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カポディモンテ美術館展 [展覧会(西洋画)]

 東京では昨日、終わった「カポディモンテ美術館展」。
終了間際に行ったため、遅い記事ですが、10月9日から12月5日まで、京都文化博物館
で開催されます。

 カポディモンテ美術館はナポリにあるファルネーゼ家のコレクション。ファルネーゼ家は、
教皇を輩出したことから、勢力を伸ばし、子孫はパルマ公、スペイン王にもなった貴族。
コレクションは、ルネッサンスからバロックまでの名品が多い。

 一番、話題の作品は、ポスターに使われているパルミジャーニーノの「貴婦人の肖像
(アンテア)」
CMAntea.JPG

 衣装と目の力で他を圧倒する。
きれいな首を見ていると、パルミジャニーノの代表作「首の長い聖母」を思い出す。

 アンテアには、目で負けるけれど、ブロンズィーノの「貴婦人の肖像」も魅力的。
優雅で穏やかな微笑み。衣装の素材、アクセサリーなどが細かく描かれている。
メトロポリタン美術館で、「若い男の肖像」に目が釘付けになり、名前を見たら、
ブロンズィーノだった。フリックコレクションで見た貴族の若い男の肖像もよかった。

  CMBronzino.JPG

 一番期待していたのは、パルマ展で見た画家「スケドーニ」の絵。
「キューピッド」は可愛かったけれど、もう一作は、リアルで私の好みではなかった。
 二番期待の「コレッジョ」の作品は、「聖アントニウス」(1515年)
ダヴィンチの手法に倣って、光の調整で顔が背景にとけこむようにしているそうだが、
何よりも、寂しそうな沈んだ表情に目が行き、胸が痛んでしまう。

  CMStAntonius.JPG

 pistacciさんの記事で見たグイド・レーニの「アタランテとヒッポメネス」は、
大きな絵で、インパクトがあり、動きが感じられ、おもしろい構図。
解説によると、バレエの男女2人の「パ・ド・ドゥ」の動きだそう。当時マントヴァの
宮廷では、音楽とバレエがはやったという背景がある。
女性の持つ布がブルーで、男性の持つ布がピンクというのがおもしろい。
走って上気した男の身体がピンク色に染まり、うつむく女はブルーがかった肌色。

  CMReni.JPG

 アルテミジア・ジェンティレスキの「ユディットとホロフェルネス」(1612)。(下左)
カポディモンテ美術館がこの作品を買った時は、カラヴァッジョの作品とされていたが、
100年後、研究の結果、アルテミジア作品とわかった。
ユディットの真剣な顔。鮮やかな青い衣装と、侍女の赤の衣装の対比。交錯する3人の
6本の腕。実際に暴行を体験をした女性画家、アルテミジアの恨みのこもった筆による
ドラマティックな作品。

 CMJudit.JPG  CMSebastianno.JPG

 私は、宗教画の主題としては、「ユディット」より、「聖セバスティアヌス」が好きだ。
弓矢が身体にささっても耐えるセバスティアヌス。これはガローファロ(1515)の作品。
背景がゆったりとした美しい田園風景なのが、硬質のマンテーニャの同作品と違る。
 
 絵ばかりではなく、小さな彫刻もあった。
ジャンボローニャの「ヘラクレスとエリュマントスのイノシシ」(16世紀後半)
力自慢のヘラクレスが、付近を荒らしていたエリュマントス山のイノシシを退治して、
生け捕りにし、担いでいるところ。ヘラクレスは調和のとれた体つきで美しい。
この作品は、世界中の美術館やコレクションにある同じテーマの作品の原型。
ジャンボローニャは、ミケランジェロとベルニーニの間に位置づけられる16世紀の
彫刻家。

   CMBoulogneErcole.JPG
 
 時代的にほとんどが宗教画だが、よく見るとおもしろいものもある。
これは2人の衣装が鮮やかで、大きな目立つ絵。
アンニーバレ・カラッチの「リナルドとアルミーダ」(1601年)
魔女アルミーダと、彼女に誘惑され宮殿に連れてこられたリナルド。
鏡で自分たちの顔を見ている。
左端に兵隊が2人、木の陰から覗いているのがおもしろい。

