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モダン・アート,アメリカン展 [展覧会(西洋画)]

 レストランを出た私たちは、乃木坂の国立新美術館に行った。
Okief.jpg ← 葉のかたち ジョージア・オキーフ

「モダン・アート,アメリカン」展は、鉄鋼王フィリップスが築いたアメリカ初の
近代美術館のコレクション。1921年に開館、同時代の新進画家の作品を
積極的に集めることから始まったので、20世紀のアメリカ美術の歴史をざっと
見ることができて、面白かった。

ちらしを見ながら、友達が、「知ってる画家は、オキーフとポロックだけ。
アンディ・ウォーホールとかワイエス、ないのね」と、少しがっかりしたようす。

(1)19世紀の画家。
エドワード・ヒックスの「平和な王国」
聖書の預言通り、動物と人間が共存する平和な理想郷。
絵の右手後方は、ペンシルヴァニアとフィラデルフィアの創設者ウィリアム・ペン
が、先住民のインディアンと和平協定を結んでいる場面。
(ペンシルヴァニアとは、ペンの森(ラテン語でsylvania)の意味。フィラデルフィアの大学に
短期留学したとき、ウィリアム・ペンについて何回もきかされた)

ヒックス.jpg

ジェイムス・アボット・ホイッスラーの「リリアン・ウォーケス」。肖像画。
オルセー美術館にある「画家の母」という、年老いて元気のない灰色の服の母の
肖像画とは180度違った美しい人。

ホイッスラー.jpg

ウィンスロー・ホーマーの「救助に向かう」
ホーマーは、ボストン出身なので、ボストンに滞在すると何度も名前を耳にする。
海で船に乗る人や海辺で働く人など、アメリカの海を背景にした絵が多い。
わかりやすく、野性美にあふれた絵。描かれた人の服装が19世紀。

Homer.jpg

(2)ここからは20世紀の絵。まず、風景画。
アメリカの自然は雄大だ。スケールが大きい。
私もアメリカで見た
太陽や夕日は、日本で見るよりも大きく見えた。

アーサー・ダヴの「赤い太陽」
私も友達も知らない画家だったが、ダヴの作品は、いくつもあったので、
有名らしい。(今、THE 20TH CENTURY ARTBOOKを見たら載っていました) 
dau.jpg


ジョン・マリン「ウィーホーケン連作のNo30」
ニュージャージー州ウィーホーケンは、彼が育った場所。
「木はわかるけど、、あとは、、?」 「家と海と太陽でしょ、違う?」
じっくり見ないとわからない。ま、そこが面白いんだけど。
(MarinもTHE 20TH CENTURY ARTBOOKに載っていました)

marin.jpg

(3)都市を描いた絵
ポスターにもなっているエドワード・ホッパーの「日曜日」
日曜日なので、店も閉まり、閑散とした街で、ひとりタバコをくわえて座る男。
ホッパーの絵は、建物の中にひとり、あるいは数人が描かれているものが
多いが、表情がけだるい。人間の孤独を表している。
光の使いかたも独特で、一度、見たら忘れられない強烈な印象を残す。
絵の中にドラマがあり、映画のワンシーンのようだ。。
私も15年前に、初めて見たとき、「この画家は?」と興味をいだいた。
ここには展示されていないけれど、「灯台」の風景画と深夜のバーを描いた
「ナイトホークス」の2つは特に好きな作品。

HopperSunday.jpg


ジョン・スローンの「冬の6時」
スローンは20世紀初めの「アメリカン・リアリズム」の代表的作家。
当時まだ報道写真がなかったので、火事やストライキの現場に駆けつけて、
報道のイラストを描いていた。この作品も、冬の夜6時、ニューヨークの鉄道駅
の高架下に仕事を終えた人々が大勢いるようす。人々の表情は明るく、
「これから飲みに行く?」と、話しているかのようだ。

スローン.jpg

(4)抽象画

スチュアート・ディヴィスの「卵泡立て器」
どの部分が泡立て器?
不思議な分割だけどキュビズム。バランスがとれて、色の構成がきれい。

Devis.jpg

マーク・ロスコの「無題」
ロスコの絵は哲学的と言われている。
四角形が上下に並び、色彩の組み合わせで、何かが表現されている。
千葉県の川村美術館には、赤いロスコの作品で囲まれた「ロスコの部屋」がある。

Rothko.jpg


アクションペインティングの「ジャクソン・ポロック」、アンリ・ルソーのような絵の
「グランマ・モーゼス」、日本人だが早くからアメリカに渡った「国吉康雄」の作品
もあった。

ジェイコブ・ローレンスの「大移動シリーズ」は、人々が南から北へと、仕事を求めて
移動するようすを描いた連作。タイトルに「かつて自然豊かな田舎暮らしをしていた
移住者が、今や産業機械に依存する都市生活へと向かっていた」
とある絵には、大勢の黒人労働者が描かれていた。アメリカの歴史がわかる絵。

