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ボッティチェリとルネサンス展 [展覧会(西洋画)]

Botticheri.jpg

昨年、ウフィッツィ美術館展にたくさん出展されたボッティチェリだが、今回は
「ボッティチェリとルネッサンス」展。有名な「春」や「ヴィーナスの誕生」が来るわけでは
ないけれど、横5.5mの大きな絵「受胎告知」他17点のボッティチェリ作品並びに
同時代の絵画など60点を通して、15世紀ルネサンスの時代を学ぶ展覧会だった。

構成は年代順。
ボッティチェリ(1445~1510)は、フィレンツェに生まれ、フィリッポ・リッピの工房で
3年間修業をした後、ヴェロッキオ(ダ・ヴィンチの師)の工房にも出入りしていた。

ボッティチェリといえば、やはり「聖母子」。
中でも、「聖母子と洗礼者ヨハネ」はイタリアで門外不出の作品に指定されているが、
今回は特別展示。チラシにも使われていた。ところが、この絵だけ5/6までの展示で、
私が行った時はもうなかった。ちゃんと調べとかないと。。
美しいですよね。。
tirashi2.jpg

他の聖母子も美しい。

会場の真ん中の広いスペースが、すべてボッティチェリ。正面奥に5.5mの「受胎告知」。
両側に、「聖母子」が並ぶ。ぜいたくな空間。
大天使ガブリエルが白いユリの花を担いで駆け付けた所。マリアは胸に手を当て、
耳を傾け、眼を伏し、天使のお告げをきいている。大きな絵なので、マリアの表情も
よく見えるし、テンペラなので、淡い色合い。
もとは病院の聖堂の壁画として描かれた。大きさに圧倒され、じっと見ていると、
絵の中の屋敷や外の景色が身近に感じられ、受胎告知物語に入り込んでしまう。

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「聖母子と二人の天使、洗礼者聖ヨハネ」 1468年頃 
23歳の作品。マリアは美しく、慈愛に満ちた表情。マントのフリルが豪華。
天使やヨハネがういういしい。

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背景に景色が描かれた聖母子。同じく23歳の作品。
「聖母子と二人の天使」1468~1469年
キリストはマリアを見つめるのではなく、こちらを向いている。

seiboshi2.jpg

「ケルビムを伴う聖母子」 1470年頃
こんな綺麗な額に入っています。額縁の内側のたくさんの丸は金貨の模様。
両替商組合の注文だったので、金貨の模様。
ケルビムは4方に顔と羽根を持つ天使。マリアの背後のグレーの石仏群のような
もので、トップのチラシの写真だとよく見えます。

kerubimuSeibosi.jpg

ユニークな構図なのが、「キリストの降誕」1473~1475年
馬小屋で幼子イエスに祈りをささげるマリア、ヨセフ、ヨハネ、天井に天使が2人。
横には羊飼い、遠くに東方から来た3博士が見える。

BirthofChrist.jpg

ヴィーナスの絵。(写真なし)「あら!」と思わず足をとめた。
名作「ヴィーナスの誕生」のヴィーナスだけを黒の背景で描いたものだった。

[シャープダイヤル]展覧会の構成は年代順だったので、最初の部屋には、フィレンツェの経済的繁栄を
象徴する風俗画があった。
帳簿をつける男の横で、帳簿を指差し、「ずるしてるんだぜ」とちくる一癖ありそうな男。
kourikasi.jpg

この絵の横には、「両替商とその妻」
どこかで見たような絵、と思ったら、ルーヴル展でもまたお目にかかった。
当時、この絵は人気だったので、画家たちが模写し、たくさん出回ったのだそう。

フィレンツェは、商業が盛んで金融業も栄えていたため、銀行家が自分の邸宅に
飾るために絵画を注文した。「ヴィーナス」も銀行家の注文だそう。
ところが、1492年に最大のパトロン、ロレンツォ・ディ・メディチが亡くなると、ドメニコ会の
修道士サヴォナローラがフィレンツェを支配し、贅沢品や不適格美術品を焼却して
しまう。ボッティチェリはサヴォナローラに心酔していたので、聖母子は憂いを帯びた表情
に変化した。

