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最後の印象派1900~20’s Paris [展覧会(西洋画)]

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このポスターを見た時、「どこかで見たけど、、誰の絵だったっけ?」
エミール・クラウスの「リス川の夕陽」と書いてあった。
「あ、クラウス」と、2013年に見た「エミール・クラウス展」を思い出す。

カリエール、アマン=ジャン、ル・シダネル…
一応、名前と絵が浮かぶ。カリエールは茶褐色の朦朧とした画風の絵。
ル・シダネルは落ち着いた色合いの点描で、静かな街角や室内を描き、いつも花が
アクセントになっている。クラウス展にも、花と建物の絵があった。
アマン=ジャンは、大原美術館の絵の購入を任された児島虎次郎が最初に買った絵。

しかし、最後の印象派という説明がピンと来ない。
印象派のあとに、スーラ、セザンヌ、ゴッホ、ゴーギャンらのポスト印象派があって、
さらに、ドニのナビ派、ビュイヤールのアンティミスト派へと、一方では、フォーヴ、
キュビスム、表現主義などの前衛運動が起きていた19世紀末。
その時期にパリで、前衛ではなく、印象派の流れをひく光あふれる写実的な絵で
人気があった画家たちは、アマン=ジャン、ル・シダネル、クラウスらだった。
だから児島がそれらを購入したのである。

アマン=ジャン 「アンティミテ(日常の一場面)」
アマン=ジャンは女性を描いた絵が多い。大原美術館の「髪」も女性であるし、
「囚われの女」という絵もあった。

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ル・シダネル3枚。
「日曜日」1898年。ドニを思わせるような幻想的な作品。
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ル・シダネル 「コンコルド広場」1909年
雨にむせぶ夜のコンコルド広場、噴水にオベリスク、たくさんの街路灯。今も昔も変わらない。
街路灯に反射する光、雨のもやっとした雰囲気。情感漂う。

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ル・シダネル 「テーブル、白の調和」
実にすっきりと。シダネルの絵はいつも静かで、花がアクセント。

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シダネルに似た点描画だが、光あふれるのは、アンリ・マルタン
「野原を行く少女」。クラウスのような光と空気。少女の持つ花輪が美しい。

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面白いと思ったのは、ルネ=グザヴィエ・プリネ 「カブールの浜辺」
横長の画面。走る親子のクローズアップ。映画のワン・シーンのよう。
白い服の中で、少女の赤い服が人目をひく。
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アンリ・デュエム 「羊飼いと羊の帰還」
ドイツのフリードリッヒを思い出すような後ろ向きの羊飼い。
吸い込まれそうな夕陽。

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エルネスト・ローランは、西洋美術館の常設「テラスの二人の婦人」で、
名前を覚えていた。点描の画風だが、この「後ろ姿の裸婦」では、ロートレックの
「赤毛の女」を思い出し、「背中」では、ハンマース・ホイを思い浮かべた。

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シャルル・コッテ「星の夜」。暗い青の画面。帆船が海に浮かび、空には白い星がまたたく。
じっと見ていると、船の帆の白さと星の白さが呼応して美しい、同系色の美しさ。
大原美術館にあるコッテの「荒地の老馬」も暗い青の画面だったと思い出す。

親しみの持てる絵ばかり80点。気楽に見れます。「この人の絵、いいわね」という
画家が見つかるかもしれません。ひとり1点ではなく、2点以上の展示が多いので。
11月8日まで。


 

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カエル

「日曜日」にぐっときました。
何はなしてるんでしょう?
夕方の晩御飯だったりするのかな?
(違いますね、、笑)
by カエル (2015-10-26 12:41) 

コザック

こんばんは。
鑑賞されてこられましたか(^^)/
同じ展覧会の記事なのに、Taekoさんのレビューを読んでいると
まだ観たことのない素敵な展覧会なんではないかと勘違いしちゃいます。
やらかい印象の作品が多いせいか、
本当に自分の好きな作品・画家が見つかる気がする展覧会ですよね(^^)
私は「野原を行く少女」が好きです☆
by コザック (2015-10-26 21:56) 

