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「東山御物の美」展 [展覧会(日本の絵)]

ここのところ、忙しくて、展覧会に行っても、記事が書けてません。
ウフィッツィ、ホドラー、菱田春草、Bunkamuraのフランス絵画展(印象派)、、
どれから書こうかなと考えて、もうすぐ終わる(24日まで)の「東山御物の美」展
にしました。会場は日本橋・三井記念美術館。

tirasi.jpg

東山御物とは、足利将軍家のコレクションのこと。大陸伝来の唐物が崇拝された
室町時代の最高峰のものである。当時の唐物文化は、その後の日本の美意識の
原点となったため、日本美術史の中で重要な位置を占めている。

第一室は、茶道具。
「唐物肩衝茶入れ」 (三井記念美術館蔵)
肩衝(かたつき)茶入れは、上の方が横に張り出した形のもの。
高さ9㎝と小さい。足利義政により「遅桜」と命名された。
この模様が桜の木なのではなく、義政は「初花」と銘をつけた唐物肩衝茶入れを
既に所有していたので、こちらを、「おそ桜、初花よりも珍しきかな」の歌に因んで、
「遅桜」と命名した。モダンな図柄が初花より珍しいと言える。

唐物の茶入れ.jpg

青磁輪花茶碗(東京国立博物館蔵)
これもまつわる話が面白い。
平重盛所有といわれた品だが、足利義政が所有していたときに「ひび割れ」が
生じたので、明に送って、代りの品を求めたところ、「もうこのような作品は作れない」
と、かすがいを打って修理して返して来た。かすがいを大きな蝗(イナゴ)に見立てて、
「馬蝗絆」と銘がついた。
写真の茶碗左下に、かすがいが打ってあるのが見えますか?結構目立つから、
イナゴと見えなくもない。

青磁花輪.jpg

「いいなー」と長い時間眺めたのは、春日山蒔絵硯箱。根津美術館所蔵品。


第二室は、展示品がひとつだけ。
国宝の「油滴天目」茶碗。大阪東洋陶磁美術館所蔵
上のチラシの右下に見える黒っぽい厚みを感じる茶碗。

第三室は書院飾り。長盆、硯、文鎮、筆、水注、小さい花瓶などが、昔の本に
書かれている通りの設えで再現してあった。

第四室は、南宋から元の時代の中国絵画。
「鴨図」、羽根を繕う鴨が愛らしい絵。五島美術館蔵

国宝の「雪中帰牧図」、大和文華館蔵。細い筆で描かれているので見えにくい。

梅花小禽図、五島美術館蔵
梅花双雀図、国立博物館蔵
この2つは並んで展示されていた。元は一枚の大きな絵だったのが、
小さく切断されたのでは、と推測されている。

梅小禽.jpg

国宝「風雨山水図」静嘉堂文庫蔵は、雨のようすが素晴らしい絵。

国宝「出山釈迦・雪景山水図」、東京国立博物館蔵
永い苦行が正しい悟りへの道でないことを知って深山を出る釈迦の姿を描いたもの。
やつれて髭がのび、突き詰めた表情の釈迦。この時代にしては珍しい着色。
赤っぽい色の布をまとっている。

第七室
老子図、岡山県立美術館蔵
先ほどの釈迦図で、今まで見てきた「お釈迦様」と随分顔が違う、と思ったが、
この老子の鼻は、何と評してよいか。。。

老子.jpg

すばらしい作品がたくさんあり、由来に興味を持てたりしたので見応えがあった。
しかし、チラシに載っている牡丹のように見える大輪の花の絵がなかった。
なんと、この展覧会は、1期から7期と細かく分けられ、展示品が入れ替わる。
国宝「紅白芙蓉図」、東京国立博物館蔵は、最初の10日間だけの展示だった。
帰ってしまった絵は、開催中の「国宝展」で、12月7日まで見れる。
対の芙蓉図は前に見たが、また見たいと思わせる絵。行こうかなと考え中。


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カエル

老子の耳もへんてこりんですね。笑
by カエル (2014-11-18 16:59) 

