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エリック・サティとその時代展 [展覧会(西洋画)]

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渋谷の東急Bunkmauraミユージアムに「エリック・サティとその時代展」を見に行った。
チラシ↑ は、サティの「Le Carnval」の楽譜の上に、ピカビアの「本日休演」の絵をのせている。
風刺のきいた絵が得意なピカビアを好きなので、「おー!」と思った。
コンピュータが発達した現代だから、こういう2枚の絵の合成が出来る。
以前にもらったチラシは、マン・レイの「エリック・サティの眼」が使われていた。
マッチ箱にサティの眼の写真を貼りつけ、作品にし、「眼を持った唯一の音楽家」と
讃えたのである。

picabia.jpg ManRay.jpg

エリック・サティ(1866~1925)は、ベルエポックの時代の作曲家。
「ジム・ノペティ」という曲は、CMに使われたりしたので、聞けば、「知ってる!」と
いう人も多いかと思う。「ジュ・トゥ・ヴー」は、親友歌姫の持ち歌なので、私は
とても馴染みがある。
サティは音楽家ながら、画家との交流が多かったので、当時のパリのアートシーン
をサティを軸にして再現しようという展覧会。

当時のパリは、キャバレー「ムーラン・ルージュ」全盛の時代。
最初の展示屋に入ると、眼にはいるのは、有名なロートレックのポスター2枚。
「ムーランルージュのラグリュの公演ポスター」と「ディヴァン・ジャポネ」
ロートレックの先輩で、当時のパリのポスター界の花形だったジュール・シェレの
明るく楽しいポスターも3枚あった。
スタンランの「シャノワール」の公演ポスターもあった。

聞こえてくる音楽は、「ジム・ノペティ」、サティが中心なのでBGMつきの展覧会。
サティ直筆の「ジム・ノペティ」の楽譜とドビュッシーがオーケストラ用に編曲した
「ジム・ノペティ」の楽譜が展示されていた。

moulin_rouge_l.jpg chatnoir.jpg

展示は時代順になっていた。
次の部屋は壁紙が、水色。
第一次世界大戦に従軍したものの、病で戻ってきたサティは、精神的に落ち込んでいたことも
あり、「薔薇十字会」という宗教団体に入る。
幻想的な作品が多いシュヴァーベの「薔薇十字展」のポスターもあった。
この部屋でのBGMは、聞いたことがない曲と思ったら、「薔薇十字会」のために作った曲
だった。

サティは、画家シュザンヌ・ヴァラドン(ユトリロの母)と出会い、わずか半年であったが、
熱烈な恋愛をする。サティが五線譜にインクで描いた「ヴァラドン」の絵は、特徴をつかんで、
さくっと描けていた。

サティがどういう人だったのかは、この展覧会では語られていない。
でも、それを知って、展覧会を見たら、2倍、3倍、楽しめると思う。
私は、yk2さんが、記事で書いてらした NHKBS放映の「サティのうた」を見て、
とてもサティが身近になった。
サティが亡くなった後、部屋から、ヴァラドンに宛てた手紙が100通ほど出て来たそうだ。
それほど、ヴァラドンが好きだった、という話は、「サティのうた」で仕入れた話。

サティは、オンフルールで海運業を営む裕福な家に生まれた。6歳の時、母が亡くなり、
祖母に育てられ、教会でオルガンを弾いたりしていた。12才で祖母が亡くなったため、
パリに住む父のもとに移った。父はピアノ教師と再婚していたので、新しい母のすすめで、
コンセルバトワールに入学した。保守的音楽教育の学校はサティに合わなかったが、
20歳まで在学、第一次世界大戦の兵役についた。復員後、学校に戻らなかった。


次の部屋は、グリーン系のブルー。
学校に戻らなかったサティは、家賃の安いパリ郊外アルクイユのアパートに住み、
モンパルナスのキャバレーでピアノを弾く生活を始めた。音楽家としての誇りから
山高帽をかぶり、ステッキを持つという出で立ちだった。

