みんなのアムステルダム国立美術館へ [映画 (美術関連)]
「みんなのアムステルダム国立美術館へ」
ステイ・ホームが推奨されている今、家でDVDで見た。
2008年公開の「ようこそアムステルダム国立美術館へ」の続編。
ステイ・ホームが推奨されている今、家でDVDで見た。
2008年公開の「ようこそアムステルダム国立美術館へ」の続編。
アムステルダム国立美術館は、17世紀オランダ絵画が充実している美術館で、
フェルメール、レンブラント、フランツ・ハルスなどの作品が何枚もある。
フェルメール、レンブラント、フランツ・ハルスなどの作品が何枚もある。
レンガ建ての重厚な建物は、アムステルダム駅と同じカイパースの設計だが、
かなり痛んできたので、改修工事で当初と同じ華麗さに復元することになった。
工事は、2004年に始まり、2008年に終わる予定だったのに、なんと開館は
2013年。10年もの工事だった。なぜ、そんなに延びたのかを記録したのが
、この映画である。
かなり痛んできたので、改修工事で当初と同じ華麗さに復元することになった。
工事は、2004年に始まり、2008年に終わる予定だったのに、なんと開館は
2013年。10年もの工事だった。なぜ、そんなに延びたのかを記録したのが
、この映画である。
(美術館の正面、2003年3月に行った時の写真)
美術館の中央を公道が走り、自転車で通り抜けできるようになっているが、
新しい美術館のスロープをつける案では、自転車の通る部分が狭くなるため、
サイクリスト協会が猛反発。両者の歩み寄りは全く見られず、話し合いは、
いつまでたっても平行線で、工事は中断。
ここまでが前作。
新しい美術館のスロープをつける案では、自転車の通る部分が狭くなるため、
サイクリスト協会が猛反発。両者の歩み寄りは全く見られず、話し合いは、
いつまでたっても平行線で、工事は中断。
ここまでが前作。
本作は、前作のおさらいから始まる。
館長が辞任。新館長のもとで、市民団体、建築家、内装担当者、警備員、学芸員
らも開館できるのかと危機感を覚え、話合いで少しずつ妥協点を見つけていく。
「もう6年もこんなことやってるのよ」という内装担当の女性の嘆き。
このチラシの写真のように大勢の人が関わっている。
館長が辞任。新館長のもとで、市民団体、建築家、内装担当者、警備員、学芸員
らも開館できるのかと危機感を覚え、話合いで少しずつ妥協点を見つけていく。
「もう6年もこんなことやってるのよ」という内装担当の女性の嘆き。
このチラシの写真のように大勢の人が関わっている。
建物への議論が沸騰している中、見ていてほっとするのは、アジア担当学芸員メンノさん
の存在だ。若く情熱に燃えているメンノさんは、アジア館の模型を作り、どこに何を展示
しようと考案中。日本の金剛力士像に魅せられている。
なんと、2mある対の金剛力士像が美術館に到着。梱包を解くところが映し出される。
メンノさんのほっとしたような笑顔。
数年前、メンノさんは、画商から購入した金剛力士像が元、置かれていた場所を見たくて、
島根県奥出雲町の廃寺となった岩屋寺を訪ねた。今や誰も行かない山の奥、廃墟の中に山門が現れる、
その時の映像が映し出された。
「芸術作品は、自分の身を守る術を持ち合わせていない。廃寺となった岩屋寺を訪ねてみて
そう思った」とメンノさんは語っていた。
の存在だ。若く情熱に燃えているメンノさんは、アジア館の模型を作り、どこに何を展示
しようと考案中。日本の金剛力士像に魅せられている。
なんと、2mある対の金剛力士像が美術館に到着。梱包を解くところが映し出される。
メンノさんのほっとしたような笑顔。
数年前、メンノさんは、画商から購入した金剛力士像が元、置かれていた場所を見たくて、
島根県奥出雲町の廃寺となった岩屋寺を訪ねた。今や誰も行かない山の奥、廃墟の中に山門が現れる、
その時の映像が映し出された。
