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「ドビュッシー、音楽と美術」展 [展覧会(西洋画)]

 この展覧会、ブリヂストン美術館に行ったのは7月、会期初めの頃だった。
オルセー美術館で開催された展覧会の巡回で、たくさんの絵がオルセー
から来るときき、楽しみにしていた。
「音楽と美術」というタイトルなので、ドビュッシーの曲がBGMとして流れて
いるのかと思ったら、終始、何の音もないままだった。
それならば、知ってる曲を思い出しながら見ようと思ったけれど、実際に
絵に向かいあうと忘れてしまう。

Debussy.jpg 

 チラシの裏は波の絵づくし。(下の写真参照)
上段左)モネ「嵐、べリール」 オルセー美術館    *ベリールはBelle ile 美しい島  
上段右)モネ「雨のべリール」 ブリヂストン美術館
御馴染みの右の絵も、オルセーの嵐の絵と並べて見ると繋がりが感じられ、
波の荒々しさがいっそう引き立つ。

ドビュッシーの交響詩「海」を思い浮かべてほしい、ということだったのだろうか。
今、「海」を聴きながら、これを書いているが、第一楽章は「夜明けから昼まで海」
なので、穏やかで、この絵のイメージではない。第二楽章「波の戯れ」は、長調と
短調が混在し、管と弦楽器が揺れる波を表現。時に荒々しいが、はじける波の
水しぶきを感じる。ハープの音が優しくリズムをとる。北斎の神奈川沖の海(下段右)
の情景にぴったり。
ドビュッシーは、日本の美術品に大いなる関心を持ち、日本の絵を扱う画商
ジークフリード・ピングと交流があったので、実際に北斎の絵を見て、インスピレーション
を得たらしい。(下段中央)はドビュッシー自作の「波」の楽譜で、「LA MER」と書いてある。
ドビュッシーは絵を描くのも好きだった。

DebussyPanf1.jpg

●展覧会の最初の部屋は、ドビュッシー紹介で、上の肖像画と「ピアノを弾く
ドビュッシーとエルネスト・ショーソン」、エドモン・クロスの「黄金の島」。

Debussy2.jpg

 色が変わっていく波を辿りながら見ていくと、遠くの島々が見えてくる。
「アラベスク」の曲が波を表しているように、聞こえる。

●2番目の部屋≪選ばれし乙女≫の時代
ドビュッシー初期の代表作、歌曲「選ばれし乙女」は、画家であり詩人でもあった
ロセッティの同題の詩にインスピレーションを得たそうだ。
ドビュッシーは、ナビ派の画家たち、中でもドニと親しかったので、「選ばれし
乙女たち」の楽譜の表紙は、ドニが描いている。私がオルセーで見たバーン・
ジョーンズの「王女サプラ」
も展示され、これも参考にしたのだろうな、とわかる。

ドニの「ミューズたち」、「緑の木々」もオルセーから来ていた。

●3番目の部屋 美術愛好家との交流、ルロール、ショーソン
ルロールは、画家だがお金持ちで、ドビュッシーや画家たちの援助者だった。
チラシの絵、ルノアール「ピアノに向かうイヴォンヌとクリスティーヌ・ルロール」は、
ルロールの娘たち。壁にかかっている絵は、ドガの「踊り子」なので、ルロールが
ドガの絵を持っていたとわかる。
ドニ「イヴォンヌ・ルロールの3つの肖像」は、ドニ特有の浮世離れした細長く美しい人。
遠くには踊っている人たちも見え、楽園を象徴するような青系の大きな絵。
ルノアールの「ピアノの、、」と同じ1897年のイヴォンヌだが、画家が違うと随分
違って見える。

DebussyDonisLerole.jpg

ドガの「ルロールと2人の娘」もあったし、別の人が描いたイヴォンヌの肖像画もあった。
きっとイヴォンヌはミューズ的な美しさだったのだろう。

●4番目の部屋 アールヌーヴォーとジャポニズム
ドビュッシーはその時代の流行だったジャポニズムやアール・ヌーヴォーに強い
関心があった。ドビュッシーが北斎の「波」の版画にヒントを得てスケッチをした
「波」の楽譜は、この部屋にあった。

ドビュッシーが自分の娘のために作った曲「子供の領分」の楽譜表紙も彼の自作。
かわいいでしょ。
DebussyChidrensCorner.jpg

ジャポニズムということで、ガレの花瓶、ジャン・カリエスの花瓶、アレクサンドル
・シャルパンティエの銅製の小品「歌」など、工芸品も展示されていた。
カミーユ・クローデルの彫刻「ワルツ」は、師ロダン譲りの力強い下半分に対し、
もろさを感じる女性的な上半分。カミーユの生涯を描いた映画を思い出すと、
切ない。この作品は、ドビュッシーが手元に置いていたそうだ。

