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ルイーズ・ブルジョワの現代アート [☆彡Paris  展覧会]

 LouiseHills4.JPG

[右斜め上]これは連休中、雨の「六本木ヒルズ」。

  中央に見える巨大なクモのオブジェ、これを制作したのは、ルイーズ・ブルジョワ。
パリで生まれ育ち、結婚後、ニューヨークにわたり、以後、ずっとニューヨーク在の
女性アーティスト。96歳の今も制作をしている。

[右斜め下] 作品のクモといっしょのルイーズ。

  LouiseB8.JPG

 「ルイーズ・ブルジョワ展」が、今、パリのポンピドーセンターで開かれている。
私が3月にパリに行ったときに、会期が始まったところだった。
ロンドンのテート・モダン(美術館)からの巡回展だそう。
  <参照:いっぷくさんの記事のテートモダンの巨大クモの写真>

  ルイーズは、1915年、タピストリーの修理、販売を家業とする家に生まれる。
父親が奔放な人で、若い愛人をルイーズの家庭教師として家に住ませるという環境
だったため、母の忍耐を見て育った。
「母は寛大ですべてを知り、操作していた」と、ルイーズは語る。

  六本木ヒルズのクモは「ママン」(母)と名前がついている。
クモは害虫を食べ、巣をはって守ってくれる、ママンのような存在だそう。

 

  ポンピドーでの展覧会場では、作品の傍らにルイーズの言葉が書かれていた。
「私の作品のテーマは、自分の子供の頃の記憶や体験。それが尾をひいている。」

[右斜め下]1946年の絵。「Red Night」
それまでの自分を捨てる、川に流す、というような絵だったと思うが、私は、
ナイル川を流れてきて、エジプトの王女に拾われる赤ん坊のモーセが思い浮かんだ。
ブルーの人がエジプトっぽいから?      

LouiseB7.JPG  

 

  40代のときのルイーズは、彫刻を制作していた。テーマはbody。素材は多様。
ジャコメッティ+ブランクーシといった細長い原始的人間像。

  50代のテーマは、「Soft Landscapes」
[右斜め下]泡とか小さな丘、きのこをゴム、ラテックス、石膏、大理石などで表現した。
LouiseB4.JPG

 

  六本木ヒルズのようなクモシリーズは、80代の作品。
家がタピストリー屋だったことから、ルイーズは、作品の素材として、親しみがあり
扱いやすい布を使いはじめた。
[右斜め下]これは2000年の作品。家、女性がテーマ。
LouiseB1.JPG

 

  ルイーズは、ずっとアートで自分の感情を表現してきた。[iモード][ー(長音記号1)]
中には、目をそむけたくなるものもあったが、不幸な子供時代の体験が原動力になっている
からだろう。自分で環境を選べない子供時代、その思い出を跳ね除けるためにルイーズは
作品を作り、いろいろな表現方法を積極的に、今も試している。


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いっぷく

テート・モダンではクモの巨大オブジェを美術館の前に設置してやってましたね。
その時にどんな人だろうと調べて見ました。彼女の存在を知りませんでしたからね。高齢になっても精力的に活動する彼女の芸術活動が彼女の生きるエネルギーを生み出している人なんだなって感心しました。
by いっぷく (2008-05-10 06:31) 

yk2

あまり明るい時間に六本木ヒルズに行くことがなかったせいだろうか、このクモの“ママン”に1度も気が付いたことがありませんでした(^^;。

網を張り虫をはむクモに自分の母を重ねるってのは、聞く方もツラくなるような話ですね。ルイーズの子ども時代のエピソードから想像するに、お父さんのせいで家は相当な“火宅”だったのでしょうね。でもそんな事でもないと、こう云った類のイマジネーションって創造されないのかもしれないなぁ。
by yk2 (2008-05-10 08:21) 

範子29

くっ・・・くも・・・。
苦手です・・・・。(^^;)でもすばらしい芸術作品ですね。
by 範子29 (2008-05-10 08:24) 

Taddy

ルイーズ・ブルジョワの蜘蛛の像は結構有名ですよね。自分は蜘蛛平気ですけど、北米(何処にでもですが)には蜘蛛嫌いの人がたくさんいる為、この人の作品は好き嫌いがハッキリ別れるとかそうでないとか...?
by Taddy (2008-05-10 08:50) 

TaekoLovesParis

いっぷくさん、いっぷくさんのテートモダンの記事のトップに写真がありましたね。イメージがはっきりわかる写真なので、リンクさせてくださいね。
あれを見たときに、まだ私は、ルイーズ・ブルジョワの名前を知りませんでした。ポンピドー・センターでは、ロビーに、もう少しちいさいクモが展示してありました。

