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町田市立国際版画美術館 [展覧会(日本の絵)]

町田市立国際版画美術館は、世界でも数少ない版画専門の美術館で収蔵作品も
多い。浮世絵、新版画(大正~昭和の木版画)だけでなく、デューラー、レンブラント、
ゴヤ、マティスなど海外の作品も多い。どんなものを所蔵しているかは、ここ*
クリックしてみてください。
所蔵品を全部一度に公開することはなく、企画展で少しずつ展示している。

町田市に住んでいる従妹と2017年に「浮世絵大公開展」を見に行ったとき以来
の訪問なので5年ぶり。

町田版画美術館.jpg

シンプルな建物。

今の展示は「新収蔵作品展」(2月19日まで)とミニ企画展の
「パリのモダン・ライフー1900年の版画、ポスター展」(3月12日まで)

で共に入場無料。

1,新収蔵作品展
草間弥生の「こんにちは」1989年 スクリーンプリントは、色鮮やかなかわいい
作品だが、写真撮影禁止。

岸田劉生「鷹匠」大正~昭和初期は、当時流行った「大津絵」。これも撮影禁止。

(1)川瀬巴水(1883~1957)霧之朝(四谷見附)
「新版画」の騎手「巴水」は、日本全国を旅して風景をスケッチをし、東京に戻って
版画を作成するという制作スタイルだった。
これは昭和初期の霧の朝の四谷見附からの風景。
見附は小高い丘で、霧におおわれた朝の街並みが、遥か彼方に見える。
手前の松との対比がダイナミック。
川瀬巴水2.jpg


(2)浜口陽三(1909~2000)「くるみ」メゾチント
銅板画家の浜口は、東京美術学校中退の後、フランスに渡り活動。
これはパリ時代の制作で、心象風景を表現したもの。
(3)瑛九(1911~1960)「スケート」リトグラフ
前衛芸術家の瑛九は、写真作品、油彩、版画などを作成した。
スケートをしている様子を抽象と具象の中間の様式で制作。
鶴の脚のようなのが、スケート靴を履いた足?
浜口陽三.jpg eikyuu.jpg


(4)和田誠(1936~2019)マザーグースより「コウモリ」 エッチング
イラストレーターの和田は、多摩美大卒業後、広告制作会社に入社。
軽妙洒脱なイラストで多くの雑誌や本に作品が掲載される売れっ子だった。
コウモリ(bat)を帽子(hat)でつかまえようと追いかける紳士。
作品は16枚展示され、どれもユーモア満載で面白かった。

和田誠.jpg


(5)黒崎彰(1937~2019)
京都をベースに国際的に活躍した木版画家。京都工芸繊維大で学び、
幕末浮世絵に惹かれ、職人から伝統木版の技法を学ぶ。独特の色彩の
多色刷り木版で、国内外で受賞を重ねる。日本とは違う素朴で強靭な
韓国の紙を使っての作品制作を行った。
東京百景 王子紙の博物館 木版 8版17色

黒崎彰.jpg
写真はないが、近江八景シリーズを韓国の紙を用いて描いた。
次に、万葉シリーズを手掛けた。
夕波千鳥(柿本人麻呂)木版 八女紙
近江の海 夕波千鳥 汝が鳴けば 心もしのに いにしへ思ほゆ
この歌に合わせて描いた絵による木版画。
白い波、白い千鳥の配置が現代に通じるデザインだと思った。

人麻呂.jpg

他にも、数人の作品があり、どれも興味深かったが、紙面の都合で割愛する。



2,「パリのモダン・ライフー1900年の版画、ポスター
(1)エヴァヌプール(1872~99)「広場にて」
ベルギー出身の画家でギュスターヴ・モローに師事。パリの風景や人物を
描いたが、27才で亡くなった。5色の色版、版画。
お母さんに手をひかれながらも、地面の上の何かが気になっている女の子の
ようすがほほえましい。

paris1900.jpg


(2)グスタフ・マックス・ステヴァンス(1871~1946)
「ソルウェイグ」
タイトル「ソルウェイグ」の意味はわからないけど、列車の窓から街を
眺めてるので、この街の名前かしら。ものすごく細かい描写。
列車のインテリアが全部アールヌーボー。一等車でしょうね。
paris車窓.jpg


(3)ヴァロットン(1865~1925)「ラ・ペヴィニエールのポスター」
ラ・ペヴィニエールは、当時パリにあったミュージックホールで、兵隊ものの
コメディが有名だった。客のコミカルな表情をとらえて描いているのが面白い。

varotton.jpg


(4)シャルル・ドゥードレ 「領主夫人」
領主夫人が馬にまたがって闊歩していた時代。真横を向いて馬にという
スタイルが中世風。緑が鮮やか。
領主夫人.jpg


(5)ジャン=エミール・ラブルール(1877~1943)「トロカデロ広場の花売り娘」
エッチングでキュビズムに影響をうけた作品は時代に大きな影響を与えた。のちに

銅板画で、パリの風景や人間像を描いた。初めて知った画家だが、いいなと思った。

パリの花売り娘.jpg


全部で40点と少ない展示だったが、見ごたえがあって面白かった。

従妹は、黒崎彰の作品がよかったと言っていた。
この後、町田駅近くの「STRI」で、もう一人の従妹も加わって3人でお正月の
ランチをした。


★忙しいので、前のコメントへのお返事がまだですみません。

今回、コメント欄はあけてありますが、お返事はたぶん、できません。


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コメント 7

おと

和田誠のイラスト、かわいいですね^^
町田市立国際版画美術館、知りませんでした♪
行ってみなくちゃ、と思う美術館がどんどん増えていきます!
STRIのお店も素敵ですね♪
by おと (2023-01-20 19:25) 

yk2

バロットンのこの作品を最初に見たのは、確かいなちゃんのblogでだったかなぁ。ヒネりの効いた彼の作品の中でもかなり漫画チックで、ちょっと手塚治虫の絵にも通じる気もして、気になる、好きな1枚です。新蔵展で紹介されてるってことは、今後も目に出来る機会が確実に増えたわけで喜ばしい(^^。

