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鈴木優人 バッハ、ピアソラを弾く [オペラ、コンサート、バレエ]

鈴木優人2.jpg


鈴木優人は、指揮者で鍵盤奏者。パイプオルガン、チェンバロ、ピアノ、キーボード
と鍵盤楽器を何でもこなす。ご尊父は、著名なパイプオルガンの名手鈴木雅明氏。
友達が「鈴木雅明のパイプオルガンコンサート、行ったことあるわ。え~、もう息子さん
の時代なのね」息子の多芸さは父君以上で、このコンサートではタンゴバンドと共演した。


鈴木優人は、1981年オランダ生まれ。父は当時、アムステルダムの音楽院でチェンバロと
オルガンを学んでいた。親子とも得意なのはバッハで、バッハの曲を演奏するバッハ・コレギウム
を結成している。
今回の会場、渋谷のオーチャードホールはパイプオルガンを持っていないので、この日のために
簡易パイプオルガンが舞台に設置され、チェンバロ、ピアノが同じ舞台の上にあった。

第一部はバッハ中心。pipeOrgan.jpg
「トッカータとフーガ」から始まる。タラ・ラーン.....ジャー~ン
サントリーホールの立派なパイプオルガンの長い残響とは違うが、バッハの時代は、
これくらいの感じだったそうだ。調律もそれに合わせてるとのこと。
バッハ3曲のあとは、チェンバロを演奏。クープランの「神秘的なバリケード」は、
単純なメロディが基本だが多様な変奏が楽しい。
ラモー「めんどり」は、コッコッコッコと本当にそこにめんどりがいるかのよう。チェンバロならでは
の曲。武満徹の「夢みる雨」、これも軽やかな雨粒のようすが伝わってきた。
その後、クープランのミサ曲とバッハの小フーガ。

第二部はタンゴバンドとの共演。
BandNeon.jpg
鈴木優人は、ある時、後輩にあたる芸大の学生「鈴木崇朗」に会い、
「同じ鈴木ですね」というと「僕は鈴木3人でタンゴ・トリオをやってるんです」
それは面白い。今度4人の鈴木でコンサートをやりましょうというきっかけだそう。
なので、この日のコンサートは出演者全員鈴木さん。


バッハ「フーガの技法」ではじまる。この曲は、鍵盤楽器で演奏するように
されていながら、オープンスコアで他の楽器でも演奏できるので、主題とその模倣が
繰り返されるフーガは、テーマ+アドリブのJazzには丁度良い。
鈴木優人は、「僕がチェンバロを弾くので、順番にインバイトしてみましょう」
インバイト、これがもうジャズのノリ。
ソプラノサックスとチェンバロ。チェンバロの楚々として美しい音を追いかける
サックスがクラシックの金管楽器の音色で、格調高い演奏。次はギターが呼ばれた。

鈴木優人は、MCも上手い。簡潔で的を得てる。もっと話しててもいいのにと思うが、
すぐに楽器に戻ってしまう。
バンドネオンは、その昔、アルゼンチンに宣教に行く人たちが、パイプオルガン
を持って行かれないので、音色が似ているバンドネオンを持って行ったのだそう。
「パイプオルガンとバンドネオンのフーガ、音色が似ていることを確認しながら
聞いてください」まさにその通りだった。
この日は、ピアソラ特集で、ブエノスアイレスの春、夏、秋、冬を演奏。
私が好きな「リベルタンゴ」は、最後の曲で、鈴木優人は、ピアノを担当。
体をゆすって鍵盤を叩く姿、音は、まさにジャズメンだった。
八面六臂の活躍ぶり、Bach to Piazollaのタイトル通りの素晴らしいコンサート。
同行の友だちが「これで7千円は安いわね」と終わるなり言った。







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yk2

持ってるバッハ集の演奏者はキース・ジャレット、ラモーの名を知ったのはボブ・ジェームズのCDから・・・なんて具合の僕(^^;なので、こう云うジャンルを横断して自由にクラシックやジャズを行き来する音楽の話には俄然興味が湧きます。すっごく面白そう!(^^。

