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ルーヴル美術館展 肖像芸術 [展覧会(西洋画)]

国立新美術館へ「ルーヴル美術館展 肖像芸術」を見に行った。
メトロ「乃木坂」駅直結の国立新美術館は、暑い夏の日には外を歩かなくてすむので、
便利。それほどの混雑もなく、ゆっくり見れた。
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ルーヴル美術館展は、これまで何回もあったので、どこに焦点を当てるかでサブタイトルが
ついている。今回は「肖像芸術」というタイトルで、肖像画、彫刻の傑作が展示されていた。


まずは、今から3400年前、エジプト新王国時代の「棺に由来するマスク」
この時代は、本人の顔でなく、「理想化された顔」の画が棺に張り付けられた。
眉と眼の周りは派手な青ガラス製で、暗い会場の中で、人目を惹く。

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ところが、時代が過ぎ、2世紀後半の女性の肖像」 エジプト 
になると、理想化されたものでなく、生前のリアルな顔になる。リアルでこれなら、
美しい人。

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「ボスコレアーレの至宝{エンブレマ型杯}」 イタリア、35~40年頃
カンパニア州ボスコアーレで1895年に発見 銀: 
ボスコアーレはヴェスヴィオス火山噴火で溶岩の下に沈んだ町である。


古代ローマでは、自分の先祖を崇拝する習慣があり、先祖の姿を表現した肖像は、
家の中に大切に飾られていた。この杯の中央の男性が御先祖様。
銀を外から叩き出し、肖像を飛び出させている。飲むときに鼻にぶつかるのでは?
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「ブルボン侯爵夫人次いでブーローニュ伯およびオーベルニュ伯夫人
ジャンヌ・ド・ブルボン=ヴァンドーム(1465~1511)
ランス王アンリ2世の王妃で、夫の死去によりブーローニュ伯、オーベルニュ伯
と結婚したので、タイトルが長い。
等身大の立像だが、俯いた頬はこけ、胸には蛆虫、お腹から腸が飛び出すという
悲惨でグロテスクな姿。病気でこのような姿になったが、本当の墓には、横に
美しい時代の立像が並んでいると説明が書いてあったので、ほっとした。



「アレクサンドロス大王の肖像」2世紀前半
有名な古代マケドニアの王。エジプト、ペルシアを征服し、インドにまで勢力を
拡大したが32歳で病死。こんなお顔だったのね。

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「マラーの死」フランス革命のジャコバン党の指導者マラーの暗殺の場面の絵。
マラーは入浴中。左手に読んでいた暗殺者からの手紙を持ち、右手に返事を書くための
羽ペンを握っている。

<写真なし>

「5才のフランス王ルイ14世」ジャック・サザラン 1643年
わずか5才で国王となったルイ14世の胸像。古代ローマ皇帝ふうの胸像。

「アルコレ橋のボナパルト」グロ 1796年
ナポレオン27才、アルコレ橋の戦いでオーストリアに勝利した時の絵。
軍旗を掲げ軍を率いる強さが現れている。今回のチラシの裏表紙に使われている。
グロは、大作「ナポレオンの戴冠式」を描いた新古典主義のダヴィッドの弟子。
グロもダヴィッド同様、皇妃からの依頼でナポレオンの武闘を称える絵をいくつも
描いている。
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戴冠式の正装のナポレオン1世の肖像」トリオゾンの工房 1812年以降 
トリオゾンは、戴冠式の正装をしたナポレオンの肖像を36点も制作した。
それらは各地にあるナポレオンの事務所に置かれた。ナポレオンは絶頂期だった。
トリオゾンもダヴィッドの弟子で、新古典主義を基本としているが、この絵は
写実的である。

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<写真なし>

戴冠式の正装のナポレオン1世クロード・ラメ 1813年 大理石
部屋の中央に置かれた等身大以上、大きな彫刻。
頭に、ローマの月桂冠、白貂の毛皮には、フランス王室の蜜蜂模様。
彫刻なのに、ドレープや胸元のレースの表現がみごと。


※ナポレオンのデスマスク、かぎたばこ入れなども展示されているので、ナポレオンの
ファンのかたは是非いらしてください。

「フランス王子、オルレアン公フィリップ・ド・ブルボンの肖像」 アングル 1842年
大きな絵。オルレアン公が、自らアングルに注文した作品だが、完成した時には、公は
馬の事故でこの世を去っていた。32才だった。左手が長く見えるのは
アングルの美意識
からだろうか。
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「女性の肖像」(美しきナーニ)ヴェロネーゼ 1560年頃
チラシに使われてる絵。(一番上の写真)
この作品がナーニ家にあったので、「美しきナーニ」と呼ばれているが、女性が
誰なのかはわからないそうだ。衣装が大変に豪華。モデルの頭の小ささが印象的。


スカヴロンスキー伯爵夫人の肖像エリザベート・ヴィジェ・ル・ブラン1796年

ヴィジェ・ル・ブランは、マリー・アントワネットのお抱え画家だったため、フランス
革命後、各地を経由してロシアに亡命、ロシアの宮廷の人たちの肖像を多く描いた。
スカヴロンスキー伯爵夫人は、美貌で有名だった。
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第2代メングラーナ男爵、マルティネスの肖像」 ゴヤ 1791年
「まぁ小さい」と思ってしまう。モデルは当時2才8か月。
無地の背景。シルエットを包む光輪がモデルの存在感をいっそう強めている。
衣装も大変美しい
。サンローランはこの絵を所蔵し、自らのデザインのドレスに
インスピレーションをもらった。
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性格表現の頭像」メッサーシュミット 1771-1783の間 鉛錫合金
作者は、うつ病に悩んでいたので、自らのしかめっ面を作品にすることで、病に
勝とうとした。
この作品は、2011年ルーヴル美術館での「メッサーシュミット回顧展」のチラシにも使われていた。
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「春」アルチンボルド 1573年
アルチンボルドは、人の顔を動物や植物で表現する絵で当時から人気があった。
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気軽に見れる展覧会なので、暑い日中を過ごすには良いと思います