Inatimy

この中で、いいなと思ったのが、アンリ・マルタンの「野原を行く少女」♪
手に持っている花、身にまとったような花からのなめらかなラインが美しく、
彼女の歩いた後に花が咲くみたいに見えますね^^。
後ろから照らす陽の光が、生き生きとした雰囲気に。
by Inatimy (2015-10-27 22:26) 

TaekoLovesParis

楽しく読んだのに、お返事が遅くてすみません。
▲カエルちゃん、晩御飯だなんて(笑)。何飲むか、なーんて相談は、私達、俗世界で、この方たちは、衣装も白いし、修道女の雰囲気。タイトルが「日曜日」だから、野外礼拝に集まってきたのかしらね。地面への人物の影が薄く描かれているので、光も強くなく、穏やかな朝かな、って思いました。

▲コザックさん、<まだ観たことのない素敵な展覧会>(笑)。そういうの、時々ありますね。自分が注目しなかった絵ばかりがとりあげられてる記事。でも、今、コザックさんの記事をもう一度、読んだら、<エドモン・アマン=ジャン、エルネスト・ローラン、アンリ・マルタン> って、同じ所に注目してるじゃないですか。やはり、この辺りに目を惹かれ、親しみを感じますね。特に「野原を行く少女」は、大きく明るい絵なだけに目だって光を放っていましたね。
図録でなく、小学生用のブックレットを買いました。わかりやすくてよかったです。

▲Inatimyさんも、「野原を行く少女」に一票ですね。<彼女の歩いた後に花が咲くみたいに見えますね^^。>→ すてきな表現ね。ほんと、花が美しい。しかも肩かけのように、花が画布を横切り主役。ドレスの白がひきたて役で。こんな野原、行ってみたいです。

by TaekoLovesParis (2015-10-31 11:12) 

yk2

もう会期末ですねぇ。行きたい展覧会だけど、行けるかなぁ・・・(T.T)。

シダネルとかマルタンって、上手い絵だな、綺麗な絵だな~とは思うけど、この人たちの絵はどうも個性が掴みにくいので、「この画家が好き!」って具合に、強く感情移入しづらい様な気がしちゃうんですよねぇ。モネと遜色ない風景画を描きつつ、イマイチ人気が沸かないシスレーにも重なるイメージを僕は勝手に見ています(^^ゞ。

そんな中でも、シダネルの『日曜日』は好いですね。淡い色彩が神秘的で白い服の女性達は敬虔なイメージ。これからミサでしょうか。アカデミック寄りな画法でシャヴァンヌ風(もちろん、イコール「ドニ風」でもあります)に描いたら・・・って感じ?。

も1つついでに、ルネ=グザヴィエ・プリネの『カブールの浜辺』が映画のワンシーンみたいって、僕はこの景色に『ベニスに死す』を思い浮かべちゃいました(^^。

by yk2 (2015-10-31 15:04) 

hatsu

「野原を行く少女」、いいですねー^^
うん、少女の持っている花輪がきれい。
この野原、歩いてみたいなぁ♪
by hatsu (2015-10-31 21:44) 

moz

1900年から1920年の絵画たちなんですね。
目につくようにとの意味でのタイトルなのでしょうね ^^
モネたちの系譜を継ぐ画家達? そんな感じなのでしょうか? モネは初日に見に行って、ものすごい感動をもらってしまいました。ラザール駅も見たいので、もう一度行こうと思っていますが、こちらの展覧会も面白そうです。
アンリ・マルタンの透明な空気の様な感じ、ドニの様なル・シダネル、良いですね。
あまり見たことのない画家たちの絵は興味津々です。
少し間が空いてしまいましたが、今後もよろしくお願いします。
by moz (2015-11-01 10:42) 

TaekoLovesParis

yk2さん、地味な展覧会だけど、それなりの良さがありました。
<シダネルとかマルタン>→ 東京駅の「エミール・クラウス展」の時、ふたりの絵が並んでいて、同じアンリで、絵が「建物と花」と似ていたので、覚えていました。作品はたくさんあるでしょうから、見たものだけで、判断しては、いけないけど、落ち着く絵、和らぎを与えてくれる絵ですね。部屋に飾るのに良さそうだから、その時代、人気があったのでしょう。シスレーも落ち着く絵、和らぎを与えてくれる絵なので、地味になってしまいますね。