たくさんのボッティチェリ作品をまとめて見れる良い展覧会だった。[黒ハート]


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コメント 13

hatsu

「受胎告知」、見入ってしまいますね~。
実際に見たら、感動するだろうなぁ。
「キリストの降誕」も、すてき^^
by hatsu (2015-06-18 06:13) 

ひこうき雲

グエルチーノ展、画家の名前は今まで知りませんでしたが、観ることの少ないイタリアのバロック絵画というキャッチフレーズにのって観に行きました。
第一印象は、僕の知っているバロックのように絵の陰影が深く、カトリック的な表現。
ただ、深みのあるブルーの色合いに、ふとフェルメールブルーを思い浮かべました。
そのあと見た解説には、やはりラピラリズリが使われており、高価だが発色の美しいラピラリズリのブルーは顧客にも人気があったというけども、バロックとは言え、フランドル派のフェルメールとイタリアのグエルチーノ。
同時期に人気のあった二人の画家が、同じ絵の具を使っていたのは興味深いです。
絵の表現性、色彩も素晴らしかった。

ボッティチェリの作品が、日本でこれだけ観れるのは貴重、見応えもありました。
受胎告知とヴィーナスは圧巻。
物憂げな瞳の表情、肉感的で透き通る様な肌のボッティチェリ、ワールド全開。
無表情で平坦な、神秘主義に移行した1490年以降の、今迄知らなかった時代を知ることも出来ました。

昨日までイタリアに行っていました。
時間は少なかったものの、ウフィツでボッティチェリ、ダヴィンチの作品を観てこれました。
by ひこうき雲 (2015-06-18 21:41) 

カエル

受胎の告知を受ける瞬間、マリアはどんな気持ちだったんだろう。。。
キリストのカメラ目線?がいいですね。
展示会に沢山行っていると、いろんな所で再会できる楽しさありそうですね♪
by カエル (2015-06-19 15:47) 

nicolas

基本ボッティチェリ好きなのですが、
「高利貸」の、「ずるしてるんだぜー」のヒトコト、ツボっちゃいました!(笑
もう、そのセリフ言ってるとしか思えなくなっちゃった気がします~
by nicolas (2015-06-19 18:14) 

Inatimy

宗教絵画を見るとき、ところどころに金色が使われてて、そいいうところを見るのも楽しいですよね。 後光みたいな光だったり、衣服の袖口や襟の装飾だったり。
あと、ベールなどの布の透け感が好きです。「聖母子と洗礼者ヨハネ」の聖母がかぶってるのとか。
かぶり物で気になるといえば、「高利貸し」の絵のふたり、頭にかぶってるの、独特ですよね。この職業独特の物なのかしら。
by Inatimy (2015-06-19 21:50) 

gillman

二回も行っちゃいました。
by gillman (2015-06-20 11:10) 

シルフ

コレ巡回なしで東京だけやもんね。見たいけど…無理だわ。またイタリアで見ようっと。
by シルフ (2015-06-20 18:53) 

moz

ルネッサンスの絵画を日本で見られる機会はあまりないですよね。
その意味でもこの展覧会は素敵な企画だと思います。ところがまだ行ってない・・・。 ^^; 今週末までですよね。
28日はコンサートがあるからその前にでも行ってこようかなと !!
ボティッチェリ、フィレンツェで、むかーーしですが、2日連続で見てきました。
プリマヴェーラ、ビーナスの誕生はやはり人類の至宝ですよね。そう思うと、日本でボティッチェリが見られるのはとても貴重です・・・行かないと ^^;
by moz (2015-06-22 06:14) 

匁

荘厳さ感じられる大きな絵ですね。
圧倒されたのでは?!

