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フューチャリズム(未来派) [☆彡Paris  展覧会]

 ピザの店、ボルゲーゼ美術館展とイタリアづいている私の記事。
イタリア続きで、今回は、パリのポンピドゥーセンター(近代美術館)で、2008年末に見た展覧会、
20世紀初頭のイタリアの芸術運動「フューチャリズム(未来派)」をご紹介。
 「フューチャリズム」は、1909年にイタリアの詩人マリネッティが、「ル・フィガロ」紙に、
「フューチャリズム宣言」を出したことから、その名がついた。
フューチャリズムFuturismeは過去を断ち切り、テクノロジー(技術)に裏打ちされた
新しい世界の伝説を作ろうとするものだったが、短命に終わった。
しかし、フューチャリズムは、アヴァンギャルド(前衛芸術)の元となった。

1、ジャコモ・バルラ(Giacomo Balla)
「バルコニーを走る若い女」1912年
FuBalla.JPG

 連続写真のように、ひとつの画面の中に瞬間的画像を複合させることで、
動きを表現しようとした。
「すべてのものは、近づいて来ては通り過ぎる。動かないものはない。」
今ではアニメーション技法として当たり前のことだが、当時は革新的であった。

2、 ジーノ・セヴェリーニ(Gino Severini)
「忘れられないダンサーたち」 1911年
色弱テストみたいな。。でしょ?
点描からキュビズムへの移行が見て取れる。

FuSeverini.JPG

3、ルイージ・ルッソロ(Luigi Russolo)
「La Rivolta」(革命) 1911年
Russolo.JPG

直線を使った絵を描いていたルッソロは、「騒音芸術」というミュージックアートを創造し、
音楽での「フューチャリズム」に貢献した。

 以上のような絵のイタリアの「フューチャリズム」展が、1912年にパリで開かれ、
大いに話題になったことから、パリのキュビズム画家、ドローネーやメッツィンガーは、
影響を受け、下の絵のように、動きのある明るい色彩の作品を発表した。
ピカソ、ブラック、ファン・グリスらの正統派キュビズムは、形に重点を置いていたため、
静止的で、色は暗かったのである。
   
4、パブロ・ピカソ(Pablo Picasso)  
「La Dryade」 (ドリュアデ=ギリシア神話の木の精 ) 1908年

picasso.jpg

5、ロバート・ドローネー(Robert Delaunay)
「パリの街」 1912年
左右に、遠景に、当時のパリの建物が見える。横4mの大きな絵。

FuDelauney.JPG

5、ジャン・メッツィンガー(Jean Metzinger)メッツァンジェとも表記
「競輪選手」 1912年
これも遠景に競技場の観客席が見える。楽しい絵。
未来派は、機械や動きに関心があったので、自転車はよい題材だった。

FuMtzinger.JPG 


 マルセル・デュシャンらのキュビストたちは、「セクションドール」(黄金分割)という
グループを立ち上げた。色彩豊かでダイナミックなフューチャリストの主張をキュビズム的、
幾何学的に構成した作品を発表した。

6、マルセル・デュシャン(Marcel Duchamp)
「Nu descendant l'escalier」(階段を下りる裸の人) 1912年
階段を下りる動きが、フューチャリズムの連続写真の影響を受けている。

Duchamp Nu descendant i'escalier.jpg   

未来派+キュビズム運動はロシアにも広がった。

7、カシミール・マレーヴィチ(Kazimir Malevitch)
「Portret Ivana Kluna」 (Ivana Klunaの肖像) 1911年
 一見すると機械のようだが人の顔。目がじっとこちらを見据えている。

      FuMalevitch.JPG

イギリスにも、「フューチャリズム」は伝わり、Percy Wyndham Lewisがリーダーであった。

詩人アポリネールは、特に色彩豊かなキュビストたちを、ギリシア神話の竪琴の名手「オルフェウス」
にたとえ「オルフィスム」ORPHISMとよんだ。代表格は、ソニア・ドローネーである。

8、ソニア・ドローネー(Sonia Delaunay)
「電気的なプリズム」 1914年
5、ロバート・ドローネーの妻。色彩を重視し、抽象画の元となった。 

SoniaDelauneyS.JPG

活発だったフューチャリズムやキュビズムだが、1914年の第一次世界大戦の勃発で
活動は、終わりを遂げた。

 ★この展覧会は、パリの後、ローマの美術館、イギリスのテート美術館と巡回した。
フューチャリズム宣言が出されてちょうど100年。改めて、フューチャリズムの
及ぼした影響を考えると共に、今、私たちが未来をどう考えるかが、問いかけられている。