「芸術作品は、自分の身を守る術を持ち合わせていない。廃寺となった岩屋寺を訪ねてみて
そう思った」とメンノさんは語っていた。
この美術館の一番の人気作品レンブラントの「夜警」も、どこに展示するかなど、
展示場所についても意見がたたかわされる。絵画部長は金髪のサンローラン風メガネ
のターコ・ディビッツ。この人は、2月26日から公開の「レンブラントは誰の手に」
にも出演している。
工事中の部屋、壁にかけてあるのは夜警の模写
展示場所についても意見がたたかわされる。絵画部長は金髪のサンローラン風メガネ
のターコ・ディビッツ。この人は、2月26日から公開の「レンブラントは誰の手に」
にも出演している。
工事中の部屋、壁にかけてあるのは夜警の模写
10年もの間の経緯を撮ったのは、女性監督ウケ・ホーヘンダイク。
冗漫にならずテンポよくすすむ。修復作業、展示品の購入、オークションでの落札と
いった美術館ビジネスをきちんと描いている。
冗漫にならずテンポよくすすむ。修復作業、展示品の購入、オークションでの落札と
いった美術館ビジネスをきちんと描いている。
最後には、ようやく開館にこぎつけ、女王をお迎えして花火があがる。
見ている方もほっとした。
開館行事として、アジア館の金剛力士像の開眼供養を京都から招いた僧侶たち
が行う場面もあり、日本人としてはうれしい。
付録:この美術館の人気作品は、
レンブラントの「夜警」「青年期の自画像」「ユダヤの花嫁」
フェルメールの「牛乳を注ぐ女」「手紙を読む青衣の女」
フランス・ハルス「陽気な酒飲み」、ヤン・アセレイン「威嚇する白鳥」
ファン・デル・ヘルストの「ルーロフ・ビッカー隊の肖像」
チラシの絵は、フェルスプロンクの「青い服を着た少女」 オランダでは人気がある絵だそう。
金剛力士像についての話の詳しいことは、こちら
映画その後:
実際、どんなふうに改装されたのかは、オランダ在住のInatimyさんの美術館訪問記事をご覧ください。
実際、どんなふうに改装されたのかは、オランダ在住のInatimyさんの美術館訪問記事をご覧ください。
アムステルダムつながりで。
レンブラントの「夜警」は見た記憶があるので、やっぱりオランダの国立美術館に行っていたのですね。でもフェルメールの「ミルクメイド」は東京で数年前に見たな。結局記憶が定かでないとは情けない。
by やまびこ3 (2021-02-16 18:44)
やまびこさん、そちらのアムステルダムの写真、見せて頂いて、懐かしかったです。この記事で「夜警」を見たと思い出してくださって良かったです(笑)
「牛乳をそそぐ女」=ミルクメイドなんですね。新国立美術館での展覧会は、この映画の時期、つまり改装中だったので、貸してくれたのです。
私も記憶できない、すぐ忘れるので、記事にしておいてるのです。
by TaekoLovesParis (2021-02-17 00:19)
ひとまず先にお返事だけで・・・「フリフリなおじさまと再会」へのリンク、どうぞ^^。
ちょうどさっき、上記の二つの映画の予告動画探してみていたところです。
また後でコメント書きますね。
by Inatimy (2021-02-17 01:16)
この作品、僕にはとっても面白かったです!。
なんかね、ドキュメンタリーで生々しいんだけど、それなのにドラマみたいな。いつの間にやら、これには準備されたシナリオがあって、フィクションで俳優さんがセリフとして喋ってるんだっけ?って錯覚してしまう様な。例えば、新館長になり損ねたキュレーターさんなんかまるで実際の映画俳優みたいに2枚目なんだけど、結果は「あれれ・・・(^^;」って、ある意味予想通りの結果を迎えて物語のアクセントになっていたりして(笑)
日本版のタイトルに「みんなの」って入ってるのは、痛烈な皮肉なんですね。全編通じて、一体誰のための美術館なの?って問いかけがテーマになってるんだけど、結局誰しもが自分の立場でしか物を云わない、考えない、で延々話がまとまらないし、一度決まったことでさえ議会で審議ににかけられても承認されない。これこそアムステルダムって街の人間の気質だよね~なんて云っては苦笑いするしかない。実際のところそう云うもんなのか、いなちみ~現地特派員に是非解説して欲しいですね(笑)。
