、、」展、私も図録を持っているので、見ました。容赦ないですねー。<写真屋の背景> 現実に、こんな叙情にあふれた幻想的な竹林、ないですよ。墨絵の世界のような日本の美。さらに、背景に似つかわしくない狐がいるだなんて。でも、当時の世論は、漱石先生の味方じゃなかったようですね。
だからこそ、今となっては面白い。

青銅器はまさに根津美術館の常設の青銅器、似ています。こちらの方が展示室が広く、格調高く扱っています。

▲よしあきさん、ぜひ、いらしてみてください。建物、周りの景色、いろいろなものが、よしあきさんの絵画制作の参考になると思います。
by TaekoLovesParis (2021-10-17 15:16) 

TaekoLovesParis

cocoさん、泉屋博古館は住友のコレクションのための美術館なので、派手ではないけれど、お金をかけてあります。無料のお茶コーナーがあるのは、東京の出光美術館と同じかしら。
木島桜谷の屏風絵は、比較的年代が新しいので、綺麗です。この美術館は、何よりも青銅器コレクションが価値あるものだそうです。
by TaekoLovesParis (2021-10-19 23:45) 

TaekoLovesParis

Inatimyさん、菊の白がきれいな白なので、花芯の赤がはっきり目立ち、添えられた小菊の赤と呼応していました。上から垂れ下がるという構図が斬新ですね。
yk2さんがおっしゃるように、其一の「朝顔図」にヒントを得たのでしょう。
のびやかな梅の幹、桜の幹にたらしこみの苔、光琳の時代より、単純化されて現代的だなと思いました。

竹内栖鳳は好きな画家なので、作品を見ることも多いのですが、動物画は天下一品。。特にライオンの迫力。すごみがありますね。動物園に行って写生したそうですね。木島桃谷は竹内栖鳳にはかなわないですね。
いつだったかInatimyさんの記事に、神坂雪佳の「金魚」が出てましたね。
雪佳の犬も縫いぐるみみたいでかわいいから、ピンナップしてます。

青銅器のこと、教えてくださってありがとう。
by TaekoLovesParis (2021-10-20 00:10) 

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