「日曜日」は、横長なだけに、シャバンヌの壁画を思わせるけど、点描っぽいところが違うので、yk2さんの<アカデミック風に描いたら?>って、そういう想像、面白いなぁ。

『ベニスに死す』、私も、よ!時代背景が同じなのか、帽子をかぶっている服装とか、背後にホテルっぽい建物が見えたりするので。美少年だったアンデルセンくん、その後、全く映画に登場しませんね。


by TaekoLovesParis (2015-11-01 22:45) 

TaekoLovesParis

hatsuさん、「野原を行く少女」、縦140㎝と、他の絵にくらべて大きいんです。画面中央にある花が色とりどり、とっても綺麗なので、この絵は目立ってました。こういう野原、歩いたら、ふかふかと気持ちよさそうね。
by TaekoLovesParis (2015-11-01 22:49) 

TaekoLovesParis

mozさん、1900~1920年って、20年だけですよね。美術史で言ったら、かなり短い時期。今まで、17世紀のフランス絵画とか、18世紀の、、展覧会があったので、一瞬、'20sを2000年と間違えて、?、でも、よく考えたら、2000年だったら20c。<モネたちの系譜を継ぐ画家達? そんな感じなのでしょうか?> → そうです。つまり、印象派の前の輪郭をはっきり描くアカデミズムではない、形より光や空気を大事にする描き方で、さらに、象徴主義も取り入れたような、だと思います。
この中で、モネの流れ、というと、やはり、アンリ・マルタンの「野原を行く少女」ですね。mozさん、モネ展で、感動をもらった様子、記事からよーくわかりました。私も、「サン・ラザール駅」が見れる後期こそ、見逃さずに、と思っています。パリのマルモッタン美術館で、「印象」は2度、見たのですが、「サン・ラザール駅」を見てないんです。どこかに貸し出してたのかしら。
by TaekoLovesParis (2015-11-01 23:07) 

coco030705

こんばんは。
ご訪問遅くなりました。
この絵画展すばらしいですね。好きな絵ばかりです。
私は特に、ル・シダネルが好きです。「テーブル、白の調和」が好みです。
以前京都伊勢丹で観たときは、バラの絵が多かったんです。「テーブル、白の調和」のような部屋の中の風景もバラ色のインテリアでとてもきれいでした。このときがル・シダネルとの出会いでした。みられてよかったと思いました。
by coco030705 (2015-11-02 20:31) 

TaekoLovesParis

cocoさん、こんばんは。
以前に、コザックさんの記事で、シダネルがお好きって読んで、cocoさんらしいなって思ってました。前衛的なものに理解はあるけれど、部屋に飾るほど好きではない、でしょ?シダネルの絵には静けさと落ち着きがありますね。「白の調和」、私も好きです。同じく部屋にぽつんとテーブルを描いた「赤いテーブルクロス」も赤なのに静かな雰囲気の絵でした。バラの花の絵、すてきでしょうね。私もいつか見れるよう、アンテナ貼っておきます。
by TaekoLovesParis (2015-11-03 23:33) 

ねじまき鳥

い以前に下高井戸に住んでいました(^-^)
by ねじまき鳥 (2015-11-04 01:19) 

coco030705

Taekoさんへ
ご明察でございます。「前衛的なものに理解はあるけれど、部屋に飾るほど好きではない」かもしれません。やはり印象派が好きです☆
by coco030705 (2015-11-04 20:52) 

TaekoLovesParis

ねじまき鳥さん、下高井戸にお住まいでらしたから、世田谷線や豪徳寺を記事に取り上げてらしたんですね。学問をテーマにした記事は、記事作成に時間がかかり大変かと思いますが、がんばってください。
by TaekoLovesParis (2015-11-05 01:24) 

TaekoLovesParis

cocoさん、<ご明察でございます>→ 当たりでうれしいです。
遅まきながら、「森に消えた子供たち」を見ました。こんな話、本当にあるのね、戦争は、いつまでも爪痕を残す、って思いました。英語が聞き取りやすいと思ったら、ロシアなまりの英語にしてたんですってね。ヴァンサン・カッセル、いい具合に年とったと思いました。
by TaekoLovesParis (2015-11-05 01:32) 

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