   CMCarracci.JPG

 バドロッキオの「悔悛するマグダラのマリア」(1620年)、隣には「祈る聖ペテロ」があった。
もう少し行くと、フセペ・デ・リベーラの「悔悛するマグダラのマリア」(1618年)があり、同じ
テーマでも全く異なる構図、画風だった。ラ・トゥールにも「マグダラのマリア」がありましたね。
   

 デッサンもあり、全部で80点と作品数が多くないので、「あら、もう終わり?」
と思ってしまったが、とても見ごたえがあった。


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コメント 20

ぎーこ

もうすぐこちらでもはじまりますので楽しみにしています。
作品数が少なくても見応えがあるのはいいですね♪
by ぎーこ (2010-09-28 06:34) 

baby_pink

色彩がとても深みがあって、惹きこまれそうです。。
バレーダンサー男女の肉体美もすばらしく、うっとり^^
芸術ってこういうものを言うんだなぁ。。と実感します。
落ち着きます。✿。
by baby_pink (2010-09-28 06:45) 

いっぷく

パルミジャニーノ とブロンズィーノが描いた両貴夫人は小顔で髪型も同じ。身につけているものが貴夫人だけにゴージャス。
同じ年の生まれの画家だけにその時代を映しているんですね。
「マグダラのマリア」は多くの画家に描かれてきていてどのように描かれるのかが
ちょっと興味深いです。
by いっぷく (2010-09-28 07:00) 

てんとうむし

ええ、作品が少なかったので私も「あれ?」と思いました。
その分常設展をゆっくり見る余裕もできたのでよかったけれど^^

「ヘラクレスとエリュマントスのイノシシ」も美しい作品で釘付けになりました。
「リナルドとアルミーダ」のアルミーダの意味深な微笑みも、さすがの魔性です。
by てんとうむし (2010-09-28 23:08) 

Inatimy

女性が青い色をまとっているのは、最後の「リナルドとアルミーダ」もですね~。
ここでも男性はピンク色♪ 
聖母マリアのまとう青布からきてるのかしら。
青はラピスラズリーの高価な絵の具でもあるし、
金の林檎を拾うために立ち止まっても、首を切り落とそうとしてても、
誘惑していようと、「青」を身にまとうって、なんだか女性の特権みたいな感じかな。
by Inatimy (2010-09-29 00:35) 

aranjues

パルミジャーニーノの「貴婦人の肖像(アンテア)」、
見れば見るほど魅力的です。
考えたら、今年はまだ書以外の展覧会は行ってないよな。
これなら観に行きたいところですが、東京は無理そう、
京都の紅葉のシーズンにやってればいってみようかな。

by aranjues (2010-09-29 11:49) 

chicory

特にイタリアの彫刻には(自分には珍しく)ひかれるものがあります。
ナポリを思い出します。
by chicory (2010-09-30 01:37) 

匁

眼力のある絵は匁的には好きです。
眼を強調した絵を描いたり作ったりしています。

ヘラクレスとイノシシがこの種の彫刻の原型ですか。!?
なるほど絡み合って (力) の配分が難しい?のかなあ~。?
by (2010-09-30 16:23) 

雛鳥

少々間が空いてしまいましたので、いくつかまとめて拝見させていただきました。
芸術の秋、堪能していらっしゃいますね♪
こちらの展覧会、もう終わってしまったのですね…。
私もpistacciさんのところで拝見して興味があったので、気になっていました。
少ない作品数でも満足できるほど、一点一点の質がとっても高いのですね。
こちらもですが、先の記事の小泉淳作展に行ってみたかったです。
展覧会をやっていたことすら知らなかったので、手遅れも何もないですが、
桜の絵なんかは、ものすごく私好みでかなり心惹かれました。
予定を調べて、横浜に行ってみようと思います。
展覧会は、計画的に行かないと、本当にすぐ終わってしまいますね…。
明日は代休を取ったので、上村松園展に行ってきます。
by 雛鳥 (2010-09-30 23:01) 