「ジュ・トゥ・ヴー」で少し知名度も出たサティに高級モード誌から依頼が来た。
「スポーツと気晴らし」という楽譜集の仕事。シャルル・マルタン挿絵、短い詩があり、
それに曲をつけること。
チラシに使われているのが、その中のひとつ「カーニヴァル」の楽譜。楽譜全体がシンプル
だが、洗練されている。さらに、タイポグラフィーがしゃれている。一番下にあるサティの
Erik Satieというサインもおしゃれ。

マルタンの絵 ↓ ロシア構成主義とキュビズムの融合と言われてるけど、今、見てもファッショナブル

sportetdiversement.jpg


ここからは華やかなキャリアの時代。
キャバレーでピアノ弾きのサティは、画家たちと知り合う機会が多かった。
コクトーが台本を書き、ピカソが舞台装飾と衣装を手がけたバレエ「パラード」の
音楽をサティが担当した。当時、賛否両論で話題になった「パラード」parade1917年
yotubeで見れる。馬の動きも面白いので注目。
https://www.youtube.com/watch?v=tDm_SoEHLWY

会場では、2007年に再演された「パラード」の終幕3分間を映像で見せてくれていた。
衣装がキュビズムそのものだったり、ピカソらしい大胆なホルスタイン模様だったり
で滑稽。さらに、バレエの動きも面白く、2回、見るほどだった。

ピカソ作の「エリック・サティ音楽祭」のポスター、プログラムがあり、コクトー挿絵の
コンサートプログラムもあった。まさにコラボ。
ブラックの「ギターとグラス」もポンピドーから来ていて、この絵の中にサティの楽譜
ソクラテスが描かれているとのことだが、白い紙にSokratと書いてあるだけだった。

サティはピカビアとスウェーデン・バレエの公演『本日休演』を手がけた。
サティはダダイズムの若い芸術家たちから尊敬されるようになっていた。
マンレイもその一人である。
ブランクーシ、コクトーによるサティの肖像画もあり、交流の深さがわかる。

サティの没後に発見されたマリオネット用のオペラの衣装のデザイン画。
アンドレ・ドランが描いたものが数枚あった。
展覧会をとおしてサティの肖像画は10枚以上あったのでは?巧妙なパッチワークの
肖像画が最後にあった。

サティを知らなくても、音楽や絵に興味のあるかたなら、楽しめる展覧会だと思います。
30日(日)まで。


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コメント 13

nicolas

モンマルトルやモンパルナスが活気のあった時代ですねー。
頭の中、ジムノペティが流れ出しちゃいました。(笑)
ロートレックは関係遠かったんですか?
ちょっとオモシロそうな内容ですねー
by nicolas (2015-08-22 18:10) 

TaekoLovesParis

にこちゃん、そう!ムーランルージュのモンマルトルとモンパルナスが舞台です。
サティが画家たちとコラボを始めたのは、40才過ぎで、ロートレックが亡くなった後だから、ご縁がなかったみたい。
にこちゃんに読んでいただいた時、書きかけで、まちがってアップしちゃったぶんだったの。続きがあったので完成させました。にこちゃんには楽しめる内容だと思うけど、交通費使って、これ一つのためには、ちょっと。。

by TaekoLovesParis (2015-08-22 23:42) 

よしあき・ギャラリー

興味深いです。
ありがとうございました。
by よしあき・ギャラリー (2015-08-23 06:02) 

yk2

パラードの動画、もっと長く観たいですね~。面白い!。でも、100年前でこの演出はどうしたってシュール過ぎたんでしょうねぇ。(笑)。

ブリヂストン美術館でのドビュッシー展の時も思ったのですが、音楽家をメインにして、それに関連する同時代の芸術を集めて・・・って趣旨の展覧会は、観る側にとって受け取り方が難しいですねぇ。今回もサティとの関わりが今ひとつ希薄なロートレックが序盤の主役級みたいな扱いで、僕はここにポスターの展覧会を見に来たんだっけ???・・・みたいな気分になっちゃいました(^^;。まぁ、ロートレックはサティを知ってたのかはよく分からないけど、サティの方はシュザンヌの元彼である”有名人”のロートレックを意識しないわけにはいかなかったでしょうから、それはそれでいいのかな(^^;。