1930年代のニューヨークの風景画からは、摩天楼が自慢だったことが伺えた。
いろいろな地域や通りが描かれたそれぞれの作品からは、工場地域、遊興地区、
黒人居住区とそれぞれの特徴が伝わり、カーニバルやパレードなどのお祭りや
家での日常生活の一コマから、70~80年前のアメリカの生活が伝わってきて、
理想社会に向かって進んだアメリカのパワーを見せつけられた気がした。
絵を通して、アメリカを理解できる展覧会だった。


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コメント 16

ぶんじん

知らない画家さんの作品が多いですが、その分、新鮮に観られそう。
古き良きアメリカ、憧れちゃいます。
by ぶんじん (2011-10-30 15:02) 

TaekoLovesParis

そうなんです、「この名前の人、さっきもあったわよね」なんて言いながら、
行きつ、戻りつで、見ました。どの絵にもアメリカの画家たちの強い愛国心
が感じられました。だからこそ、国民に支持されたのでしょうね。
古き良きアメリカ、音楽もよかったですね。
by TaekoLovesParis (2011-10-30 20:30) 

yk2

ホイッスラーの絵の説明部分を読んで、えっ、これって、あの『グレイと黒のアレンジメント』に描かれてたホイッスラーのお母さんの若い頃なの?って、つい勘違いしてしまってました(^^;。『リリアン・ウォーケス』って、画家の母とは全く別の女性の肖像なんですよね?。
by yk2 (2011-10-31 00:54) 

hatsu

報道写真がなかった時代には、報道イラストがあったんですね~。
ジョン・スローンの『冬の6時』、観てみたいです^^
by hatsu (2011-10-31 05:40) 

Inatimy

ジョージア・オキーフというと、牛だったか角のある動物の骸骨の絵ばかり印象に残ってるので、
あら、こんな葉っぱも描いてたんだ~と意外でした。 秋っぽくていいですね。
エドワード・ホッパーは昔展覧会に行ったはずなんですが、個々の絵、
あまり印象に残ってなくって、当時は小説の本の表紙みたいだな、と思っただけでした・・・。
この記事にある絵の中では、やっぱり「泡立て器」が一番かな~♪ 電動かしら~。
by Inatimy (2011-10-31 06:00) 

hatsu

たびたびです。
お弁当の写真に、嬉しいコメントありがとうございます。
つくるのが楽しくなりますー^^
by hatsu (2011-10-31 06:12) 

匁

偉大なアメリカを感じさせる絵画ですね。
先入観でそう思ってしまうからかも解かりませんが?。
エドワード・ホッパーの「日曜日」も
ゆったりした時間の流れを、なぜか感じさせます。

今夜は世紀の決戦ですね。
楽しみにしています。
by (2011-10-31 16:28) 

バニラ

20世紀に入って、アメリカっぽい作品が誕生してきてからが好きだなぁ。
たしか、フィリップス氏は有名作家の収集というより、同時代の米作家たちを支えるという意識があったように記憶してるのですが…。 だからあまり知らない作家が多いのかなぁと。
by バニラ (2011-10-31 18:20) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます
▲yk2さん、『グレイと黒のアレンジメント』というのが正式タイトルでしたね。
あの絵はインパクト強いです。ホイッスラーはアメリカ人だけど、パリで学んだ
後、ロンドンに定住。この絵は、ロンドンのお嬢様がモデルです。クールベに
傾倒していたこともあったので、写実性にも富んでいますね。
あの~、yk2さん、一般的に息子が母親の若い頃を描くって、アリエナイと思い
ますが(笑)

▲hatsuさん、写真がない時代は肖像画がお見合い写真、家族写真で、
報道写真はイラストなんですね。イラストだと誇張して描かれて、わかり
やすかったでしょうね。そういえば、火事の絵、船の遭難の絵は、昔、
多かった題材ですね。
お弁当、がんばってね。私も自分のお弁当のヒントにさせてもらってます。

▲Inatimyさん、<牛だったか角のある動物の骸骨の絵>、私もすぐ、
これは浮かびます。オキーフの手にかかると、花も葉っぱも妙に生々しく
なってしまう気がします。
ホッパーは、日本であまり見る機会がないけれど、外国の美術館では、
よく目にしますね。見てすぐ、ホッパーとわかるから印象に残るのかも
しれません。
電動泡たて器でしょ、私も左側を見て、そう思いましたよ。

▲匁さん、う~ん、今夜は、、、残念です。。。
偉大なアメリカの時代の絵なんですよね。希望がたくさんあった時代。
ドル安で、偉大ではなくなっていくアメリカの昨今、この先、世界経済は
どうなっていくんでしょう、って、不安です。