●≪牧神の午後≫、≪ペレアスとメリザンド≫≪聖セバスチャンの殉教≫
これらの舞台に関する舞台装飾、衣装の下絵や写真などの資料が展示されていた。

●インスピレーションを得た自然風景
オルセーでも目立つ位置にあるマネの「浜辺にて」、ホーマーの「夏の夜」、
セリュジエの「タリスマン(護符)」、カリエールの「クリュシー広場」、ジョルジュ・ラコンブ
の仏教的な感じがする「紫色の波」、ベルナールの「イポールの断崖」、エドモン・クロス
の「髪」、これらは好きな絵で、甘美なドビュッシーの小品「夢」が聞こえる。

オルセーからの作品+ブリヂストン所蔵品なので、作品数が多く見応えがあった。



 その数日後、友達2人がドビュッシー生誕150年記念のコンサートをした。
ドビュッシー作品中心。2台のグランドピアノでの小組曲は素晴らしかった。
「放蕩息子」からの「リアのアリア」も初めて聞く作品だったが、22歳らしい
若さあふれる作品で、ドラマティックな展開の歌だった。

2ninConcert.jpg 2ninConcert4.jpg

 コンサート終演後は、同じ会場で、ワインとケータリングの料理を頼んで、
ビュッフェパーティをした。
私たち主催者側にも楽しいコンサートだったので、次はどんな企画で、いつ?
と、考え始めている。
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コメント 14

coco030705

こんばんは。
Taekoさんがいらしたときは、音楽がなかったんですね。私が行ったときは
音楽が各展示室に流れていたので、幸運だったかもですね。
印象派はどれもこれも好きです。この展覧会はドニの作品が多かったので、
きっとTaekoさんは楽しまれたに違いないと思いました。
ミュージアムショップで笑えたのが、ドビッシーの顔のイラスト入りのバッグや
色々なものが販売されていたことです。イラストのドビッシーはなんだか
かわいい感じでした。(^^)

by coco030705 (2012-10-01 00:51) 

nyonyo

こんにちは。私はまったく曲をしらなかったのでオーディオを借りましたが、フロアにもちょっとだけBGMながれていたかも(8月)。オルセーでみていらっしゃったんですね!!。2台のグランドピアノかあ~コンサートすてきだったでしょうね。
by nyonyo (2012-10-01 06:09) 

バニラ

ドビュッシーづいた数日だったのですね。 すてきです。  以前ロスコ展を観に行った時だったかと思いますが、音声ガイドにその作品ごとに合わせた音楽が入っていて、とてもよかったことを思い出しました。 この展覧会こそそうなっていたらいいのにね♪
by バニラ (2012-10-01 21:34) 

ぶんじん

Walkman持参で観に行くのが正解でしょうか?!メロディーが聞こえてくる(気がする)絵画、楽しそうですね。
by ぶんじん (2012-10-01 21:37) 

匁

夢の世界です。
目、耳、そして食 五感+で楽しむ会ですか?!。
コンサートを企画運営されたんですね。
素晴らしいです。
by (2012-10-02 07:53) 

Inatimy

私としては、ドビュッシーには点描画のイメージ。
昔に見た『海』の曲のレコードのジャケットが、スーラの『グランキャンのオック岬』だったから。
クロスの『黄金の島』もいいですよね~。
『イヴォンヌ・ルロールの3つの肖像』は2010年にオルセー美術館が入手した絵で、
観たいと思いつつ、まだ観てないんです・・・。 
by Inatimy (2012-10-03 05:44) 

hatsu

娘さんにつくった曲の楽譜表紙、可愛いですね。
思わず、にんまりしちゃいました。
ドビュッシーの曲ってどんなだろう? とyoutubeで探したら、
聴いたことのある曲が多くて、嬉しくなりました^^
音楽と美術を楽しむ、素敵ですね。
by hatsu (2012-10-04 11:24) 

moz

フランスでは、ドビッシーの音楽も流していたようですね。
テーマがこれですから、ブリヂストンでも同じように流しても良かったではと思います。数は多いし、クラシック音楽が好きなものとしては作曲家と美術と言うテーマなので、見甲斐がとてもありました。
ただ、それ抜きでも、良い絵がたくさん来ていましたよね。
イヴォンヌ・ルロールに注目しても面白いし、ほんと、年齢的なこともあるのでしょうが、同じ人物とは思えない多様さだと思いました。そして、やはり、ドニのミューズたちがとても良かったです。
150周年のコンサートもとても楽しそう。 コンサートの後のワインは格別でしょうね。^^
by moz (2012-10-09 16:30) 

baby_pink

日中の爽やかな日差しが心地いいこの季節。
絵画を音楽とともに堪能する時間、とても素敵ですね^^
Taekoさんのお話を聞きながら色々な曲を頭に浮かべながら
優しく穏やかなひと時をすごさせていただきました。
あ。ワイン用意すればよかったわ^^*
by baby_pink (2012-10-10 16:14) 

