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上野リチ展 [展覧会(絵以外)]

三菱一号館美術館で開催中の「上野リチ展」、15日(日)までで、時間帯によっては
入場制限もあるので、ホームページで確認してから、お出かけください。
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長引くコロナ、ロシアのウクライナ侵攻と、不安が拭えない日々。
ほっと一息つきたい時に眺めていたいレトロな「かわいい」デザイン。
それが上野リチのデザイン。彼女は1893年生まれ。今から130年前。
ウィーンの裕福な家庭に生まれたリチ(Felice Rix)は、ヨーゼフ・ホフマンと
コロマン・モーザーによって設立されたウィーン工房に学び、卒業後は、
工房で布や日用品のデザインを手掛けていた。花、鳥、魚などをモチーフにした
生命感あふれる色彩のかわいいデザインは人気があった。 
             ↓ 当時の作品 ↓

リチでざいん1.jpg


リチは、当時ホフマンの建築事務所で働いていた京都出身の建築家・上野伊三郎と
結婚した。伊三郎と共に京都に住んだリチは、しばらくの間、京都とウィーンを往復する。
ウィーン工房の仕事を続けていたからである。

リチでざいん2.jpg

リチは自分の作品を「ファンタジー」と言っていたそうだ。かわいさ満載。
左上の図は、スキー手袋。大きな花が真ん中に。全体は木の形。手首の所は
ウィーンだからか、チロリアンテープふう。
右上のプリント生地のデザインは代表作で、記念撮影用のパネルに使われていた。
(一番上の写真)

250リチでざいん3.jpg

「そらまめ」1928年

250りち_そらまめ.jpg


面白かったのは、金箔の屏風絵「花鳥図屏風」。日本画の花鳥図でなく、
幾何学的模様で構成された花鳥図。「こんな屏風見たことない」だった。
ウィーンと京都を往復するリチならではの「西洋と日本の合体」である。


リチは、建築家の夫・伊三郎と共に、建築事務所を開設し、個人住宅や
店舗のインテリアも手掛け、斬新な空間構成は注目された。
伊三郎は、ブルーノ・タウトを招へいし、群馬県工芸所の所長に任命、
リチも嘱託職員として働いた。

1930年にウィーン工房を退職したリチは、群馬県の仕事と並行して、
京都市染織試験場の技術顧問となり、輸出用のプリント生地のデザインや
七宝を使った小物のデザインをした。

りちインテリア.jpg

リチ箱七宝.jpg


1950年代以降、第二次大戦後、リチ夫妻は、京都市立芸大で教鞭をとり、多くの
優秀なデザイナーを育てた。
最後の部屋に、晩年のリチがデザインをまかされた、日比谷の日生劇場のレストラン
「アクトレス」の内装の実物大の写真があった。このレストランは予約をしておくと、
劇の幕間の30分間くらいで食べられるよう、座るなり料理の皿が運ばれてきたので、
いいシステムだなと思った。角の端の席だったのは覚えていたが、内装を思い出せ
なかったので、写真を見ればわかるかと思ったが、、、あやふやなままである。


展覧会のグッズを売る部屋がでは、レジの前に長い列が出来ていた。
「そらまめ」のファイルを買った。もとのデザインから抜き出して大きくしたもの。

リチファイル.jpg


考えてみれば、19世紀から20世紀、激動の時代、戦争の時代だったのに、
リチのデザインは明るい色彩で、私たちを元気にする。しかも100年も前に
日本とウィーンを往復して仕事をする、キャリア・ウーマンのはしりだった。
仕事を続けながらも、後進を育て、、、
帰り道には、そんな上野リチの人生も気になった。

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yk2

ほとんどリチに対する知識ゼロだったんですが、ウィーン工房、モーザーとホフマンの教え子ってキーワードだけで僕も観に行きました(^^。

以前三菱一号館で観た『Katagami Style』展でもウィーン工房絡みの作品が在ったのが記憶に残っていて、テキスタイル部分などはその延長線上にあるのかなぁ?なんて勝手な想像を巡らせて臨みましたが、実際のリチの作品はもっと手描き風で、草花に溢れた絵本のように愛らしいものでした。モーザー好きの僕としてはちょっと路線が違ったなぁ~と軽く(かなり?)戸惑いつつ(笑)、ああ、それでも昔に母がこんな感じの生地のブラウスだかワンピースを着ていたような気が・・・なんて具合に、ほんわりとした懐かしさを感じさせてくれて、何だか穏やかな気持ち(^^。女性ならでは、なんて云い方をすると今の時代は色々と意見も有るのでしょうが、柔らかく、優しいデザインが多いように感じました。実際、展覧会場はほとんど女性ばっかりでしたし(^^;。

中でも僕は七宝作品が特に気に入りました。taekoねーさんが写真を載せてらっしゃるサーカスも楽しい作品ですが、僕は飾箱『すずらん』を。草花モチーフなので、これを本で並河靖之の作品と見較べてみたりしてね。もちろん、両者は全く違う表現なわけですが、そんな中にも何かが通底するようにも思えて、リチも並河の作品を見知っていたかなぁなどと想像してみたりして(^^。
by yk2 (2022-05-14 13:38) 

