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映画「ゴーギャン タヒチ、楽園への旅」 [映画 (美術関連)]

コロナでの外出自粛の日々、DVDで美術関連の映画を見ました。

ゴーギャンは、ゴッホの耳切り事件の後、ブルターニュ地方のポンタヴェン
に滞在し、仲間と共に制作をした。その後、タヒチ島へ行き2年間暮らした。
パリに戻り、金銭の用意をして、再びタヒチに行き、死ぬまでそこで暮らした。
この映画は、最初のタヒチ滞在の2年間の記録になっている。

ちらし.jpg


株式の仲買人として生計をたて、趣味で絵を描いていたゴーギャンだが、
作品がサロンに入選、画家を本業にしようと考えていた。そんな矢先、
株が大暴落、失職。
1891年、パリのCaféで絵の仲間2人と飲んでいる場面。
「お金がない、絵が売れない」「ドガの友人はポリネシアにツテがあるそうだ」
ゴーギャンは「パリは腐ってる、パリには描くべき顔も風景もない」と叫び、
わずかな資金でも暮らせる南の島ポリネシアのタヒチへ単身向かった。
家族をパリに残したまま。(注:ポリネシアはフランスの植民地)


次はタヒチの場面。
村の店へパリの妻からの手紙を受け取りに来たゴーギャンは、「タヒチには
行きません。実家から帰るように言われてるので、離婚します」という文面
にショックを受け、心臓発作で倒れ、フランス人医師のもとに運ばれた。
糖尿病もあるので入院させられたが、勝手に退院し、一人、馬に乗って川沿い
の道をタラバオ海峡めざして歩く。パパイヤを取って食べ、川では魚を捕まえ
ようとするが上手くいかず、飢えと疲れで倒れ、担ぎ込まれた家の娘、テフラ
に一目惚れ。父親に「テフラが気に入ったなら、連れてっていいよ」と言われ、
一緒に馬に乗り、タラバオへ。道中の景色がのどかで美しい。
「タヒチの風景」

Gauguin_-_Tahitian_Landscape.jpg

海で泳いだり、子供たちと遊んだり、テフラをモデルに絵を描く日々。
テフラにフランス語を教え、テフラから土地の神や風習を習いながら、
2人の楽しい生活。
テフラはゴーギャンのことが大好きなので、モデルをしていても、
ちょっかいを出してきたりする。
みずみずしさが溢れていた。


ある日、フランス人医師が、体調はどうかと尋ねて来た。
描いている途中の絵(下の写真)を見て、「タヒチのヴィーナスだ。美しい!」
と絶賛。ゴーギャンは、「ヴィーナスでなく、イブだよ。原始の女性。野蛮で
あどけなく、美しい。彼女と此処に来て生き返った」と目を輝かせて答える。
「イア オラナ マリア」(マリア礼賛)

il orana maria.jpg

フランス人医師は、描きためてあった絵に見入る。
「メランコリー」(赤い服の女性)
Gauguin_Femme a la robe Rouge.jpg

「アレオイの種」

Gauguinアレオイの種.png


どれもテフラがモデルの絵。
「一日中、絵を描き、周りと調和して暮らしている。最高さ。
でも、パリからの仕送りが来ない」と医師に言う。

パリからの仕送りが来ないので、貧しさが募っていく。
絵を描くカンバスを買えないので、木枠にキャンバス地を貼って自分で制作。
日曜日、白い服で教会から帰る人々を見たテフラが、「白い服がほしい」
と言っても買ってあげられない。
お金を得るために、山で木を切って木彫を作り、観光客に売るが、安く
たたかれて、ほとんど収入にならない。

家に戻ってみると、テフラが蝋燭もつけずにベッドの上で泣いている。
悪い霊が来たと怖がっているのだった。
「マナオ・トゥパパウ」(死霊が見ている)
(The_Spirit_of_the_Dead_Keep_Watch).jpg


こういう暗い場面のあとは、ぱっと明るい海。
村人と一緒に夕食用の魚釣りをするゴーギャン。

テフラが熱を出した。医者が来て「流産だ」と告げる。
「家へ帰りたい、お母さんに会いたい、おばあちゃんに会いたい」と
泣きじゃくるテフラ。力になれないゴーギャン。
絵の具を買うお金もなく、絵が描けないゴーギャンは、病弱の体なのに、
日雇いの力仕事に出ている。流産以来、元気がないテフラ。

医師が、フランスからの召喚状を持って来た。本国に戻らなければならない。
ゴーギャンの健康を案じての措置だった。

「帰国することになった」と告げると、「知ってたわ」とテフラは、
引き出しから絵筆を出し、ゴーギャンに渡し、モデルの椅子に座る。
最後の絵を描く。「テフラの祖先」

G-_Tahamaha_hat_viele_Vorfahren_-_1893.jpg

泣きそうになるのをこらえるテフラ。愛おしいという表情で見つめながら、
絵筆をすすめるゴーギャン。

帰国の港に、テフラは送りに来なかった。じっと港を、今にテフラが来るの
では、と姿を探すゴーギャン。~幕~。

字幕が出る。
パリに持ち帰った41点のタヒチの絵の評価はわかれた。その後、ゴーギャン
はタヒチに戻ったが、テフラには2度と会わなかった。


出演:ヴァンサン・カッセル(ゴーギャン) ツィーイ・アダムス(テフラ)
2017年制作 102分 フランス映画 原題:Gauguin_Voyage de Tahiti