建物の正面デザイン論争も、ルーヴルに負けない建築を!とあくまで芸術性に拘る美術館関係者と、「美術館は美術品を見に行くため場所で、入り口を観に行くもんじゃない!」とってサイクリストの主張も、実は2体の仁王像に絡めて「阿吽 あ・うん」って言葉の意味に象徴的に掛けられているのかなぁ。物事の入り口と出口、始まりと終わりって意味で。
声高に自分の主張ばかりで我欲を通したがる人々と対比させるように、仁王像や仏像の静かなる映像を通じて、仏教の「悟り」や「無私」の心を、何1つ説明やナレーションを挟むことなく淡々と挿入する。この映画の監督さん、あくまでも、描く真意は「行間読んでね」って感じで、僕は好きですね(^^。
by yk2 (2021-02-19 00:08)
面白そうな映画です。予告編しか見てないのにあれこれ語るのもなんですが・・・オランダあるあるだなぁと。道路や住宅の工事も日本に比べると進むのが遅いし、デパートの改装工事でも当初のオープンから1年くらい遅れたり。
政治もそうで2017年の3月の選挙からやっと連立交渉がまとまってルッテ首相の第3次内閣発足したのがその7ヶ月後の10月。そのルッテ首相、今年1月に辞任して、選挙がまた3月にあるんですが、今度もまた政権樹立に何ヶ月もかかるのかなぁと・・・。
アムステルダム国立美術館の近くにアムステルダム市立美術館(近代・現代のアート、デザインの)があるんですが、そこも同じ感じで映画ができそうなほど延々と長く。2003年の終わりに建物老朽化で消防からの閉鎖を受けてから、何回も再オープンが延期され、実際に再オープンしたのは2012年の秋。建築家が変わったり、空調設備か何かの設置の遅れとか、請負業者の破産で建設工事が中断とか、山あり谷あり。そこは北側は煉瓦造りの元の建物を生かしつつも、南側はバスタブみたいな外観。このデザイン、私はあまり好きじゃないけど^^;。ちなみに我が家がオランダにやってきた当初は、国立美術館は2008年、市立美術館は2006年再オープン予定でした・・・。
国立博物館の入り口、私もあんなところに階段とかスロープができるのは反対かも。あそこは前からかなりの自転車が通るので、工事で通れなくなるとかなり遠回りしなきゃいけないんですよ。それでなくても慣れてない観光客が自転車専用道路に出てきて歩いたりするので、階段とかスロープで自転車の通るスペースが狭くなるのはねぇ・・・。映画の中であったけど「アムステルダム市民による、市民のための美術館を作るのだ」というからには、地元民の声を聞くのは必須ってことになりますよね。今でも夏場はあそこ、人が多くて入館の行列ですもん。
ちなみに工事中で、かなり展示スペースが縮小されていた時に何度か国立美術館に行きましたが、正規の入場料で強気だったのには驚きました。その後、パリに引っ越して、戻って来た年がちょうど完成で、再オープンした日の10日後くらいに行き、6時間見て周りましたが全部見切れず、数週間後に再度行き、5時間。もう、工事期間中の縮小展示が米粒くらいに感じられました、あの時は2時間で全部見られてたし^^;。
メンノさんの推しの金剛力士像・・・見逃したかも。シヴァ神は見た記憶があるけど・・・と思って、写真を見返してたら、Kamoさんがしっかり撮っててよかった^^。
by Inatimy (2021-02-19 19:40)
金剛力士像が、日本の廃寺からアムステルダムに運ばれ、アムステルダム国立美術館が終の棲家となったという物語が、すごく興味深かったです。
メンノさんが、わざわざ廃寺の岩屋寺まで行かれたとは、この方の美術に対する深い愛情を感じ、感激しました。すばらしい仏像が救われたのですね。本当に良かったです。この美術館にぜひ一度行ってみたいです。