ふにゃいの

上野リチ展、ネットで見つけて
行きたいと思いましたが結局行けてないです。
植物や動物モチーフのデザインは
やっぱりかわいいですね。
いろんなことに使えそうで、
まさにグッズにしたらいろいろ買いたくなるでしょうね。
by ふにゃいの (2022-05-14 14:43) 

coco030705

こんばんは。
上野リチさんのデザイン、ほんとに明るくてセンスがいいですね。何年たっても残り続けますね。
私は偶然、京都国立近代美術館の売店で、上野リチさんの一筆箋を買いました。ただ絵のデザインが、好きだったからです。その時は知りもしなかったのですが、あとで別の場所でリチさんのデザイン画をみて、私が買った一筆箋のデザインと同じだ!と思ったのです。残り少なくなってきたので、また美術館へ行ったら買おうと思います。
by coco030705 (2022-05-14 21:18) 

ナツパパ

なるほどファンタジーですね、色遣いがきれいです。
個人的には、そら豆の色とデザインが好きかな。
by ナツパパ (2022-05-15 14:26) 

Inatimy

ウィーン工房っていうとなんとなく、くすんだシブい色系のデザインのイメージがあったんですが、上野チリさんのは色が明るくて、北欧デザインっぽさにつながる感じもしますね。
「そらまめ」すごく好みです^^。ふと以前コペンハーゲンで観た"Wallpaper of its Time Danish Artists' Wallpapers 1930~1965"の展示を思い出しました。
by Inatimy (2022-05-16 17:06) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます。お返事遅くてすみません。
▲yk2さん、この展覧会にいらしたんですね。私は連休中に行ったのですが、会場は、「かわいい」が好きな若い女子が大半で、楽しんで見ている様子でした。

人気デザインも、次の時代には、古くさいと見向きもされず、しばらくすると、目に新鮮に映る、それは受け手の年代が変わっていくからかしら、と思ったりもしました。最近、リバティプリントのブラウスを久しぶりに各所で見かけますもの。
ウィーン工房出身のリチ作品に、モーザーやホフマンの幾何学的な伝承は見られなかったけれど、女性ならではの優しく軽やかな視点でのデザインはテキスタイルにぴったりでしたね。上から2番目の2つのデザインは、和服にしても良さそうな柄だと思いました。

飾箱『すずらん』は、「これが、すずらん?」と思ったので覚えてます。
同く京都に住み、七宝の第一人者の並河靖之ですから、リチも七宝を始めるにあたっては作品を見ていたはず。写実的な並河の草花表現とデザインの大胆さは、リチの画風と異なるけれど、参考になったと思いますが。。
次、京都に行ったら、小川治兵衛作庭の並河靖之記念館に行ってみたいと思ってます。

▲ふにゃいのさん、グッズ売り場は、展覧会場の倍くらい混雑していて、レジ前に長い列でした。ここに写真はのせてませんが、小さい象にシャムの子供がのって整列しているプリント、とっても可愛かったです。かわいいプリント地で作った簡単な布バッグを売ってたらと思ったのですが、ありませんでした。
帰りの電車で、展覧会を振り返りながら、楽しい休日だったとと満足ででした。

▲cocoさん、気に入ってお買いになったのが、リチの一筆箋だったとは、ちょっと良いお話、やっぱり目に留まるかわいいデザインなのですね。

▲ナツパパさん、ファンタジーなものを見た後は、ふわっと心地よい気分になります。原色を多く使っても下品にならない所がみごとですね。デザインも何気なく見えますが、計算されているのでしょう。ソラマメは私も気に入り、部屋のカーテンにほしいと思いました。

▲Inatimyさん、たしかに、リチの色合いの明るさは北欧っぽいですね。でも、デザインの細やかさに和風なものが伺えたりします。私も「そらまめ」柄の窓用カーテンがほしいと思いました。そらまめが這うツルのようす、スイトピーに似た花の感じが以前、植えていた「さやえんどう」を思い出します。
Inatimyさんのコペンハーゲンの記事、たくさんあって、壁紙があった美術館を見つけられませんでした。
by TaekoLovesParis (2022-05-22 13:53) 

Inatimy

すみません、記事、探していただいたんですね。
コペンハーゲンの壁紙の記事のタイトルは「目の前の壁に何がある?」です^^;。
私も自分の記事を、最初、展覧会名で探したんですが、
なぜか検索しても出てこなかったです・・・。
by Inatimy (2022-05-22 16:08) 

TaekoLovesParis

Inatimyさん、ありがとう!
そう、これ、私も記憶にあった記事。もう一度、読めて(見れて)、よかったです。中でも「Water Lilies ウォーター・リリーズ 1952年」は、リチの作品と言っても通るのでは、と思えるほどです。テキスタイルなので、布地を意識して、会場で何点かは、90㎝幅のロールで上から垂らしてあったので、まさに壁紙でした。年代的にも近いですね。童話モチーフのかわいい壁紙の絵も、上野リチ展にも、「こんなのあった」というイメージです。上野リチ展を体験してから、もう一度、Inatimyさん記事を読むと、よく理解できて、とても面白かったです。きちんと書いていらっしゃるから、皆さんの役にもたつことでしょう。
by TaekoLovesParis (2022-05-23 07:43) 

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