フィラデルフィア・オーケストラ演奏会 [オペラ、コンサート、バレエ]
フィラデルフィア・オーケストラ(フィラデルフィア管弦楽団)は、世界でも有数のオーケストラ。
ユージン・オーマンディが42年間音楽監督をつとめ、数多くの名演奏がCDになっている。
オーマンディの後は、リッカルド・ムーティ、その後はヴォルフガング・サヴァリッシュ、
シャルル・デュトワと日本でも馴染みの指揮者たちが常任指揮者を務めた。
現在の指揮者はヤニック・ネゼ=セガン。彼の実力と人気は、最近の指揮者の中でも突出していて、
つい最近、メトロポリタンオペラの次期音楽監督に決定した。といっても、フィラデルフィアと
ニューヨークは高速鉄道で1時間15分なので、しばらくは兼任をする。
定期演奏会場は、新しい複合施設ビル「キメル・センター」の中の「ヴェライゾン・ホール」。
写真は、センターを入ったところの看板。
この日の演目は、
program
Beethoven - Overture to The Creatures of Prometheus, Op. 43
ベートーヴェン「プロメテウスの創造物」 序曲
Beethoven - Finale from The Creatures of Prometheus, Op. 43
ベートーヴェン「プロメテウスの創造物」 最終章(アレグレット)
Bates - Alternative Energy
ベイツ「オルタナティブ・エナジー」
INTERMISSION -休憩
Mozart - Piano Concerto No. 9 in E-flat major, K. 271 ("Jenamy")
モーツァルト「ピアノ協奏曲9番」 ジェナミ
Liszt - Prometheus, Symphonic Poem No. 5
リスト 「交響詩5番」 プロメテウス
拍手に迎えられ、ヤニック登場。
客席に向かって、演奏する曲の説明を紹介する。こんなの初めて。
プロメテウスにこだわったプログラムという部分だけわかった。
最初の曲は、ベートーヴェン「プロメテウスの創造物の序曲」。
始まりにふさわしく、ジャン、ジャン、ジャーンで始まり、弦が美しいメロディを奏でる。
ベートーヴェンらしさ満載。
次の曲は、シンセサイザーの前に立つハンサムなお兄さんメイソン・ベイツの作曲。
ここで聴けます
4つのパートから成る数百年にわたる「エネルギー交響曲」。
最初は1896年のフォードの農場 → 車の発明
2番目は2012年のシカゴ → FermiLab(シカゴにある物理学研究所)、エネルギーの粒子研究
3番目は2112年の新疆ウイグル自治区 → 荒廃した産業地(中国の原子力発電所)の夕暮れ
4番目は2222年のアイスランドのレイキャビク → 熱帯雨林 最後の人類の住処
フルートとピッコロで始まり、オーボエ、イングリッシュホーンが続き、と管楽器が主体。
全体を通して、中国っぽいメロディが使われ、ジャズ的要素に、シンセによるテクノのリズム。
見たことのない中国の打楽器も使われていた。ベイツのシンセの電子音が要所、要所を締め、
電子音とオーケストラが上手く融合していた。
ヤニックは指揮棒を使わず、手だけでの指揮。
休憩後、ピアノのDaniil Trifonov(ダニール・トリフォノフ)によるモーツァルト「ピアノ協奏曲9番」
トリフォノフは、ロシアのハンサムな若手ピアニスト。2010年ショパンコンクール3位、2011年に
20才でチャイコフスキーコンクールでショパンの曲を弾いて優勝。全部門グランプリ獲得。
この経歴なので、彼のピアノを聴くのを楽しみにして来た。
ジェナミ嬢に捧げられた曲。モーツァルトらしい優しさ、可愛さ、情感が散りばめられた演奏。
ここで視聴できます ページの下へ下がってAUDIOをクリック
そして最後、リストの「プロメテウス」の情熱的な迫力。プロメテウスは火の神だから、と
改めて思った。ヤニックの指揮の瞬発力の素晴らしさ。身体全体を使っての表現。
ホールは、オーケストラの横、後ろまで席があり舞台全体を取り囲むという形。
もちろん、従来の桟敷席が一番多く4階くらいまである。