TaekoLovesParis

雛鳥さん、小泉淳作展の記事を書きながら、雛鳥さんがお好きに違いない、って
確信してました。千鳥が淵にあった山種での桜の展覧会の記事をよく覚えてます。
道成寺の桜、入相桜、あれよりもっとダイナミックで、奥村土牛の吉野の山の桜の
イメージに近いかしら。とにかく迫ってきますから、一見の価値あり、です。
明日は、松園ですか。久しぶりの展覧会ですね。
by TaekoLovesParis (2010-10-01 01:22) 

roseadagio

最後の絵は男女と兵隊の対比が面白いですね。「ユディットとホロフェルネス」も劇的な場面で・・・このような絵を描く意図が知りたくなります。
by roseadagio (2010-10-01 15:56) 

hatsu

「リナルドとアルミーダ」、おもしろいですねー。
アルミーダの魅力的な肌のつや、
誘惑されちゃいますね^^
by hatsu (2010-10-02 08:00) 

りゅう

パルマ展(07年)の続編のような展覧会でしたね。
私もブロンズィーノの作品に魅了されました。
最初の展示室からブロンズィーノ、パルミジャーニーノ、ティツィアーノ。
ドン、ドン、ドドン、と。。。驚いた~
アンニーバレ・カラッチの「リナルドとアルミーダ」はお気に入りです。
こんな美人の魔女だったらイチコロです。
誘惑されなくてもついてっちゃうかも。。。(^_^;)
今年はボルゲーゼ展とカポディモンテ展を鑑賞の軸に据えていましたが、
ともに少数精鋭のとっても濃い展覧会でした。
ボルゲーゼ展の後にはルノワール展、カポディモンテ展の後にはオルセー展をハシゴしましたが、余韻が消えることはありませんでした♪ヾ( ̄ー ̄)ゞ
なんだか今年はこの2展で満足しちゃっています。。。(^_^;)
by りゅう (2010-10-03 10:45) 

ルビー

このあたりの時代のイタリアの絵は肌、筋肉のハリ、ツヤがルネッサンスの流れですか?弾力感が良いですよね。
ところで、カポディモンテと言えば、私はカポディモンテ焼きという陶器の素敵な花瓶を以前もっていて、大好きでしたが、水道で洗っている時かなにかにあっさりと割ってしまって残念なことをした記憶が・・・よみがえりました。
by ルビー (2010-10-03 21:00) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます
▲ぎーこさん、見ごたえがあります。クラシックのBGMがぴったりの絵たちです。

▲baby-pinkさん、グイド・レーニの「アタランテとヒッポメネス」バレエダンサーの
肉体の美しさをひきたてているのは、構図なんですよね。目新しく、斬新な
感じがしました。大きな絵は、すっとその世界にはいれるから、いいですね。
この絵の前にずっと立っていると、音楽が聞こえてきそうです。レーニは音楽家の
息子として生まれたので、最初は音楽家をめざしていたんですって。

▲いっぷくさん、パルミジャニーノ とブロンズィーノは、同じ年生まれだったんですね。
気付かなかったこと、教えてくださって感謝。
ティツィアーノの「マグダラのマリア」は、リンクを貼ってあるpistaさんのところで
すぐ見れます。「悔悛するマグダラのマリア」をティツィアーノは何回も描いている
そうです。巻き毛のような、お下げのような髪の毛の描き方が絶妙でした。

▲てんちゃん、常設展は、広くなって、充実してきましたね。同じ会場での「19世紀のフランス版画展」もよかったです。
この展覧会は、印象に残るドラマティックな作品が多かったですね。

▲Inatimyさん、青への考察、なるほどね、って思いながら、読みました。
マリア様の青い衣装はお約束ごとですものね。高いラピスラズリーを使って、
別格であることを表現したんでしょうね。
青=高貴なものを身にまとうのは、女性の特権って、Inatimyさん、ナイスな一言
です。
by TaekoLovesParis (2010-10-03 23:43) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます
▲aranjuesさん、京都の紅葉と展覧会という組み合わせ、いいですねー。
アンテアに会いに行ってください。ナポリに帰ってしまったら、会いに行くのも
大変。日本巡業の期間中にぜひ。

▲chicoryさん、イタリア彫刻は私も好きです。ミケランジェロもすばらしいけど、
ベルニーニの優雅さが好きです。庭に優雅な彫刻が置いてある家、すてきですよね。でも日本では、台風が来るから無理ですね。