でも、taekoさんも『サティのうた』のおかげで、これまでとは違うサティ像が見えたでしょ?。ちょっとでも人間サティを知っていると、この展覧会はより興味深く鑑賞することが出来ると思うのです。
by yk2 (2015-08-23 10:41) 

U3

 パリはもう30年近く行っていない街です。

 予定よりも少し早いのですが本日より恋愛小説の連載を開始致しました。よろしければご覧になって下さい。更によろしければコメントも頂ければと(笑)
by U3 (2015-08-23 17:20) 

匁

マルタンの絵
ロシア構成主義とキュビズムの融合
面白いですね。
そう感じると言うことは、匁の絵はこの辺りを模索中?なのか?
風景の実際をそのまま描くのはちょっと筆がひっこみ、
ついつい欲張って再構成してしまいます。


by (2015-08-24 08:29) 

coco030705

こんばんは。
エリック・サティの展覧会面白そうですね。
「シャルル・マルタン挿絵」は本当にモダンですね。きれいです。

「コクトーが台本を書き、ピカソが舞台装飾と衣装を手がけたバレエ「パラード」の
音楽をサティが担当した」のを見せていただきました。すごい豪華なメンバーの創ったバレエ、素敵で楽しいですね。これが100年前に創られたものとは想像もできないくらいモダンで新しいですね。いいものを見せていただいて楽しかったです。有難うございました。
by coco030705 (2015-08-24 23:39) 

Inatimy

私も展覧会同様、曲を聴きながらTaekoさんの記事を堪能^^。
<ドビュッシーがオーケストラ用に編曲した「ジム・ノペティ」>が
どんなのか気になったのでyoutubeで探して聴いてみました。 
柔らかなムードで凄くいい感じ♪
マルタンの絵も、今でも十分なオシャレさ。 お菓子の包装紙になりそう。
で、絶対に捨てられずに残してしまうだろうな^^;。
バレエ「バラード」のyoutube映像も面白いですね〜。 女の子、可愛い♪
by Inatimy (2015-08-26 00:32) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます。
▲よしあきさん、お礼、おっしゃっていただいて、うれしいです。

▲yk2さん、<100年前でこの演出>→ 演出だけでなく、衣装もシュール、奇抜。観客は度胆をぬかれたことでしょう。舞台の見世物小屋の天井の梁には、ピカソのギター、壁に絵、床に彫刻と、ピカソワールドで、これも驚きだったことでしょう。今、見ると、ピカソワールドって思うだけですが。

私も音楽家を主人公にした展覧会ということで、ブリヂストンでのドビュッシー展と比較して考えてました。ともに同時代の絵画の展示によって、絵と音楽のコラボを試みた展覧会。ドビュッシーの交響詩「波」は北斎の「波」の絵を見て、歌曲「選ばれし乙女」はロセッティの絵と、インスパイヤー元がわかりやすかったけれど、サティは? 「ジムノペティ」は、古代ギリシアの祭典にインスパイアされたと聞いてるので、同時代の芸術じゃないですね。「ジムノペティ」が聞こえる部屋がロートレックのポスターだったから、ロートレックの影響を受けた?って、疑問を持ったyk2さん、鋭いですね。私は展覧会場では気づかなかったです。<サティの方はシュザンヌの元彼である”有名人”のロートレックを意識しないわけにはいかなかったでしょうから、>→ そうですね!ロートレックにライバル心燃やしてたかも(笑)