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yk2

ピッツアからフューチャリズム行っちゃいましたか。ちょっと飛び過ぎです(笑)。

あんまり馴染みのない分野ですが、イタリアにはこんな美術的流行が有ったから工業デザインがずば抜けて進歩したんでしょうね。芸術や応用美術にスピード感や未来性を求めた結果がピニンファリーナを生んだんだろうな、って具合に。
by yk2 (2010-02-09 22:52) 

TaekoLovesParis

yk2さん、イタリアのデザインは、ずば抜けてますよね。
ピニンファリーナは、私が好きだったアルファのスパイダー。ジウジアーロの117
クーペもよかったし。性能よりもデザイン優先なのがイタリア製品のおもしろい
ところですね。美意識の追求の歴史が長いし、ラテンの特質で、過去を振り返る
よりも未来を見ているからでしょうね。
by TaekoLovesParis (2010-02-09 23:09) 

りんこう

20世紀の音楽史の本を読んでいてルッソロという人の名は出てきました。
ルッソロは騒音を発する「楽器」を発明したそうです。
ただこの「楽器」は現存しないそうで残念。どんなものか見てみたかったです。
僕はこの中ではロバート・ドローネーの絵が好きですね。
淡い色づかいがいいですね。でも、これがパリの街なのかぁ…。
by りんこう (2010-02-09 23:41) 

TaekoLovesParis

りんこうさんが、ルッソロについて説明してくださったので、興味がわいて、私も調べてみました。大きな拡声器がついた箱がいくつもある写真でした。これが今の
「電子音楽」の理論になったんですって。
私が読んだ本では、ルッソロの父は、教会の音楽長で、兄弟も音楽家という家。
あまり絵がうまくなかったから、音楽に戻ったと書いてありました。音楽も絵も両方
って、すごいですよね。新しい表現を考えることに才能があったんですね。

ドローネーのこの絵は、かなり大きいので、ポンヌフ?やセーヌ川、エッフェル塔など実際のパリが背後にはっきり見えました。別に「エッフェル塔」というエッフェル塔がゆがんでる絵もありました。ロバート・ドローネーの色づかいは洗練されていますね。
by TaekoLovesParis (2010-02-10 00:40) 

よしあき・ギャラリー

みんな、素敵ですね。
いつかは、こんな絵を描いてみたいなぁ~・・・
by よしあき・ギャラリー (2010-02-10 05:36) 

匁

上野の東京都美術館に行くと毎週入れ替わり立ち替わり多くの美術団体の絵画が展示されています。
その内の大抵は具象絵画ですが時たまフューチャリズムに属する絵が有ります。もう少し新しい絵画と思って見ていましたが20世紀初頭の手法による絵画なんですね。
勉強になりました。
もっとも今はキャンバスから飛びだして活動されているアーチストが多い時代ですから。
by (2010-02-10 19:05) 

TaekoLovesParis

よしあきさん、それぞれ明確な目標をもって描かれた絵ですね。
「いつかはこんな絵を」という目標を持っていらっしゃれば、、そして大いなる
きっかけがほしいですね。
by TaekoLovesParis (2010-02-10 21:57) 

TaekoLovesParis

匁さん、都美術館へは、私も知り合いの○○会というのを見に行くことがあります。
そうですね、時々、あっと驚くおもしろいものもありますね。でも基礎力がしっかり
してないと、伸びないんだそうです。
最後の1行に笑いました。
by TaekoLovesParis (2010-02-10 22:02) 

pistacci

記事からずれちゃうけど、>色弱テスト って、ものすごく久しぶりに聞く言葉でした(笑)
小学生の頃、絵本見たいのをページめくりながらやりましたねー。
いまもあんなふうなのかしら。
知能テスト、とか、勉強の教科じゃないテストは好きでした。
・・・記事から大幅ズレのコメントでごめんなさい~。
by pistacci (2010-02-10 23:28) 