Inatimy

明に送って、代わりの品を・・・って、当時では凄いことですよね〜。
いくら貿易船が行き来してたとはいえ。 
今の世の中ならメールで事前に修理作業の話に了承を得てから取りかかるんでしょうけど、
いきなり、かすがい打たれて戻ってきたら、かなりショックだったでしょうね。
それでもイナゴに見立てて・・・すごくお気に入りだったのがうかがえます^^。
春日山蒔絵硯箱、Taekoさんのハートを射止めた作品はどんなのかしらと探して見たら、
70円、72円切手のデザインにも使われたものだったんですね〜。すごい。 
展示会のサイトを見て、私が気に入ったのは、同じ根津美術館所蔵の国宝「鶉図」。
絵からウズラの様子がまさにそのまま伝わって来る感じが。
昔、ウズラを飼っていたんですよ。 ・・・お弁当にいれる、ゆで卵用に^^;。
by Inatimy (2014-11-19 20:02) 

yk2

僕が馬蝗絆のことを知ったのは、もう優に20年以上も前のこと。漫画『美味しんぼ』のストーリーから、でした。その時は陶芸なんてまるで興味はなかったけど、今回taekoさんも書いてらっしゃるこの名前の由来が興味深くて、ずっと記憶の中に留めてありました。そうして、その実物をやっと目にしたのは今からまだほんの数年前のこと。たまたま訪れたトーハクの常設にその姿を見つけた時には、「これがあの馬蝗絆か~!」と、結構感動しましたねえ(^^。ひび割れてかすがいが打ってあると云うのに、外観がすごく綺麗なのでびっくりした記憶があります。
by yk2 (2014-11-19 21:30) 

ひこうき雲

中国の磁器は、宋の時代がピークだったようです。
しかし、ひびを鎹で補修するとはなんとも大胆な。
国宝展に行ったときに、「紅白芙蓉図」を見た覚えがないので、丁度こちらに出張中だったのかな(笑)
ウフィッツィ展は、メディチ家の力に圧倒された感がありますが、これだけの作品群を一般公開してくれた、アンナ・マリーア・ルイーザ・デ・メディチに感謝です。
ぜひ、ウフィツィ美術館を訪れたくなりました。
by ひこうき雲 (2014-11-19 22:01) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます。
▲kaeruちゃん、あのね、ここに写真は載せてないけど、山を出る釈迦の絵の釈迦の耳も肩まで垂れ下がってたの。当時は耳が長い方がよかったのかな?

▲Inatimyさん、ひびだから、かすがいで補強してきたのね。返送されたこれを見た時、義政は驚いたでしょうね。蝗に見立てた銘とは洒落てるわね。補修品だから、大切にされてきたらしく、写真のように光沢がある美しい青磁でした。
春日山蒔絵硯箱の図柄が、切手になってたとは知らなかったので、見たら、「あーこれね」って、覚えがあるぶんでした。上手に一部を使ってますね。
「鶉図」は、見たかったけど、私が行った期間には展示されてなかったので、残念に思ってます。私はホンモノの鶉を見たことがなくて、、鶉の卵は水煮缶を使ってます。

▲yk2さん、なんかいい話ですねー。記憶してた名品に20年後に会えるなんて。そういう出会いって、とっても感動しますね。トーハクの常設だったら、写真を撮れますね。
この展覧会は、帰ってきてから、もう一度、チラシを見たら、展示されてないものがたくさんありました。24日までにもう一度行きたいです。「鶉図」「茉莉花図」、あと国宝の山水図2つが最後の期間で見れるので。帰りには、新しくできた「コレド室町」もみて、、って考えてます。

▲ひこうき雲さん、国宝展にいらしたんですね。混んでるって聞いてるので、いつ、行こうか考えてます。「紅白芙蓉図」がない期間だったんですね。上野へいらしたついでにウフィッツイも、だったんですね。ウフィッツイ美術館へいらっしゃる時は日本で事前に予約をして行かないと、並んでもはいれなかったりします。ゆったり見れるように人数制限をしているので、入ってしまえば見やすいです。
by TaekoLovesParis (2014-11-20 00:34) 

匁

足利将軍家のコレクションですか?
足利市美術館に所蔵?足利学校に所蔵?見ていないです。

日米野球は日本の4勝3敗で終了しましたね。
何だか、選手も見ている解説者も大リーグ入学予備試験?みたいでしたね。
「この選手は大リーグに通用する」「この選手はまだまだ」
とか!?
親善試合なんだから、大リーグに花を持たせないと。
サッカーでもホンジュラス戦は6-0でしたね。
わざわざ来てもらって恥をかかせて帰らせなくても!