りゅう

あぁドビュッシー・・・
ドビュッシーといえば、
Taekoさんが泣いて喜ぶニジンスキーの牧神ですよね♪ (*/∇\*) キャ
8日(月)に観に行く予定でしたが、急用のため行けなくなりました、
この展覧会も逃すことになりそうです。。。
ルノワールのピアノの少女、観たかったなぁ。
手元にあるチラシを眺めて我慢します。 (>_<)イタタタタ・・・・
by りゅう (2012-10-10 22:56) 

TaekoLovesParis

お返事が遅くなりすみません。
▲cocoさん、夏の東京旅行で、ご覧になったんですよね。注目の展覧会が
全部、関西に巡回するわけではないから、見れてよかったですね。そう、
ドニがたくさんあって、特に、初めて見た「イヴォンヌ・ルロールの3つの肖像」
がすてきでした。
イラストのドビュッシー、ハンサムが売りなのに、かわいくされちゃったのね。
コミックの国、日本だから、ドビュッシーも苦笑しながら許してくれるかしら。

▲nyonyoさん、展覧会を音楽と共に観れてよかったですね。オーディオは
こういうときには、役に立ちますね。
グランドピアノ2台のコンサートは、迫力があって、印象に残ります。

続きは、夜に。。
by TaekoLovesParis (2012-10-11 08:09) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます
▲バニラさん、ロスコ展、川村美術館で開催されましたね。ロスコこそ音楽が
必要ですね!ロスコ部屋に行ったとき何も音がなかった私は、瞑想の世界でした。その時は、ロスコの良さがわからなかったけど、バニラさんがお好きなんだから、何か良さがあるはず、っていくつか見ているうちに、だんだん好きになってきました。

▲ぶんじんさん、はい、そのとおり、大正解だと思います!

▲匁さん、コンサートはお客様がはいってくれないと、赤字になってしまうので、
チケットを売るのが大変です。でも、いらした皆様が喜んでお帰りになると、
とてもうれしいです。国立新美術館で匁さんの絵を見た帰りも私は、満足感の
ある楽しい気分で帰りましたよ。

▲Inatimyさん、「グランキャンのオック岬」は知らない絵だったので、検索して
見ました。これなら、波が岩に弾けて砕ける感じの「海」の曲にぴったりですね。
「イヴォンヌ・ルロールの3つの肖像」は、買ったばかりの作品なんですか。
見れてよかったです。(いつもいろいろ教えてくださってありがとう。)

▲hatsuさん、ドビュッシーは絵も上手と評判だったんですって。そうですよね、象さん、上手ですものね。お父さんが、自分のために、絵を描いて、曲を作ってくれて、子供にとっては最高の贈り物ですね。
ドビュッシーの曲って、短いものが多いし、BGMで流れていることが多いから、
どこかで何気なく聞いてるんですよね。
by TaekoLovesParis (2012-10-11 21:57) 

noriko

「子供の領分」や「アラベスク」はピアノで習ったけれど、中学生当時の私は良さがわかるには子どもすぎたようでした。
今ならば素敵な音楽だってわかるんですけど。
by noriko (2012-10-11 22:23) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます
▲mozさん、オルセーでは音楽つきだったんですか。音楽と美術って、コラボ
のようなタイトルなんですものね。<それ抜きでも、良い絵がたくさん来ていましたよね。> → その通りですよね!ドニの「ミューズたち」、私がオルセーで買ったポケット版の「Maurice Denis」という本の表紙が、「ミューズたち」で、最初の絵が「イヴォンヌ・ルロールの3つの肖像」なんですよ。Inatimyさんがコメントで、最近オルセーに入ったと書いてくださってるように、私の本では、まだ個人蔵になっていました。
コンサート後、前回はビールだったんですが、ワインの方がおしゃれでgoodでした。

▲pinkさん、pinkさんなら、曲の引き出しがたくさんあるから、いろいろな曲が
浮かんでらしたことでしょう。ワイン、そりゃ、あったほうがいいですよ~(笑)

▲りゅうさん、私が泣いて喜ぶ牧神って、もしや、セザンヌの水浴の男たち?
そのバージョンより、ヌレエフのヒョウ柄衣装がオススメ(笑)。
りゅうさん、最近、更新してないし、美術館も行ってないみたいだから、きっとお忙しいのね、と思ってたけど、イタタタ状態なんですね。からだに気をつけてくださいね。

▲norikoさん、ピアノで弾いたんですね。ドビュッシーの曲が街を歩いていて聞こえてくると、懐かしさがいっぱいでしょう。いい思い出ですね。
by TaekoLovesParis (2012-10-11 23:21) 

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