TaekoLovesParis

pistaさん、今もあんなふうよ。職場の健康診断でやるので。
もちろん視力も、それから聴力も。体重計が体脂肪つきじゃないので、
ひと安心。
知能テストって、私の小学校では、「ようい、どん!」で始まってました。
今も同じようなのかしら?
by TaekoLovesParis (2010-02-11 00:03) 

末尾ルコ(アルベール)

う~ん・・、いいですねえ(^_-)-☆

             RUKO
by 末尾ルコ(アルベール) (2010-02-11 00:11) 

ムーミン

抽象画を見る機会はあまりないんですが、けっこう好きです。
どこに自分がいるか、探しているみたいで^^
万華鏡を見ている様な気持にもなれますねー。
by ムーミン (2010-02-11 08:17) 

バニラ

こういう絵画、好きなんですよ!
自分のイメージが広がるかならなぁ… 微妙な色合いもすてきだし。
by バニラ (2010-02-11 14:42) 

てんとうむし

Taekoさんの記事を拝見して初めて「フューチャリズム」を知りましたが第一次世界大戦前、1900年代初頭の絵画に心惹かれるものがあるので、もっと知りたくなりました。
by てんとうむし (2010-02-11 21:21) 

Inatimy

「バルコニーを走る若い女」・・・走れるほど広いバルコニーってスゴイ!と感心。
写真を順に見てたら、ふと、フェルナン・レジェのことが頭に浮かび、
気になって調べたら、やっぱり、「セクションドール」でつながってました♪
by Inatimy (2010-02-12 07:46) 

にこちゃん

今沢山巷にある「抽象画」の先駆的な時代だったんですね。
いきなり抽象画を観るよりも、どうやって崩していったかの過程が
わかりやすくてまだまだ「抽象」になってないところが興味深いです。
点描、綺麗です~
自分は色弱になってないかじっくり眺めてみようかな。(笑
by にこちゃん (2010-02-12 18:31) 

miku

連続写真のような表現、面白いですねー
競輪選手の絵も好きです
by miku (2010-02-13 18:35) 

りゅう

イタリアづいてますね~
この流れで「マッキアイオーリ展」ということでしょうか?(^_^)/
「フューチャリズム」は特に意識していないのですが、
このあたりの作品は20世紀絵画の展覧会でそこそこ鑑賞しています。
ドローネー夫妻の作品、私も好きですよ♪ヾ( ̄ー ̄)ゞ
by りゅう (2010-02-14 18:43) 

TaekoLovesParis

りゅうさん、すごいご明察!
マッキアイオーリ、行きました。めずらしく図録も買いました。
記事を途中まで、書きました。
私は、ソニア・ドローネーは、色づかいが、婦人服デザイナーのソニア・リキュエル
に似てるから、ずっと前から知ってたけど、ロバート・ドローネーを知ったのは、
最近です。
3月初めにパリに行くので、前回見た展覧会は記事にしておかないと、っていう
のもあります。
by TaekoLovesParis (2010-02-15 01:21) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます
▲ルコさん、そー、いいでしょ。

▲ムーミンさん、万華鏡、なるほどー、いいたとえですね。
抽象画は、しっくり心に来るものと、上の空になってしまうものと、私は
はっきり、分かれちゃいます。

▲バニラさん、バニラさんは、意外なものを見つけて、記事で紹介してくださって
ますものね。バニラさんは、センスがいいだけでなく、新しいものを見つけるのが
上手だから。お菓子もね(笑)

▲てんちゃん、アムステルダムでいろいろごらんになって、心惹かれるものが、
あったのかしら。いろいろ興味がわくとよけい楽しくなりますね。

▲Inatimyさん、おーすごい。そうなの、レジェはセクションドールで、リーダー格
だったのに、省いちゃって。。機械にあこがれて、機械を絵に取り込んでいましたね。
バルコニーって、他に意味があるのかと私も辞書をひきました。でも、やっぱり
窓の手すり、でした。バルコンの上を走るなんて、サーカスみたいね。

▲にこちゃん、私も過程、プロセスが興味深かったです。くずす過程がわかると、
謎解きができたみたいでうれしかったです。色彩の豊かさは、冬にはうれしいです。

▲mikuさん、競輪選手、おもしろいでしょ。スピードがあるから、車輪やハンドルが
もうひとつ見えたりするのかな、って。キュビズムっぽくもあるし。
by TaekoLovesParis (2010-02-15 01:40) 

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