ルイーズは、家業のタピストリー屋を訪れたアメリカ人の原始美術を専門とする美術史家と結婚してNewYorkにわたり、芸術活動を始めるのです。
インスタレーションの写真に、彼もいっしょに写っているから、良きパートナーだったのでしょう。
60代でご主人を亡くした後もさらにエネルギッシュに活動する、負の要素を作品に代えていく人なんですね、きっと。
by TaekoLovesParis (2008-05-10 10:37) 

TaekoLovesParis

yk2さん、
<あまり明るい時間に六本木ヒルズに行くことがなかったせいだろうか>
→そういえば、yk2さんの以前のアイコンは、六本木の夜を想起させる
青い光に映し出されたグラスでしたね。これから夏、日が長くなりますから、明るいうちにぜひ(笑)

ルイーズ父は、フランス版「火宅の人」だったようです。「古美術の蒐集と、女の人を追いかけるので多忙だった」と書いてありました。くだんの家庭教師は英国人女性。「タピストリー屋の客に外国人も多くなるだろうから、英語が必要」と家庭教師雇用の大義名分を父が考えたとしたら、結果、ルイーズは、アメリカ人と結婚し、ニューヨークで創作活動。親が子に与える影響は、、、計り知れないです。
by TaekoLovesParis (2008-05-10 11:21) 

TaekoLovesParis

範子ちゃん、クモはダメ?ちいさくても?
私は大きいのは、ぞっとするけど、ちいさいのは平気よ。
by TaekoLovesParis (2008-05-10 11:24) 

TaekoLovesParis

Taddyさん、映画、コミックで「SpiderMan」がヒットしてるから、私はアメリカ人はクモが好きかと思ってました。
やっぱり、Taddyさんは、ルイーズ・ブルジョワのクモをご存知でしたね!
by TaekoLovesParis (2008-05-10 11:26) 

バニラ

ルイーズ・ブルジョアの母親像っていうのは、内にこもり家や子を守るというイメージなのでしょうか。 布でできた2000年のまぁるいブルーの作品が温かくて好きだなぁ。
by バニラ (2008-05-10 12:37) 

TaekoLovesParis

バニラさん、ルイーズは96歳だから、お母様はバニラさんのひいおばあちゃまくらいの年齢。その時代の女は家を守るのが普通。夫が遊び人でも離婚っていう選択肢はなかったんでしょうね。家業をほったらかしの夫にかわって、家業を切り盛りし、家事をこなし、家族を守り、とっても立派な人だったようです。
ルイーズは、ソルボンヌの数学科卒ですが、家でタピストリーの修繕という手仕事を手伝っていたので、布に親しみがあるんでしょう。タオル地を使ったbodyもありました。あと、バニラさんごのみのとろんとしたチャールストン時代の服やきれいなレースの絹スリップをぶら下げたクローゼットもインスタレーションとして、置かれていました。
by TaekoLovesParis (2008-05-10 12:55) 

てんとうむし

この蜘蛛はずっと謎で「宮崎駿ちっくだなぁ・・」思っていたのですが、“ママン”ですか。
うーん、文学作品でも蜘蛛の怪物は母性愛たっぷりも矛盾に溢れた存在だったりもするのですが・・・なんだか複雑ですね。
by てんとうむし (2008-05-10 17:20) 

julliez

害虫を食べ、美しいクモの巣を張るという「せっせと働き者」なイメージで私もそんなにクモに対してネガティブなイメージがありませんね。
といってもそれはフランスに行ってから考え方が変ったわけですが。
ルイーズのお母さんの世代といえば女性に何の権利も無かったに等しい時代ですよね。
でも彼女のお母さんはただ黙って耐えていただけではなくて、肉を切らせて骨を断つ的な強い女性であったと思います。
でなければクモにはなれないような気がしますし、日本の耐えて忍ぶような女性像とは違う文化的な背景を強く感じます。
彼女がアメリカ人と結婚したのも父のようなフランス男が心底イヤだったからだと思えてきますね^^
by julliez (2008-05-10 17:53) 