9月3日まで。



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コメント 12

moz

新国立美術館はそうですね、ほぼ外に出ないで行けますよね。
夏の展覧会にはぴったりの場所かもしれません。しかし、本当に暑いです。出かけるの嫌になります ^^;
展覧会、モネが近くでやっているのですが…、なかなか足が向かおうとしてくれません。^^;
今回のルーブルは顔、肖像ですよね。時代の変遷によっても表現の仕方も変わるだろうし、でも、顔と言うことでは焦点は同じだろうし、色んな興味がわきます。アレキサンダー大王のとメッサーシュミットのと、これは見てみたいです。
by moz (2018-08-04 09:25) 

TaekoLovesParis

mozさん、<本当に暑いです。出かけるの嫌になります ^^;>→ 同感!
この夏は出不精になってしまいますね。約束した最低限のものだけ、出かけてます。横浜美の「モネ」、現代絵画と一緒にという面白い企画ですね。
今回のルーヴルは、顔、特に王侯貴族の肖像画と彫刻が中心です。バレエシューズのルイ14世の得意顔の絵には、いつも笑ってしまうけれど、今回もありました。見終わった後で、フランスの歴史の勉強をさせてもらった気がしました。マリー・アントワネットの胸像もありました。 彫刻で見ると、アレクサンダー大王の顔も覚えますね。
by TaekoLovesParis (2018-08-04 22:56) 

Inatimy

この中で一番印象的だったのが「ボスコレアーレの至宝{エンブレマ型杯}」。
パッと見た瞬間に思ったのが、リングスタンドみたいだな・・・と。 
ご先祖様に指輪をかけて置いてたら怒られますね^^;。
しかし、この杯に赤ワインを注いだとしても、そこからにゅっとご先祖様が出てるのも、
湯船に浸かってるようで、なんだかねぇ・・・見つめられてると使いづらいですよね。
by Inatimy (2018-08-06 05:57) 

TaekoLovesParis

Inatimyさん、エンブレマ型杯、リングスタンド、そうね、ネックレスでもかけられるし、アクセサリー用ならいいのにねー。<湯船に浸かってるよう>
ワイン風呂、、(笑)Inatimyさん、面白い。
実際に抱え持ち、飲むとしたら、ご先祖様の顔に鼻がぶつかるのでは、、って思えました。
by TaekoLovesParis (2018-08-06 08:39) 

coco030705

こんばんは。
肖像芸術という展覧会は珍しいですね?国新は好きな美術館なので、行きたいです。
いい肖像画の数々、すばらしいですね。この中でも、私はナポレオンの肖像画に目が行きました。かなりのハンサムですよね。実際もこんなにいい男だったのでしょうか。ちょっとナポレオンの実際の顔が知りたくなりました。

by coco030705 (2018-08-08 00:35) 

yk2

アングルの『オルレアン公』はこうして写真でこんなふうに並べてみるとぱっとしないのに、会場では断然輝いて見えましたね~。やっぱり肖像画って分野では頭一つ抜けて上手いな、と。左手が長いのは、やっぱりアングル独特の世界観。ちょっとだけ、真実からずれた創造の美。僕はつくづくアングル好きだなぁ~とこの絵で再認識いたしました(^^。
by yk2 (2018-08-08 01:55) 

TaekoLovesParis

cocoさん、おはようございます。
ルーヴル展のせいか、ナポレオンには一部屋が与えられ、肖像画2枚に等身大以上の大きな白亜の彫刻、デスマスク、などがあり、見ごたえがありました。
ナポレオンの肖像画では、ここに出した写真の白い正装のほうが本人に近いです。軍旗をはためかせて指揮をとる絵の方は顔がかなり良く描かれてます。あごの感じがフィギュアスケートの前の王者ロシアのプルシェンコに似てる!と思いました。
この展覧会、巡回します。9月22日から1月14日まで大阪市立美術館ですよ!
by TaekoLovesParis (2018-08-08 08:31) 

TaekoLovesParis

yk2さん、こうやって絵の写真を並べると、実際の大きさがわからないのが難点ですね。この絵は、等身大に近い大きさでしたものね。本人からの注文の肖像画。アングルは肖像画の名手として評判だったから来た注文でしょうね。軍服の正装ですが、お顔は穏やかで知性と品があり、亡くならず、王様になっていたら、良い治世だったのでは、と思われます。
グランド・オダリスクの背中の長さほどでないにせよ、右手、長いですよね。
この長い右手で細身の体が強調されてると思えました。
by TaekoLovesParis (2018-08-08 08:48) 

nicolas

「アルコレ橋のボナパルト」、若かったからなのか、
実際盛ってるのか、ちょっと気になります。
この肖像画描いたグロさん、この絵を描いてご贔屓にして頂いたとか?!
グロさん自身の肖像画、さっき検索して観てきたのですが、可愛い方ですねー

by nicolas (2018-08-10 16:58) 

coco030705

Taekoさん、情報有難うございます!大阪に巡回するので、ぜひ観に行きます。♡

by coco030705 (2018-08-10 22:47) 

moz

本当に必要最低限だけになってしまいますよね ^^;
休みの間に展覧会行こうと思っているのですが…イケルカナ ^^;;
by moz (2018-08-12 09:25) 

初夏(はつか)

「性格表現の頭像」、印象的!
自分自身を芸術として表現するって、奥深いですね^^
by 初夏(はつか) (2018-08-16 16:00) 

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