やっとG軍に0.5差、肉薄。
と、言っても貯金ゼロ
あまり、威張られません。これからです。

by (2015-06-22 16:13) 

TaekoLovesParis

匁さん、首位じゃないですか!すごいすごい。
G軍は連敗つづき、そちらは連勝。マートン、ゴメスが元気になると強いですね。
by TaekoLovesParis (2015-06-25 00:40) 

TaekoLovesParis

お返事が遅くなりましたが、コメントありがとうございます。
▲hatsuさん、「受胎告知」、大きいんですよ!あれだけ、大きいと、絵に包まれてしまう感じがします。「キリストの降誕」、ちょうど中央の上に2人の天使がいて、キリストと白い衣装どうしの三角構図になってるから、安定感もありますね。

▲ひこうき雲さん、イタリアでウフィツィにいらしたんですね。それは感動だったことでしょう。ダ・ヴィンチの「受胎告知」はこの絵ほど大きくないけど、遠景の景色に空気感があって、駆けつけました!と膝まずく天使が、ボッティチェリの浮いている天使と違いますね。
グエルチーノ展もご覧になったのですね。荘厳な感じがありましたね。ブルーは空の青しか印象にないのですが、ラピスラズリだったんですか。日本では、鈴木其一の「朝顔」の屏風、青い朝顔が一面にあるのですが、それがラピズラズリと言われてます。きれいなんですよ、朝顔の屏風。

ボッティチェリの絵の変遷を知ると、<無表情で平坦な、神秘主義に移行した1490年以降の>がわかって、興味深いですね。

イタリアで、美味しいものを召し上がっていらしたことでしょう。うらやましいです。

▲カエルちゃん、<受胎の告知を受ける瞬間、マリアはどんな気持ちだったんだろう。。。>→ って、考えちゃいますよね。マリアは胸に手を当て、耳を傾け、、、なんだけど、ここでのように、小さい絵で見ると、卒倒しそうなのかと思ってしまう。だって、大変なお告げよ。
展示会(笑)、そう、あ、また、来てるみたいに、ね。人気があって?何回も日本に来る絵ってあるんですよ。

▲にこちゃん、高利貸の絵、男の言葉が聞こえてきそうなほど、リアルな描写ですよね。ツボだった?他の言葉は思い当たらないわよね。ボッティチェリの描く崇高なマリアさまとは対極の人たち、ね。
*さくらんぼのブラマンジェ、、なんて美味しそうな色。今、作らないと、アメリカンチェリーがなくなっちゃうのに、、忙しい私。。

▲Inatimyさん、宗教絵画はドラマティックなのが多いから、陰影がはっきりしてますね。暗い落ち着いた色の中で金色は効果的ですね。私も衣服のレースの透け感の表現にいつも見入ってしまいます。聖母のヴェールもレースのことが多いですね。
頭巾ね、「高利貸し」の絵の横にあった「両替商とその妻」でも、夫婦とも頭にかぶりものをしていました。当時の流行だったのかしら?

▲gilmanさん、2回いらっしゃるのもわかります。こんなにたくさんを一堂に見れる機会はまたとないかもしれない、ですよね。

▲シルフさん、巡回なし、なんですね。なにわのシルフさんには歯がゆいけれど、イタリアで見る楽しみもありますね。

▲mozさん、5.5mの壁画が来るというのは、あまりないことだと思います。会場構成も上手にできてました。コンサート前に時間が合うといいですね。
プリマヴェーラ、ビーナスの誕生は、門外不出でしょうから、フィレンツェで、2日続きでご覧になったのは、よかったですね。今、ウフィツィは人気なので、予約をしないと、かなり並ぶ「そうです。

by TaekoLovesParis (2015-06-27 00:42) 

staka

無料券をもらって見に行きました。
ボッティチェリの絵はもちろん素晴らしいですが、時代背景なども一緒に展示されていて、よかったですね。
by staka (2015-06-28 14:21) 

TaekoLovesParis

stakaさん、いい展覧会のチケットをいただくと、うれしいですね。
年代順の構成だけど、初めに、ボッティチェリが生まれる少し前のフィレンツェは、とフラアンジェリコなどの絵もあって、わかりやすくなっていましたね。ボッティチェリは、まさに時代を生きた人だったとわかりました。
by TaekoLovesParis (2015-06-29 01:06) 

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