とらion

ルイーズ・ブルジョワは初めて知りました。
巨大蜘蛛ですか?最近の映画にもニューヨークに表れて大混乱になった?
いろいろな具象造形作家なんですね。見ていて楽しそうです。
ただ、パリまではチョッと
ここで我慢します。
by とらion (2008-05-10 19:45) 

miku

巨大蜘蛛、インパクト大ですよねー
ママンって名前だって知ったとき、ちょっとびっくりしましたが、
こんな事情があったんですね
時には敵を威嚇しても子供たちを守るのが母親...
80代で、蜘蛛シリーズを手がけ始めたとは、やはりすごいパワーです
by miku (2008-05-10 20:34) 

ムーミン

ご無沙汰してしまいました~。
蜘蛛の巣はけっこう関心があるんですが、蜘蛛の姿は恐いですね。
でも、 Taekoさんのお話を聞いて見方が変わりそうです。
六本木ヒルズの蜘蛛も見たことはあるのですが・・・今度行ったら
見直してきます^^
それにしても、80代になってからの作品なんですね~。
すごいです!

by ムーミン (2008-05-10 23:16) 

りんこう

六本木ヒルズに行くたびに、あの巨大なクモはなぜ「ママン」?
と考え込んでいた私でしたが、そういう意味だったのですね。
いまだ創作活動しているとは恐れ入ります…。
僕もクモは苦手…。関係ないけれどカエルは好きです…。
by りんこう (2008-05-10 23:47) 

かよりん

巨大蜘蛛「ママン」すごい!!
とても80代のおばあちゃんの作品とは思えないです。
作品でその人の人生が垣間見れることありますよね。

by かよりん (2008-05-11 00:37) 

Inatimy

「Red Night」で、流し雛を思い出しました。
「Soft Landscapes」は、チョコケーキに乗った生クリーム♪
これらの発想が、子供時代のつらい体験だとは・・・。
そういえば、ポルトガルのポルトワインの蔵元だったか、
スペイン南部のヘレス(シェリー)のところだったか、
クモの巣は害虫食べてくれるから捕っちゃダメなんだ~という話を、
確かに聞きました。 
我が家のバルコニーも、部屋に入る前の段階での虫捕りのため、クモと共存です・・・。
by Inatimy (2008-05-11 08:09) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます。
▲てんちゃん、宮崎ワールドね、てんちゃんらしくてかわいい発想。
私の友達は、「わ、なに、あれ、恐竜の親戚みたい」、と言ったので。。
<文学作品でも蜘蛛の怪物は母性愛たっぷり>
→私が思い出す文学は、「蜘蛛の糸」(芥川)だけ。絵本だったので、
蜘蛛の糸を伝って天にのぼろうとする絵だけが印象にやきついています。

▲julliezさん、なるほど~、julliezさんのこのコメントを読んでいたら、julliezさんの記事に出てきた、シャンパンのメゾンのママンたちの話を思い出しました。戦争中も女手ひとつで、家業を大切に守ってきた優しさと強さを持ち合わせたおかあさんたち。
<肉を切らせて骨を断つ>→うまい言い方ですね。

▲とらionさん、日本の映画にも登場するのは、黒澤の「蜘蛛の巣城」。
蜘蛛がいたかどうかは忘れましたが、このネーミングのよさで映画がヒットしたのでは、と思えますね。架空の世界を表しているんでしょうね。
そのうち、日本でも展覧会がるかもしれませんね。

▲mikuさん、実にパワフルですよね。老いて枯れ行くなんていう姿は
まったく見られません。次々、創作意欲がわくんでしょうね。

▲ムーミンさん、年とって元気な女性って、私にはひとつの目標になります。ムーミンさんも山の空気をたくさん吸って元気になってくださいね。
お庭には蜘蛛がいますか?

▲りんこうさん、やっぱり、ヒルズのクモに気づいていらしたんですね。
りんこうさんの近くの記事にもなった「きのこのある公園」、私のイメージでは、カエルよりクモがいそうですが。。。

▲かよりん、<作品でその人の人生が垣間見れることありますよね。>
→作品の横に、ルイーズからのメッセージがたくさん書いてあるので、
それを読むと、この作品を通して何を語りたいのかはっきり伝わってきました。

▲Inatimyさん、<流し雛>→そう、それがぴったり。ポップな画面だけど、儀式的なものが伝わる絵なので。
チョコレートケーキ、、ははは、写真で見るとそんな感じね。私は実物を見たので、質感が違うから、思いつかなかったです。
害虫を食べるクモは自然界にとって大切なんですね。
by TaekoLovesParis (2008-05-11 09:43) 

りゅう

六本木ヒルズのクモを見たことがありません・・・
いや、ちょろっと足ぐらいは見たかな?
六本木が苦手なので、用が済んだらとっとと帰っちゃいます。
まさに、直行直帰♪(≧▽≦)b
今度、腹括って、六本木散策してみようかな・・・(^_-)
by りゅう (2008-05-11 13:07) 