▲匁さん、「阿修羅トンボ」見せていただきました。阿修羅の目もトンボの目も
強い「めぢから」ですね。特に阿修羅の眼は一度見たら忘れられない、何でも
見通してしまうような眼でした。


by TaekoLovesParis (2010-10-04 00:02) 

pistacci

リンク、ありがとうございます!!
・・コメント入れたつもりが、消えてましたので、いまごろになっちゃっててごめんなさい。

合間の時間に行ったにもかかわらず、充実感があった展覧会でした。
Tekoさんの記事を読んで、あぁそうだった、と、再確認しています。
いつも展覧会は楽しみとして行っているので、作者名や絵に関する知識って、覚えようともせずそのときどきの感動だけで過ごしてきています。でも、その中ですこしずつ残ってきている知識としてユディットとともに聖セバスティヌスは、印象的な絵です。
たしかはじめて見たのが、新宿のベルジーノ展だったような。痛そうですけどね(^^;

日本では高貴な色は紫でしたっけ?絵画では青。
改めて見直すと、たしかにみんな青。納得です。
by pistacci (2010-10-04 00:23) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます
▲roseadgioさん、。「ユディットとホロフェルネス」は、旧約聖書外伝にある物語で、
愛国心が強く美しいユーディットは、国が戦いに負け、敵のものになろうとしているとき、敵将ホロフェルネスに酒を飲ませ、寝入りばなを襲い、殺し、祖国を救ったんです。美しい人と生首という猟奇性、ドラマティックであることから、人気がある絵の主題で、多くの画家が描いています。殺す場面でなく、生首の前にたたずむユーディットというクラナッハの名作もあります。
キリスト教美術は、字が読めない人が多かった昔、見る聖書だったんです。そのために、わかりやすい主題が選ばれたんだと思います。

「リナルドとアルミーダ」は、大きな実物で見ると、兵隊がはっきりみえるので、
そちらにも関心がいきます。

▲hatsuさん、アルミーダは、かなり余裕の表情で、誘惑するのを楽しんでますね。対するリナルドは余裕なし、恋に夢中になってるのが、おもしろいです。肌の美しさ、たしかにそうですね。これも誘惑の武器のうちですね。

▲りゅうさん、誘惑されなくてもついてっちゃう、、に笑いましたよー。美しい人との
思い出は、勲章ですものねー。
パルマ展、ボルゲーゼ展、これ、とルネッサンス美術の重厚さに私も惹かれてます。
宗教画は約束ごとがわかってくると、余計、おもしろいですね。同じ主題で何人もの画家が描いているのの比較も楽しいし。
10月1日は、損保美術館が無料日だったんです。夜8時までやってたので、行きました。ウフィツィ美術館の自画像コレクションです。アンニーバレ・カラッチもあったので、
「おー!」と思いました。知ってる画家が多く、それぞれ趣向をこらしていて、よかったです。図録も買ったので、そのうち、写真、載せますね。

▲ルビーさん、カポディモンテ焼きというのがあるんですね。知らなかったです。
壊れてしまって残念でしたね。。陶器は壊れると、かなり落ち込みますね。

▲pistaさん、もう一度、気をとりなおして書いてくださってありがとう。
ペルジーノ展は、pistaさんの少女時代?という絵があった展覧会ですね。
私もペルジーノ展で宗教画のよさに引き込まれました。
聖セバスティアヌスもいろんなバージョンがあって、興味深いです。矢がひたいに
一本だけ刺さってるのもありましたね。
日本の高貴な色は、法衣の紫、ローマ法王は赤ですよね。
色に対する意識って、国によって違うのが、おもしろいですね。
英国の車「ミニ」で、私が好きな色は、Royal British Green.深緑だけど、
Royalがつくから、高貴なのかな?
by TaekoLovesParis (2010-10-04 22:33) 

ムーミン

こんばんは。お久しぶりです。
パルミジャーニーノの貴婦人の肖像、眼力もすごいんですが肌も綺麗で魅力的ですね。
観てたら、惹きつけられそうです。
シャガールが好きなので、行きたかったんですが・・・シャガール展もう終わりですね。
by ムーミン (2010-10-07 20:14) 

TaekoLovesParis

ムーミンさん、こんばんは。
芸大美術館のシャガール展、11日までですものね。私も日程のやりくりが
つかず行かれそうもありません。最近は、見逃しているものが多くて。。
若いときは、モデルの肌の美しさにあまり目がいかず、表情やポーズが
気になっていたのですが、年齢と共に視点も変わってきますね。
by TaekoLovesParis (2010-10-08 22:22) 

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