▲バニラさん、ロスコのことを書きながら、以前、バニラさんが川村美術館で、
ロスコを見て、とてもよかったと、書いてらしたのを思い出してました。

フィリップス氏の画家たちをサポートするという趣旨は、アメリカらしい気前の
良さと芸術への理解ですね。おっしゃってくださってるように、だから、知らない
画家が多いんですね。街の景色や日常生活を描いて面白かったものの作者
の名前を本で調べても出てないと、100年残らなかったのね、って思いました。
とはいえ、アメリカでは、今でも有名なんでしょうね。
by TaekoLovesParis (2011-11-01 00:03) 

moz

芸術の秋、展覧会も色々なものが開催されていますよね。
TaekoLovesParisさんの行かれたこの展覧会も特色があって面白そうです。
ぼくも行ってみたい。
色々とよい絵があるようですが、中でもエドワード・ヒックスに惹かれました。面白そうな画家さんです。どんな人なのか調べてみたい。
ちょっとルソーを思い出してしまいました。なかなか味のある絵 ^^
しばらく絵を見ていないのですが、じぶんもゴヤノ絵が来ているのでブラド美術館展に近々行くつもりです。
by moz (2011-11-01 05:56) 

nyonyo


わたしもこの展覧会みてきました♪アメリカっぽかった。
ここで、復習できてよかったです。
ロスコ部屋がみてみたい^^


by nyonyo (2011-11-01 09:16) 

りゅう

知らない画家がいっぱい。
アメリカ美術(アメリカ絵画?)は二番煎じというと怒られそうですが、
何を主張したいのか、なんかよくわからないんですよね、特にモダンアートは。。。
アメリカのオリジナルというと、どうもポップアートしか浮かびません。
でもポップアートはイマイチ苦手でして。。。
ポップコーンは好きなんだけどなぁ。(^_^;)
by りゅう (2011-11-03 00:59) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます
▲mozさん、ヒックスは熱心なクエーカー教徒(キリスト教の中のひとつ)
だったので、同じくクエーカーのウィリアム・ペンを信奉していました。
だからペンが絵の中に背景として登場する作品がいくつもあります。
クエーカーは平和主義を旨としているので、ヒックスの絵にもそれが表れて
いますね。ハリソン・フォード主演の「刑事ジョンブック 目撃者」という映画が
クエーカーの一団体アーミッシュのことがよくわかる映画で、面白いです。

▲nyonyoさん、いらしたんですね。ゆったりとした空間で見れて、良い印象
ですよね。地味ながらいい展覧会だったと思いました。
川村のロスコ部屋は、照明を暗くしてあるので、これまた独特の雰囲気。
千葉県で遠いけど、川村美術館は周りを森に囲まれたすばらしい環境なので、
おすすめです。
by TaekoLovesParis (2011-11-03 10:02) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます
▲mozさん、ヒックスは熱心なクエーカー教徒(キリスト教の中のひとつ)
だったので、同じくクエーカーのウィリアム・ペンを信奉していました。
だからペンが絵の中に背景として登場する作品がいくつもあります。
クエーカーは平和主義を旨としているので、ヒックスの絵にもそれが表れて
いますね。ハリソン・フォード主演の「刑事ジョンブック 目撃者」という映画が
クエーカーの一団体アーミッシュのことがよくわかる映画で、面白いです。

▲nyonyoさん、いらしたんですね。ゆったりとした空間で見れて、良い印象
ですよね。地味ながらいい展覧会だったと思いました。
川村のロスコ部屋は、照明を暗くしてあるので、これまた独特の雰囲気。
千葉県で遠いけど、川村美術館は周りを森に囲まれたすばらしい環境なので、
おすすめです。 本文のロスコの箇所に、川村美術館の私の過去記事への
リンクをつけておきました。

▲りゅうさんは、おなじみ印象派から17,8世紀、ルネッサンスと遡って
興味の範囲を広げていらっしゃるから、モダンアートは、イヤンの世界でしょ。
聖堂の記事にコメントしようと思って忘れてました。
ポップコーン、、鳩も好きですよね。って、前記事へのコメントを思い出して
しまった(笑)
by TaekoLovesParis (2011-11-03 10:23) 

pica

アーサー・ダヴは私も知りません。
「赤い太陽」、妙に惹かれます。
なんでかゴッホの「星月夜(でしたっけ?)」を思い出しました。
by pica (2011-11-07 00:44) 

TaekoLovesParis

picaさん、「赤い太陽」は、一度見たら、忘れられない作品に
なりますね。「星月夜」もそうでしょ。きっと赤い太陽の上の~が
ゴッホを思いださせるんだと思います。私もそう思ったのでー。
by TaekoLovesParis (2011-11-07 19:44) 

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