Y子が2か月前から、「この席が最高」と取ってくれたのは、オケの横の一番前の席。
ヤニックの指揮ぶりがよくわかるし、自分も団員になったかのような錯覚すらおきる。
それでも67ドル。演奏前、練習時間の写真。
昨年、ヤニックが来日。サントリーホールで五島龍と共演したが、その時のチケットは3万円。
それに比べて、なんという安さと感動。夫々のコンサートにスポンサーがついているからだそう。
sponsors AmericanAirline の文字が見えていた。
次にフィラデルフィアに行く時は、またヤニックのコンサートに行けるようオーケストラシーズン
にしようと思った。
僕は純然たるクラシックは知識ゼロの門外漢(^^;なので、メイソン・ベイツって人がどんな音楽やってるのかに興味を惹かれてyoutubeでチェックしてきました。クラシックでシンセって僕がすぐにイメージ出来るのはせいぜいボブ・ジェームスくらいなんだけど、フルオーケストラと一緒なのとはまた違うものだし、どんなだろう?って。そしたら、たしかに「ハンサムなお兄さん」(笑)がmac睨みつつリズムパッドを叩きながらオーケストラと共演している、ちょっと変わった図。続けて『Mothership』って曲も聴いてみましたが、うん、確かにこれはジャズ系リスナーにも聴けるタイプかもしれませんね。インプロヴァイザーの起用って冒険が効果的なのかは「?」な気もしますが(^^ゞ、taekoねーさんがこんなふうに紹介して下さらないと僕はきっと出会わなかっただろうタイプの音楽なので、今回しっかとお勉強させて頂きました(^^。
by yk2 (2017-04-16 09:47)
yk2さん、ボブ・ジェームスがAngels of Shanghai を引きこんで、二胡や笛を取り入れた演奏、あれはあの当時、新鮮で良かったですね。ベイツのは、youtubeできいてくださったように、オーケストラにベイツが乗りこんでいき、初めはリズムをとっているけれど、そのうち、全体を包み込み、さっと引いていくむ感じでした。
『Mothership』は、聴いてなかったので、聴いてみたら、面白いですねー。
インプロヴァイザーとしてのエレキのソロやベースも加わってジャズっぽい。メトロノームのようなテクノのリズム刻み、琴とチターでの締め括り、途中には、「パリのアメリカ人」を思い出すメロディ。実にいろいろなものが散りばめられ、照明の効果も存分に取り入れてましたね。1曲で終わらず、こうやって他の曲も聴いてみると、ベイツの曲はジャズとクラシックとのクロスオーヴァーを乗り越えた一体感があり、新しい試みですね。
yk2さんのジャズ側から聴いたコメントは、クラシック側から聴いた私には興味深かったです。
by TaekoLovesParis (2017-04-16 13:45)
フィラデルフィアサウンドを本場で聴かれてきたんですね。
いいなぁ~、うらやましいです。
ヤニックはきいたことありませんが、オーマンディーからのキラキラのフィラデルフィアサウンドは変わっていないのだろうな ^^v
フィラデルフィアでは聞けないけれど、今日はN響聴いてきます。
この前聴いて気に入った、ベアトリーチェ・ラナの演奏が聴けるので楽しみです。 ^^
by moz (2017-04-22 10:21)
mozさん、きょうはのN響はファビオ・ルイージの指揮だったんですね。
ファビオ・ルイージはメトのオペラの主席指揮者なので、メトのライブビューイングで何回か見ています。インタビューもついてるので、余計、親しみを感じてます。
フィラデルフィア・オーケストラの黄金期を築いたユージン・オーマンディは度々来日公演をしてますね。あのキラキラ華麗なサウンドは、使っていた本拠地のホールが音響が悪かったので、響くように特に弦をがんばって生み出されたものなのだそうです。
ベアトリーチェ・ラナ、mozさんが記事の中で、アルゲリッチと比較なさっていたから覚えてます。実際に聴くのは、CDで聴くのと違う一体感があって、わくわくしますね。きっと、すばらしかったことでしょう。
by TaekoLovesParis (2017-04-23 00:00)