SSブログ

Korin展  2つの「燕子花図屏風」 [展覧会(日本の絵)]

 根津美術館の「Korin展」に行った。
光琳展なのに、「Korin展」と英語なのは、この季節の恒例、国宝「燕子花図屏風」
の御開帳に加え、今年は、メトロポリタン美術館の「八橋図屏風」が並んで展示
されているからだ。

panf.jpg

 100年前、鳥取の池田家所有であった「八橋図屏風」が、三越呉服店の光琳展に
出品され、同時に根津氏所蔵の「燕子花図屏風」も展示された。しかし、戦後、
「八橋図屏風」は、アメリカに渡り、2つを並んで見る機会は、なくなってしまった。
 「八橋図屏風」は、伊勢物語に、「燕子花咲く三河の国の名所・八つ橋」と詠まれて
いる情景を描いたものである。
KorinKakitubata3.jpg
屏風全体に大胆に八橋がはいっている。
(橋は八つなく、七つ?)

 一方、おなじみ根津所蔵の「燕子花図屏風」は、花だけなので、比較すると地味に
見えるが、花の色と大きさは、八橋図よりずっと濃厚である。

KorinKakitubata2.jpg
制作年は、燕子花図屏風が光琳40代で、八橋図屏風は10年後の50代である。
「燕子花の葉は、先でちょっとだけ曲がってるから、見分けやすいのよ。ほら」
と、お花に詳しい同行のM子さんが教えてくれた。10年後の「八橋」の方が、花への
観察が鋭くなったのか、燕子花の葉の特徴をよくとらえている。

実際に見ると、橋へのたらしこみが、美しく、大きなアクセントになっている。
また、横の方から見ると、橋が立体的に見えるので、細かい計算がなされていると
感心する。私が行った28日(土)は、混んでいなかったので、いろいろな角度から
見たり、近づいたりできた。

「夏草図屏風」「四季草花図」は花が丁寧に描きこまれ、配置もよい。知っている花
ばかりなので、興味を持って眺める。

ダイナミックで面白い!と、じっくり見たのは、「白楽天図屏風」。舟が垂直に近い大胆
な構図と覆いかぶさるような波の表現。波間の水の粒まで描きこまれている。

光琳没から100年後、酒井抱一は、光琳展を行い、「光琳百図」を制作した。
今回、それも展示され、墨でさっと描かれた「草花図」や「八橋図」を見ることができる。
(今回展示されていないが、抱一の光琳ふう「八橋図屏風」の写真は、こちら

最後は、抱一の「青楓朱楓図屏風」。これも光琳画を写したと考えられていること
からの展示であろう。 大琳派展(2008年秋)、酒井抱一展(2011年秋、千葉市立美術館)
でも見た作品。鮮やかな色合い、大胆な構図なので、記憶に残る。

korin.jpg
 
 絵を見たあとは、お茶室が点在する起伏にとんだお庭も散策できます。
つつじと藤が見ごろでした。
居心地のいいカフェもあるので、ゆっくり休めます。モンブラン(ケーキセットで
900円)がおいしかったです。

nice!(46)  コメント(14)  トラックバック(0) 
共通テーマ:アート

nice! 46

コメント 14

チョコローズ

根津美術館、そういえばありましたが、先日の散策では時間の都合で行かなかった。
お茶も出来るなら休憩を兼ねて行けばよかったかな?
先日の浮世絵もそうですが、日本の素晴らしい屏風絵たちもずいぶんと海を渡っていますね。
里帰りしててチャンスだったんだ~次のお散歩コースに加えたいです。
by チョコローズ (2012-05-03 00:25) 

yk2

去年、震災で延期になってしまった分ですね。今でも決して大きな余震や直下型大地震の不安が拭えない中、メトがこうして1年後にきっちりと約束通り八橋図屏風を貸し出してくれた事が嬉しいです。今回の事と云い、去年のワシントン・ナショナル・ギャラリー(こちらは若冲貸し出しの見返りもあったけど・・・^^;)と云い、なんだかんだ云っても最友好国のアメリカ、本当に有り難いご厚意だなぁと感じます。

で、taekoねーさんは、どうして光琳が10年経って橋を描き足したんだと思われました?(笑)。
確かに橋が在れば物語の引用だと判りやすいでしょうが、僕は橋が無い方が、自分で橋を渡ってカキツバタを眺めている気分(要は業平の目線)に浸れる様にも思えます。

>(橋は八つなく、七つ?)

ふふふ、幾度か曲がっていたとしても、描かれている橋は1本と数えてよいのかも(?)知れませんよ~(笑)。以前に僕が大琳派展で其一のおばけ朝顔の記事を書いたその後に、ちょっこっと調べてみた事があったんですが、この地は川の水筋が蜘蛛の手の様に8つに分かれていて、それに橋を渡したから八橋と呼ばれる様になったんだそう(※参照は「すらすら読める伊勢物語」:高橋睦郎著、講談社より)で、そこには8つの橋が在ったとは、特には書いてなかったですよん。真相やいかに?、ですね(^^。後はいつもの様にいなちみ特派員が調べてくれるかも?(笑)。

by yk2 (2012-05-03 08:54) 

バニラ

わぁ~ わたしも足を運んできたところです♪
よかったですよね。 根津位の大きさの美術館が好みのわたしです。 美術館より庭園の方が何倍も広くてそれもまた別の楽しみを味わえました。
by バニラ (2012-05-03 09:00) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます
▲チョコロさん、5月1日は朝雨が少し降ったけど、午後はお散歩にちょうどよかったですね。表参道辺りは、今、新緑がきれいですね。
日本の敗戦後、貧乏だった時代、いい美術品がたくさん海外に流出したけれど、
見方を変えれば、○○家の御蔵でカビがはえるより、大切に保管してもらったほうがよかったのかも、と思ったりします。
カフェでは、軽い食事もできるようでした。