僕の中ではイメージとして全く繋がらなかった両者、敬虔な教会音楽を奏でるに必要なパイプオルガンと、その代わりにアルゼンチンへ移民するヨーロッパ人たちに持ち込まれたバンドネオン。当初の宗教イメージはどこへやら(笑)、背徳的なまでに激しく燃え上がるようなピアソラのタンゴに欠かせぬ最重要ツールへと昇華して行ったその課程、理由がこのコンサートから見えて来そうな気がして、とても興味深いです。

そう云えば、コロナで結局行けなかったけど、去年はピアソラの生誕100年に当たっていて、ジャズ・アコーディオン、バンドネオン奏者のリシャール・ガリアーノが来日、ピアソラに因んだコンサートをする予定だったんですよね。DVDで持ってるんですが、彼が女流ジャズ・バイオリニストの寺井尚子と東京で共演した際の『リベルタンゴ』がとてもとても素晴らしい演奏なんです。その再演が予定されていたので、是非ともライブで観てみたかったんですが・・・(T^T)。
by yk2 (2022-07-10 09:24) 

ナツパパ

これは愉しそうなコンサートですね。
寛いで演奏と音楽を愉しめそうです。
こういうコンサート、行きたいなあ。
by ナツパパ (2022-07-10 10:04) 

おと

こういうジャンルを超えたコンサート、とても好きです。
ピアソラ特集、格好いいだろうな~。
バッハって、実験的でジャズっぽいと言われていますよね^^
by おと (2022-07-11 05:09) 

coco030705

こんばんは。
私はチェンバロの音色が好きなんですが、このコンサートは全く型にはまらない、実験的なコンサートなのでしょうか。チェンバロとソプラノサックス、どんな演奏か、聴いてみたいものです。
バンドネオンはアルゼンチンタンゴに欠かせない楽器ですね。以前、BSでアルゼンチンタンゴのドキュメンタリーを放映していましたが、あちらの人は、小さいころから踊っているのですね。ピアソラの名前も確か出てきたようにおもいます。
by coco030705 (2022-07-12 23:19) 

TaekoLovesParis

yk2さん、キース・ジャレットがバッハを弾いてるとは知らなかったです。
Youtubeで、平均律クラヴィーアとインベンションをきいてみました。
テンポが速くて、リズミカル。端正な演奏。ついでにジャック・ルーシェも聞いてみると、知ってるメロディが多く、ヴァイオリンの曲G線上のアリアも弾いてました。バッハは「音楽の父」ですものね。

リベルタンゴ、私は情熱と同時に郷愁を感じるメロディだと思っていたので、その昔、アルゼンチンへ移民した人たちが持って行ったバンドネオンは礼拝に使われるだけでなく、自由な時間には、故郷を思い出して演奏されていたのかなと思いました。

ガリアーノ、来日予定だったんですか。寺井尚子との共演は2011年に「LIBERTANGO IN TOKYO」というCDになってるぶんかしら。寺井尚子はリベルタンゴが得意なんですね。ブルーノートでのカルテットやコバとの共演もあったので、きいてみましたが、私にとって一番なのは、ギドン・クレメールというクラシックヴァイオリンの名手が膝を折り曲げながらリズムをとっての独奏「リベルタンゴ」、アムステルダムのコンセルトヘボウで聞いたぶんです。


by TaekoLovesParis (2022-07-16 00:58) 

TaekoLovesParis

nice&コメントありがとうございます。
▲ナツパパさん、鈴木優人のMCが上手なので、楽しいコンサートでしたよ。
自分でコンサートを企画、MCで進行係、さらに演奏とマルチです。しかも中・高が麻布で芸大。父君は灘高、芸大。ピアノに馴染みがあるナツパパさん、機会があったら、パイプオルガンも聞いてみてください。

▲おとさん、<バッハって実験的でジャズっぽいと言われていますよね^^>
→ そうなんですね。私は聞く、見る、だけで、知らないことが多いんです。
ピアソラ特集、もっともっと聞きたかったです。あっという間に終わってしまいました。楽しい時間はすぐ過ぎますね。

▲cocoさん、チェンバロ+タンゴバンドって組み合わせは、私は初めてでした。今は、クロスオーバー、珍しくない時代ですものね。チェンバロとソプラノサックスは、サックスがきれいな音を丁寧に出すので、チェンバロとの共演はまさにクラシック音楽でした。
アルゼンチン・タンゴ、昔「真珠採りのタンゴ」というのが流行ったのを思い出します。
by TaekoLovesParis (2022-07-16 01:18) 

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