ZESHIN 柴田是真の漆工・漆絵・絵画 [展覧会(絵以外)]
柴田是真という名前をご存じですか?
私は2年前に、日本橋の三井記念美術館で「柴田是真の漆×絵展」*を見て以来、
そのすばらしさに魅了されています。
*yk2さんの記事です
その是真展が表参道の根津美術館で、16日(日)まで開催中。
私が行った日は、ちょうど、NHKの「日曜美術館」で紹介された日だったので、
午後の遅い時間でもかなりにぎわっていた。
是真は幕末から明治時代に活躍した蒔絵師だが、和紙に漆で絵を描く「漆絵」を
発明した。漆は重みがあるため上から下への直線は引けるが横には引けないので、
紙を動かして描く。しかし、実際の作品を見ると、漆で描いているとは思えないほどの
達者な筆運びだ。絵の具と違い厚みがあるので立体感が出て、動物描写は、
活き活きとしたものになる。このクマは実に愛らしかった。
是真の作品は、卓越した技術と現代にも通じるデザインゆえ海外で人気が高く、
「ZESHIN」でとおっている。2年前の三井記念美術館の展覧会はアメリカ人
エドソン氏のコレクション展だったが、今回は全部国内の作品である。
是真は84歳まで生き、仕事に励んだので作品が多い。
是真の作品は、細部にも凝っている。
上の写真(右)の蒔絵の菓子器は、はめ込まれた螺鈿がキラキラ美しいだけでなく、
青銅のような風合いに見せる「青銅塗り」という是真考案の技法が使われている。
面白いのは、「漆絵花瓶梅図」。紫檀の上に描いた板絵のように見えるが、和紙の
上に漆で紫檀そっくりの塗りをして、その上に漆で花瓶や梅を描いたもの。
額に見える部分も漆絵。驚くだけでなく、モダンな構図は見ていて飽きない。
そっくりで、ヒネリがあり面白いもの、もう一点。
伝光琳の「業平蒔絵硯箱」をまねた是真の作品が並べて展示されていた。
光琳が錫の板を貼って表現した衣装の銀色の部分を是真は錫の粉を用いた
漆絵にし、年月を経て錆びた部分まで、丁寧に漆絵で表現していた。
そういう部分を発見すると、うれしくなる。
栗や柿など秋の果物の漆絵は、背景が青銅塗りなので、西洋の静物画の
雰囲気を出していた。
「青海波塗柳流水蒔絵重箱」は五段重ね。中央に柳、青海波塗りで流水が上
から下へ続く、その豪華さと言ったら、、ため息もの。
是真は、京都の四条派に学び、絵師としても活躍したので、屏風絵や掛け軸も
展示されていた。
おすすめの展覧会です。根津美術館の庭の紅葉が素晴らしかったけれど、
今はイチョウが散っている頃でしょうか。大きな木に囲まれ起伏にとんだ庭の散策は、
静かな休日を過ごすのにぴったりだと思います。
今回の展覧会の作品ではないけれど、私が愛用している是真絵のファイル。
(芸大美術館所蔵・「吾木香・桔梗」)
こんばんは。
なんと美しい漆工芸でしょう。それにTaekoさんの解説を読んでいますと、
そのおもしろさ、すばらしさにびっくりします。
この熊、ほんとうにかわいいですね。日本画の熊はちょっといかついものが
多いと思うんですが、とってもいい絵ですね。
「漆絵花瓶梅図」もどう見ても板絵にしか見えませんし、額も漆絵とは本当に
びっくりです!驚きがあり、しかもセンスのいい美術品すばらしいの一言です。
来年も東京へ行って、美術館巡りをしたいものです。
by coco030705 (2012-12-13 17:54)
cocoさん、こんばんは。
さっそくコメントありがとうございます。漆工芸の蒔絵の作品は、見入ってしまう静かな美しさがありました。是真の作品は軽妙洒脱、軽くて粋で面白いのです。
鉛の風合いだけど実は漆器、持ち上げた途端、その軽さに驚きますよね。そういう
ふうに騙されてしまうのが楽しいんです。
金閣寺所蔵の扇の絵が描かれた蒔絵の書棚も豪華でした。
前にも書いたけど、私も来年は大阪で、cocoさんもいいとおっしゃってくださった大山崎山荘美術館と藤田美術館を見る予定。しばらく関西に行ってないので行きたいです。
by TaekoLovesParis (2012-12-13 21:47)
和紙に漆で描く画法自体を初めて知りました。
しかし、色合いがどっしりと落ち着いていて何とも言えない雰囲気です。
どのモチーフも素敵で、和の粋を感じさせますね~
by nicolas (2012-12-14 17:29)
柴田是真、知ってます♪ 私も2年ほど前に京都での展覧会を見ました。
滝の流れに映った鷹や軽そうに見える茶筒、蝙蝠の盆・・・ととっても楽しんだのを覚えてます。
趣向を凝らした作品から、作者自身も愛嬌のある人だったのかなぁ・・・なんて思ったり。
私も是真の描いた植物が気に入って、その時に絵ハガキを買いました。
このファイルも素敵ですね~。
by Inatimy (2012-12-16 20:06)
天才としか表現の仕様がないですね。
これだけ多種の作品が、どれもこれも写真を見ただけでも生き生きとしていて素晴らしいです。