by (2014-11-21 08:56) 

TaekoLovesParis

足利市は足利将軍家の別荘地なんですね。
足利尊氏は京都で征夷大将軍になり室町幕府を開いたので、お宝は、ほとんど全部京都にあります。
三代将軍義満は金閣寺を築き、明との貿易を促進、その孫である義政のコレクションが今回の展示物です。義政は銀閣寺を作った人で、文化・造園方面に興味があったので、資金を投じ、「わび・さび」の東山文化を築きました。一番、文化が華やかな時代でした。

日米野球、アメリカの選手は最初の頃、調子が出ないので、奥さん連れで観光旅行気分で来てる?なんて言われてましたね。でも、大リーグとの交流が多くなり、日米の力の差は縮まっていますね。DeNAから戦力外通告を受けた冨田が、ダルビッシュのいるレンジャーズからマイナー契約のオファーを受けた、っていう話があるほどですものね。

サッカーのホンジュラス戦の日は、久々、遠藤がでたり、昔なじみのメンバーで、シュートがどんどんはいり、見ていて気持ちよかったですよー。対オーストラリア戦は勝ったけど、余裕というほどではなく、ま、そういう方が緊張感があっていいですかね。
by TaekoLovesParis (2014-11-22 11:15) 

moz

足利家ゆかりの御物なのですね。15代将軍義昭で将軍家が滅びて、でも、宝はずっとその後も引き継がれてきたのですね。
戦乱の中、ずっと残ってきたのはすごいです。
今は、子孫の方が引き継がれているのでしょうか? なんとなく気になってしまいます。 ^^;
お忙しいのに、展覧会はきちんといかれているのはすごいです。まだまだ書いて頂けなくてはならないものがたくさんありますね 笑
ぼくはなんとなく気忙しく、その後行けてないです。今年のうちにあといくつかは行きたいのですが。 ^^;
by moz (2014-11-24 10:37) 

pistacci

「油滴天目」茶碗のブルーがすきです。
どこかで見た?と思ったのですが、かつて新国立美術館でみたルーシー・リーの茶碗に似ていたのかもしれません。ブログを通じ、Taekoさんはじめ、たくさんの方たちのおかげで、ちょっぴり知識が増えました。
上野のウフィッツィは見てきたのですがまだ見に行きたいのがたくさん。
帝劇もあるし・・。
Taekoさんには、お世話になりました。しばらくお休みしますが、またいつか、どこかで。
本当にありがとうございました。
by pistacci (2014-11-27 01:13) 

TaekoLovesParis

mozさん、いい所に気づいてくださいました。
足利将軍家からは売りに出され、京都のお寺が所持したり、個人蔵だったりなどで転々とし、今は徳川美術館、開催の三井記念美術館、根津美術館、東京、京都国立博物館などいろいろな所の所蔵で、それらを集めてきての展覧会でした。ひとつの作品が、どのように所有者を転々としたか、辿るのも面白いでしょうね。
もうすぐ12月、気忙しい季節ですね。風邪に気をつけて、忘年会季節を乗り切ってくださいね。
by TaekoLovesParis (2014-11-28 01:36) 

TaekoLovesParis

pistaさん、久しぶりのご登場でうれしい、と思ったら、お休みですか。。
でも、きっと、また、新装開店があること、信じてます。

pistaさんの記事で読んで、私も見たいなーと思っていた福岡市博物館の「金印」、漢委奴国王、がトーハクの「国宝展」で見てきました。見終わって、「pistaさん、私も見たわよ」とちょっと誇らしげに(届かぬ)報告をしてました。
ブルーの青磁のお茶碗、広く開いた形が、ルーシーに通じるところがあるな、と私も思いました。
ウフィツィ、私も行ったけれど、最初にお茶して、時間がなくなり、最後はざっとになったので、もう一度、行きたいって思ってるんですよ。チューリッヒ美術館展も見たいなと思ってます。
帝劇のモーツァルト、年末に大きな楽しみがあるのはいいですよね。劇場もクリスマスモードで、ツリーがあって、華やかになっていることでしょう。

お休み中でも、コメントくださったら、うれしいです。

by TaekoLovesParis (2014-11-28 02:02) 

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