▲yk2さん、昨年、震災で延期になったときは、がっかりしたけれど、今年、見ることができてよかったです。メトロポリタン美術館に行っても、いつも、これが展示してあるわけじゃないんですもの。

本日は、「10年後に橋が加わったことへの解釈をせよ」、という課題ですか(笑)
宗達画を参考にして描いた「伊勢物語八橋図」、掛け軸で展示されているんだけど、これは物語そのもの。業平と従者かしら、3人の人物が中心にいて、左に橋が少し見えるという構図。これより後に描かれたのが、かきつばた屏風。花だけを描きながらも、光琳の頭の中には、八橋の場面が残っていたのだと思う。
yk2さんもご存じのMOA美術館所蔵の国宝「紅白梅図屏風」、これは真ん中に
流水があるでしょ。モチーフのような感じで。こういうふうに異質な何かを描きくわえることで、屏風全体に立体感がでて、梅がひきたつという効果、同じく、橋を加えて、かきつばたが引き立つ、絵全体が引き締まる、という効果をねらったのではないかしら。橋があることで遠近感が出てくると思いませんか?絵でなく、屏風だからこそ、デザイン性に優れた光琳の特質を見る気がします。

<僕は橋がないほうが、、、>カキツバタの写真をたくさん撮ってらっしゃるyk2さんだから、(業平目線で)、花を眺める愉しさの方に趣をおかれていらっしゃるのでしょうね。

八橋は川筋が八手に分れていて、、だったんですね。なるほど~でした。

▲バニラさん、ちょうどいらしたとこだったのね!原美術館とかここ、お庭つきで
程よい広さが、バニラさんのお気に入りでしょ。庭園は五葉松の間にお花が咲いて、足元にすみれ、目を上げれば藤棚と、日本の五月を満喫できますね。

by TaekoLovesParis (2012-05-03 10:15) 

Inatimy

確かに八つないけど、それを言っちゃうと前記事の北斎展の三河の八つ橋古図は、八本以上ありますよねぇ(笑)。
特派員が調べるも何も、yk2さんの伊勢物語のお話で十分では♪
パンフにも“彼はなぜ橋を描いたのか”って書いてありますね。
橋がある方が奥行きが感じられるけれど、本当の答えは会場にあったのかしら・・・。
絵を観た後にモンブラン、いいなぁ。
by Inatimy (2012-05-04 06:40) 

ENO

ご訪問ありがとうございます。
これからも、宜しくお願い致します。
by ENO (2012-05-04 09:50) 

バニラ

事後承諾でもうしわけありません~  「KORIN展」リンクさせていただきました♪
by バニラ (2012-05-05 11:11) 

TaekoLovesParis

Inatimy特派員殿、私もyk2さんの解説で十分だと思います。
パンフに、“彼はなぜ橋を描いたのか”って書いてあるのに、私が何もそれにふれなかったから、ご質問がきたようです。この写真ではわからないけれど、表装が、
橋のあるほうは、ほぼ橋と同じ色なので、引きしまって見えます。デザインされた感じがでてます。遠くから2つを見ると、橋つきが「動」で、お花だけが「静」のように感じられました。
お庭の池にカキツバタが咲いてるんですよ。粋な計らいだと思いました。
by TaekoLovesParis (2012-05-06 22:38) 

TaekoLovesParis

ENOさん、こちらこそ、よろしくお願いします。
by TaekoLovesParis (2012-05-06 22:43) 

TaekoLovesParis

バニラさん、春雨の中の根津写真、五葉松についた雨粒の写真、素敵でした。
by TaekoLovesParis (2012-05-06 22:44) 

バニラ

傘をさしながらでしたので、思うように撮れなかったのですが…ありがとうございます♪ 
美術館全体を写したものに、自分が写りこんでいました~ (よくわからないけれど…)
by バニラ (2012-05-06 22:48) 

りゅう

観に行きたいのですが、日程的にかなり厳しそうです・・・(T_T)
おぉ~、28日(土)ということは、
同じ日にTaekoさんはメトロポリタン美術館の日本美術を鑑賞し、
私はボストン美術館の日本美術を鑑賞していたということですね。
国内で所蔵されていれば国宝☆間違いなしの逸品がいっぱい来日中♪
アメリカの美術館が凄いというべきなのか、流出の仕方が酷いというべきなのか。。。
このような状況下でも惜しみなく貸し出してくれた所蔵館に大感謝です♪(^_^)
by りゅう (2012-05-08 02:17) 

TaekoLovesParis

バニラさん、おおきな木々の新緑に圧倒されて、傘さす人は、建物の中にいるように感じるけど、映りこんでるんですね。明日も午後から雨とか。。ここの所、雨が多いですね。
by TaekoLovesParis (2012-05-10 00:17) 

TaekoLovesParis

りゅうさん、28日は、りゅうさんの長~い欲張りな(ゴメン)一日でしたね。
日本美術の流出のしかたがすごい、と私も前は思っていましたが、最近は、ていねいに保管していただいて、、と思うようになりました。日本が貧乏、お金がなかった時代だから、仕方なかったのでしょう。1ドル360円って、今の1ドル80円の何倍、ですものね。メトロポリタン美術館に世界中のいいもの、お宝が集まっているのは、やはりお金持ちだから、ですよね。そう、貸してくれてありがとう、ですね。
by TaekoLovesParis (2012-05-10 00:25) 

コメントを書く

お名前:
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0