「吾木香・桔梗」の和を色彩を、洋のデザインで表現した作品にははっとさせられました。
JAPAN=漆の面目躍如ですね。
近年、こういった日本古来の技術を持った方たちがいなくなり、危機感を覚える今日この頃です。
by kazu-m (2012-12-18 20:50)
ブログのおかげで覚えた名前です。
美しいですね。
先日、表参道のイルミネーションと食事だけで
帰ってきてしまいました。
残念。
by pistacci (2012-12-18 22:47)
根津の是真展、日曜美術館で取り上げられたせい(?)で、かなり混んでましたね。
前回の三井での展覧会では、作品に添えられている解説文が「だまし漆器、漆絵」と是真のユーモアについて、とても愉快に書かれていて(美術館の解説文にだまされたのは後にも先にもあの時だけです・・・笑)印象深かったせいでしょうか、今回はなんだかサラッとしてたなぁ~って印象です。例えば、単に砂張塗り盆がそこに1枚飾ってあっても、是真の創作精神や彼のユーモアを理解するのは難しいですよね。観る僕等は、そのお盆の重さ軽さを手に取って体感出来ないんだもの。もう少し、見せ方、伝え方に気を配って欲しかったかなぁ~、是真ファン(笑)としましては。
by yk2 (2012-12-19 02:29)
業平蒔絵硯箱・・・、発見されたんですね。
展覧会に行ってじぶんで面白いもの見つけると、とても嬉しくなりますよね。
是真さん、知りませんでした。でも、見せていただいて興味津々。
でも、16日までだったんですね・・・、もっと早くうかがえばよかったです。^^;
今年は、バタバタしていたけれど、来年はちゃんと展覧会、見逃さずに行きたいと思います。
by moz (2012-12-19 05:26)
nice&コメントありがとうございます。
▲にこちゃん、漆を初めて発見した人はすごい、ですよね。漆器だけで終わらず、
金を撒いて蒔絵にしたり、貝をはめ込んで象嵌にしたり、日本の工芸品は素晴らしいと思います。そして工芸職人を「帝室技芸員」に任命して地位を高めたのも
良いことだったと、展覧会を見終わってしみじみ思いました。
▲Inatimyさん、京都での展覧会をご覧になったのですね!
だまし絵的な面白さは粋ですよね~。蝙蝠が可愛かったでしょ。
滝の絵や鳥の絵の掛け軸の豪放さに比べると、植物系は地味だけど、
品があっていいですよね。Inatimyさんも絵葉書をお買いあげ、、、
やっぱりいいなとお思いになったのね。
by TaekoLovesParis (2012-12-20 01:23)
nice&コメントありがとうございます。
▲kazu-mさん、日本の伝統工芸にはいいものがたくさんありますね。
景気の良い時代は民間まかせで何とかなっても、景気が悪い時は、
国が援助・応援しないと、後世にきちんと伝わっていかなくなって
しまいますね。
「吾木香と桔梗」、120年以上たっても色あせない魅力、素晴らしい感性ですね。
▲pistaさん、是真の名前は、ブログで覚えたんですか。私もブログで得た知識、
たくさんあります。楽しく学ぶという感じですね。
イルミネーションが綺麗な季節ですね。表参道のが日本初かしら?今はいろいろな場所でイルミが楽しめますね。ブルーのは特にきれいだなって思います。
by TaekoLovesParis (2012-12-21 00:59)
nice&コメントありがとうございます。
▲yk2さん、yk2さんの「三井記念美術館での是真展」記事が充実していたので、リンクをさせていただきました。確かにあちらの展覧会のほうが、作品説明が丁寧でしたね。砂張塗り盆は、漆を重ね塗りして金属の風合いを出しているから、元が
紙とは思えない。客人が手に取って、その軽さに「あれっ?」と驚く面白さ。説明がないとわからないですよね。茶入れもそうですね。釉薬の風合いがみごとに表現
されているから騙されますよね。技術勝負のこういうユーモアは是真の才気と茶目っ気が感じられ、楽しいです。
是真の構図の上手さ、デザイン性は今見ても斬新ですね。栗や柿など秋の果物の漆絵の背景の青銅塗りでは、シャルダンの静物画を思い出しました。
▲mozさん、今回は「発見」するものが多くて、わくわくしました。
是真の名前を覚えておいてくだされば、長生きしたので作品がたくさんありますから、この後、出会う機会は多いと思います。絵の具でなく、漆で描いてます、騙されないでくださいね(笑)
by TaekoLovesParis (2012-12-24 10:58)
これ、行きたかったんです。 すばらしい作品ですよね。 実際に目にしたかったなぁ。
by バニラ (2012-12-24 11:39)
バニラさん、場所もお好きな根津だったし、でしょ。
是真の作品は見る機会が多いと思います。私が初めて気づいたのは、
上野のトーハクでした。
by TaekoLovesParis (2012-12-28 12:13)