琉那

クモとママン、
結びつきの意外さにびっくり。
とても素敵な女性ですね。
不幸な体験をしたとしても
それから前向きに生きている姿に
感動します。
by 琉那 (2008-05-11 13:42) 

pace

お久しぶりです
その年代の女性作家の持つ反権力的セクシャリティには敬服します
by pace (2008-05-11 14:39) 

katsura

Red Night、確かにモーセのように人生のどこかのポイントで、救いがあり、ミッションを果たすような絵に見えてきますね。

誠に僭越ですが、モーセが流されたのは確かナイル川で、拾った王女もクレオパトラではないような気がします。ご確認下さいませ。
by katsura (2008-05-11 22:10) 

TaekoLovesParis

katsuraさん、ありがとう。なおしました。
by TaekoLovesParis (2008-05-12 09:12) 

aia

ヒルズクモ、初めて見た時から気になっておりました。パリに住んでてよかった!近いうちに行ってみます。いい情報をありがとうございました♪
by aia (2008-05-12 18:31) 

aranjues

未だに六本木ヒルズさえ行ったこと無し(^_^;)。
5月、6月と上京する機会があるから、時間があったら
このママンを見に行ってきます。またお上りさんです。
ルイーズのお母様、、「母は寛大ですべてを知り、操作していた」
なんて女性の鏡ですね(笑)。
Taekoさんの新しい記事が未だにRSS更新記事通知に反映されず。
油断してたら記事がアップされて見逃しておりました(-_-;)
by aranjues (2008-05-13 00:41) 

pistacci

私もはじめて六本木ヒルズに行ったときに『なんでこんなところにクモ!?』と、嫌悪感が先にたって、ささっと通り抜けたのでした。その時ちょうど、草間弥生展を見たから、両方のインパクトが強かった。
クモ、へび、蛙・・日本とラッキーアイテム?がちがうのね。

・・・最近、PCが見られる時間が細切れで、おじゃまするのが遅くなりますぅ。
by pistacci (2008-05-13 21:27) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます。(お返事遅くてすみません)
▲りゅうさん、
<今度、腹括って、六本木散策>って、そ、そんな覚悟なさらなくても~(笑)  このクモは、色も色だから、建物の一部みたいになじんで、気づかない人も多いみたいですね。ヒルズの森美術館の現代アートの企画展は、
難しいので、ミッドタウンびいきです。

▲Lunaさん、そう、このパワー、見習いたいですね。
ルイーズは、パリで美術学校にも行ったので、彫刻や絵で表現ができる上、NYに行ってからは夫を通して、マルセル・デュシャン、ミロ、デ・クーニングなどの芸術家と知り合って刺激をたくさん受けたようです。
感性には、いつも刺激が必要ですね。

▲paceさん、そうなんですよ~。ニューヨークという活躍の場があってこそ、彼女は真価を発揮できたのでは、と思えます。

▲aiaさん、この企画展は6月2日までです。
ポンピドーセンターの美術館の横にある平屋の建物が、アトリエ・ブランクーシで、ブランクーシのアトリエの再現、作品もごろごろしています。入場料は無料。

▲aranjuesさん、フランスはカトリックの人が多く、離婚できないんですよ。
(サルコジ大統領はカトリックじゃないんでしょうね、離婚したから) 
フランス人女性が夫の浮気に対して、「年取れば、私のところに戻ってくるわよ」と、子供の悪戯を見ているかのごとく、さらりと言うのを時々聞きます。ま、実際、そういう例が多いですし、ね。

▲pistaさん、草間弥生の水玉尽くしの展覧会でしょ。パリでとっても評価されている人なんだけど、私はどうも、、。このクモも、はじめ見たとき、実は拒否反応。門(ゲート)と思えばいいか、という感じ。作品の意図がわかった今は、ようやく、巣の中で守られている感じがでてきましたが。
by TaekoLovesParis (2008-05-17 12:38) 

いっぷく

Taekoさん♪
リンクありがとうございました。
クモといえばルイーズというイメージがもう離れなくなりました。
by いっぷく (2008-05-21 20:22) 

TaekoLovesParis

いっぷくさんの写真は、ちょうどクモの大きさがわかる写真。
テムズ川に面していて、いい構図の写真ですね。こういう写真は、たくさんの人に見てほしいな、と思います。
by TaekoLovesParis (2008-05-21 23:48) 

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