町田は良いコレクション持ってるみたいだし、なかなか面白そうな展覧会やりますよね~。でも未だ一度も行った事がないです(^^ゞ。。今回のこの記事でも知らない名前の作家が半分以上。まだまだこのジャンルには隠れた名作が埋もれていそうな気がしています。
by yk2 (2023-01-21 09:54) 

ぼんぼちぼちぼち

版画に特化した美術館、貴重でやすね!
古今東西、様々な版画が観られるって、楽しそうでやすね!
by ぼんぼちぼちぼち (2023-01-21 11:57) 

ふにゃいの

川瀬巴水、大好きです。
浜口陽三はヤマサの美術館や吉祥寺美術館で
色々見たことがあります。
版画は根気がいるし、なんとなく失敗が許されないイメージ
があって、(美術の授業で苦労しました^^;)
すごいなぁと思います。
by ふにゃいの (2023-01-22 14:25) 

ナツパパ

様々な絵が見られるっていいですね。
版画が好きなので、ここには行ってみたいです。

by ナツパパ (2023-01-23 16:09) 

Inatimy

こんなにいいものが観られるのに、入場無料だとは・・・なんて太っ腹♪
ソルウェイグと聞いて思い浮かんだのは、フランスのDJのMartin Solveig マーティン・ソルヴェイグ。このDJは芸名だけど、展覧会の出品リストを見たら絵のタイトルは"Solveig"で綴りは同じ。元々Solveigは北欧やアイスランドの女性の名前みたいだから、座ってる女性の名前かしらね。
って、この絵、列車なのかしら? 椅子は一人掛けの幅のようだし、窓は二重で折り畳み式のがついてるし、家の窓から外を眺めてるのかなと思ったんですが・・・。いずれにせよ、帆船があったり城壁があったり街の細やかな様子がいいですよね^^。
by Inatimy (2023-01-23 18:37) 

TaekoLovesParis

遅くなりましたが、コメントありがとうございます。
▲おとさん、和田誠のイラストは4点飾られていて、チャップリン映画の4ポーズを一枚におさめたもの、1932年のメトロポールという有名な映画の古典からの4コマ、懐かしの映画の4コマ、私は映画が好きなので、じっと見ちゃいました。飼っているネコの銅板画もありました。
この美術館は、地形的に谷底にあるので、急坂を下って行きます。行きはよいよいですが、帰りは大変なので、美術館の中にタクシーをよぶ専用電話があります。無料な上にお客さんは私といとこと、あと一人だけで、がらすきでした。版画は地味なのかしら。
Striは、2人以上で行ったほうが楽しいかも。ビュッフェですが、「残したら一皿につき500円いただきます」と書いてあったので、苦手なものをとらないように苦心しました。

▲yk2さん、Inatimyさんのところでなら私も見てるはずと、検索で探したけど見つからず。。どこかで実物大を見てるのだけど、思い出せない。三菱一号館のヴァロットンん展の時かしら。こういう一人一人の顔が漫画っぽいのはユニークだから印象に残ってるんだけど。
町田は、yk2さんが何度か花菖蒲を見にいらした薬師池公園のあるところだから、車でいらっしゃれば、そんなに遠くないのでは。駐車場、広かったですよ。

▲ぼんぼちさん、この美術館、かなり前からあるので、町田市はユニークだなと思ってました。古今東西、まさにそうです。寒いからか、お客さんが3人だけでした。

▲ふにゃいのさん、川瀬巴水、私も好きです。特に増上寺の雪景色と青い月夜の作品が好きです。
<浜口陽三はヤマサの美術館>→ 浜口陽三は、ヤマサの創業家の三男だったんですね。しかも「ミュゼヤマサ」が日本橋にあるんですね。教えてくださってありがとう。暖かくなったら、行ってみます。

▲ナツパパさん、新宿から小田急に乗れば35分~40分でつきます。私はいとこに案内してもらったけど、知らない町めぐりも楽しいです。美術館の建物の周りは、芹が谷公園で広く散策によさそうです。企画展によっては入場料がかかりますが、今回は収蔵品だけなので無料でした。

▲Inatimyさん、調べてくださってありがとう。Solveigは女性の名前かもしれないのね。しかも、これはよく見れば、一人用のいすだから列車でなく、室内なのね。二重窓で凝ったインテリアだから、貴婦人なのでしょうね。
説明がついてなかったので、絵を見ながら想像したのだけど、観察力に欠けてました。補ってくださって感謝。
あまり大きくない絵なので、窓の外の町の様子が細かく描かれてるのに、目を奪われました。
by TaekoLovesParis (2023-01-26 00:00) 

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