記事でご紹介いただいた「サティのうた」、とっても役にたちました。2時間番組だから、じっくりと、エピソードも紹介してくれて楽しかったし、サティの人となり、時代が変わっていくのもわかりますね。40過ぎて入学した音楽学校では、ルーセルが師なのですね。いろいろ労せずして学べてよかったです。この「サティのうた」にロートレック、出て来ましたっけ?でてこなかったですよね。

▲U3さん、パリは何年たっても魅力的な街って、私は思います。
新しい書き下ろしですか。読みに行きますが、最近、パソコンの調子が悪いので、自分のところ以外でのコメントは、書きにくいので、期待しないでくださいね。

▲匁さん、マルタンの絵には、風景も少しだけど、描きこまれていますね。記事が匁さんの絵の制作に役立つのは、うれしいです。ぎっしりと人がいる「マラソンランナー」も風景との再構成に時間をお使いになったのでしょうね。

▲cocoさん、こんばんは。
シャルル・マルタンの挿絵、おしゃれでしょう。こういう絵が15枚くらい、「ブランコ」、「釣り」、「海水浴」、「ヨットでの航海」というように、夫々にタイトルがついた、ブルジョワを意識したお洒落な絵。絵の下にほぼ同じ大きさのサティの楽譜。同じ大きさなので、とっても短い曲です。楽譜を見て、音が想像できたらいいんだけど。。
「パラード」、つまり英語のパレードだから、いろんなものが出てくるんですよね。ダンスの動きも、モダンバレエみたいで面白いですよね。ピカソの大道具も、まさにピカソ作品というものばかりだったでしょ。楽しく見ていただけて、よかったです。

▲Inatimyさん、曲を聞きながら、それが最高よ。
私もドビュッシー編曲のを聞いてみました。サティのより、ゆったりしてますよね。そう、Inatimyさんがおっしゃるように柔らかいわね。同じ曲の別作曲家バージョンって、個性が見えて楽しいですね。
サティは、「同じモチーフを繰り返し過ぎる」って、2番目の学校でルーセルに言われたそう。実際、サティの曲はモチーフがひと手間かけず単純に繰り返されるから、メロディを口ずさめる。このシンプルさが魅力かも。

マルタンの絵、都会的な感じがしますね。好きです。包装紙になっていたら、ブックカバーにします。
バレエの動画、面白いでしょ。楽しんでいただけて嬉しいです。中国人の女の子とヨーロッパの女の子っていう設定かしら?衣装も特長、だしてますよね。

by TaekoLovesParis (2015-08-27 00:17) 

moz

この展覧会は興味がありました。行けなくて残念でしたが、やはり良い展覧会だったみたいですね。音楽と絵画ってやはり関連があると思うので、もっと取り上げられても良いのかなと?
以前ブリヂストン美術館でやっていたドビッシーの展覧会も面白かった記憶があります。あの時は音楽はかかっていなかったけれど(フランスでは音楽ありだったようですね)、音楽をかけて絵画を鑑賞できてって良いと思います。
サティはあまり聞かないけれど、アンニュイで良い感じですね。 ^^
by moz (2015-08-31 06:44) 

TaekoLovesParis

mozさん、ブリヂストンのドビュッシー展、音楽がなくて寂しいと思いましたが、フランスでは音楽があったんですか。サティ展、最初の部屋のBGMがよく知られてる「ジムノペッティ」だったので、良かったです。この展覧会は、音楽よりも、サティの生きていた時代の再現で、絵もありましたが、ドビュッシー展のほうが絵の数が多く興味あるものが多かったです。サティの曲はクラシックでも現代っぽい要素があって聞きやすいですね。アンニュイ、そうです!
by TaekoLovesParis (2015-08-31 23:59) 

カエル

今曲を聴いております。
こんな晴れた日に聞けてなんだか幸せな気分になってます。
あ~パリ行きたい。
by カエル (2015-09-23 12:28) 

TaekoLovesParis

曲、聴いてくださって、ありがとう。
Paris,Paris,Paris,私も行きたいです!
クリスマスに行けるといいな。

by TaekoLovesParis (2015-09-23 14:05) 

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