by coco030705 (2021-02-19 23:49)
nice&コメントありがとうございます。
▲cocoさん、興味を持って読んでいただけてうれしいです。
メンノさんはとことん、仏像にほれ込んでいるんですね。だから、詳しくいろいろ調べ、仏像が別の人の手に渡ったときは、仏像が出来た時と同じに「開眼供養」をして、魂をいれなければいけないと知っていたのですね。だから、供養の行事が盛大に行われたのでしょう。
再開館がどんどん伸びて仏像が倉庫に置かれているとき、仏像に「きみたちはこんなところにいるべきでない。早く皆に見てほしい」と話しかけていたのが印象に残っています。
by TaekoLovesParis (2021-02-20 18:31)
▲yk2さん、コロナ禍の際、あまり深刻なものを見たくないし、この美術館には2回行ったから、建物に馴染みもあるし、軽く見れて面白いのでは、と選んだけれど、ここに行ったことのある無しはあまり関係なかったですね。yk2さんがおっしゃるように、人間ドラマでした。だから、すぐ話にのめりこめる。
どの人も本音セリフなのでが面白い。次の館長は自分?って言う二枚目氏は17世紀美術部長。おしゃれな服装で、てきぱき展示を指示。「かっこいい」って気にいっちゃいました。
担当者はそれぞれ、自分の意見を譲らない、会議に次ぐ会議。民主主義というのはこうなんだ、と思わせられました。自分=みんなの中のひとりという強い権利意識。そうね、Inatimyさんに実情を伺うのがいいわね。
前館長が日本人画商から金剛力士像を「あ・うん」と説明され、「アルファ、オメガね」と言ってたし、「入り口と出口」、なるほど、私はそこに気づかなかったです。仏像の「静」と市民運動家たちの「動」の対比も合点。この映画はセリフで話をすすめてますね。取り上げてる場面、エピソード(金剛力士像、眼玉作品「夜警」など)が適切で、10年分をテンポよく見せてくれました。<行間を読んでね> → 今、考えるとその通りです。
前作も見たくなりますね。
by TaekoLovesParis (2021-02-21 00:01)
▲Inatimyさん、yk2さんの依頼にお答えくださって有難うございます。
こういうのは、オランダあるある、、なんですね。え~っ、市立美術館、自転車道が貫いてなくても、いろいろ問題勃発で、同じくらい長い改装だったんですね。その美術館で、現代アートに興味を持ち、売店で「The 20th-Century Art Book」を買い、今も私の参考書です。
たしかに国立美術館は横に長いから、建物の真ん中を通れないと、かなりまわることになりますね。入館のための行列は、あの自転車道に、なんですか。それは狭くなるし、危ないですね。自転車と歩行者の共存は難しいですよね。
InatimyさんのRIJKS訪問記事が出た時、どんなふうに変わったのかしらと興味津々で読んだんですよ。工事期間中に縮小展示があったんですね。正規料金なのは、観光客目当てかしら。日本人だったら、「夜警」とフェルメールだけでも見たいという人が何人もいると思うわ。まともに見ると6時間でも終わらないんですね。私もお昼をカフェテリアで食べ、3時にケーキを食べ、また見るという2度カフェテリアで休んでの一日コースでした。ルーヴルより見やすいと思いました。
メンノさん押しの金剛力士像を日本に買い付けに来た元館長(辞任した人)は身長2mある人で、日本の駅構内を歩く姿は目立っていました。金剛力士像が来る日を待ちながら、ミニチュアを作って展示方法を模索していたメンノさんは、金剛力士像と同じ背丈の館長のミニチュアも作って並べてみていました。悪戯っ子みたいで微笑ましかったです。Kamoさんが写真を撮ってくださってたのですね。Inatimyさんは気づかなかった?(笑)
by TaekoLovesParis (2021-02-21 18:42)