パリで見た「ゴーギャン展」の記事です。回顧展なので、展示作品が多く、
とてもいい展覧会でした。


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コメント 8

coco030705

こんばんは。
ヴァンサン・カッセルが主演だったら、観たいです。よさそうな作品ですね。友達が、私の街の市立図書館に申請したら、望みのDVDを買ってくれると教えてくれました。それで「ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ」、「死と乙女」、「ゴーギャン タヒチ、楽園への旅」の3本を問い合わせてみるつもりです。
by coco030705 (2020-06-03 20:50) 

TaekoLovesParis

cocoさん、ヴァンサン・カッセルは、「ブラック・スワン」では英語でしたが、ここでは、老け込んだ画家です。貧乏で疲弊していく様子を見ていると、気の毒になるほどですから、みごとな演技です。そして、フランス人の年寄りの仕草が上手い。フランス映画は、だいたい100分のものが多いので、疲れません。図書館の利用は、いい考えですね。
by TaekoLovesParis (2020-06-04 01:00) 

Inatimy

最初の写真を見て、おや、ゴッホっぽい、と思ってしまった^^;。 私のゴーギャンのイメージは映画「永遠の門 ゴッホの見た未来」のオスカー・アイザック演ずるゴーギャンの方が近いかな。
画家をテーマにした映画で気になるのは「セザンヌと過ごした時間」。なかなか機会がなくて・・・。
by Inatimy (2020-06-05 23:42) 

ふにゃいの

ゴーギャンの映画なんてあったんですね。
探してみよう。
テフラが気になる…
by ふにゃいの (2020-06-07 10:55) 

TaekoLovesParis

Inatimyさん、<おや、ゴッホっぽい> → 私も同じこと、思いました。
髭と頬から顎への線が私のイメージのゴッホ。「永遠の門 ゴッホの見た未来」、昨年か一昨年、話題になった映画ですね。予告編でオスカー・アイザック扮するバーでパイプをくゆらせるゴーギャンを見ましたが、確かにこちらの方が似てます。私には「黄色いキリストのある自画像」がゴーギャンの顔のイメージだったし、アムスのゴッホ美術館にある「自画像(レミゼラブル)」もそう。ゴーギャンはペルー人の血が入ってるから、顔立ちが骨太ですもの、ヴァンサン・カッセルのほうがイケメン。
何というタイミング、「セザンヌと過ごした時間」、数日前にDVDで見たばかり。近いうちに記事にしますね。
by TaekoLovesParis (2020-06-07 11:27) 

TaekoLovesParis

ふにゃいのさん、場所がタヒチだから、景色が良くて、楽しいです。海のそばに住んだのかと思ったら、タヒチの山の方に住んでたので、景色は山です。
当時、植民地の人にとっては、宗主国のフランス人と結婚することは憧れだったようですが、貧乏絵描きでは、、、テフラも疲れたのでしょうね。でも、ごギャンにとっては、忘れられないミューズ(女神)だったと映画を見るとわかります。
by TaekoLovesParis (2020-06-07 11:33) 

yk2

この映画、ゴーガン著のタヒチ紀行、『ノア・ノア』を読んでから観ようと思ってたんですが、結局読まないうちについ、DVDを手にしてしまいました。

ゴーガンは欲深く自己中心的で高慢な男。そんなイメージを持っていた僕にとって、この映画で描かれる彼のイメージは随分と違ったものでしたねぇ。画家たちが共に助け合って暮らす理想郷を夢見たゴッホとの共同生活に終止符を打ったのも、そんな事では生活していけないと云う冷徹な判断、物質欲から来るものと思っていました。それなのに、タヒチに渡っての赤貧生活。日雇い仕事に漁師の真似事までして妻テフラを養うために日銭を求め、絵などまるで描けない日々。我が強いどころか、自分の無力に打ちひしがれ、テフラを寝取られ怒りにまかせて銃を持っても、結局は為す術も無い。ひたすら孤独で、寂しい男だったんですねぇ。身につまされます(^^;。
by yk2 (2020-06-08 22:18) 

TaekoLovesParis

yk2さん、「ノアノア」は、ゴーガンのタヒチ紀行文だったんですね。私は表紙の絵が現地の神の木彫だったので、勝手に、現地の神々や呪いのことが書いてある本かと勘違いしてました。この映画で示されているテフラとの日々のことを綴った本なのですね。だったら、読みたいです。
yk2さんは、私よりよっぽど上手にあらすじを書いてくださってるわ。演じる俳優にもよるのでしょうけれど、この映画でのゴーギャンは、新しい芸術を生み出せると信じて単身タヒチに移住したものの、想いに身体がついていけず、精神力だけでがんばる姿、「黄色いキリストがある自画像」から感じられる傲慢さは微塵もなかったですね。
テフラへの愛から日々が楽しくなっていく辺りでは、ほっとしましたが、仕送りが途絶え、お金に不自由し始めてからは哀れな生活。木彫を観光客に売ろうと、若い子に教え、同じものを作るな、独創性を大切にと指導しても通じないし、売れば値段を叩かれる。そしてテフラの心も少しずつ離れ、、。
終始一貫して、絵への情熱が伝わってきましたね。そして山々や森、海、自然に恵まれたタヒチの景色が、いい感じでした。
ん?身につまされるって、そんなことないでしょう。withコロナで寂しく孤独になってるだけですよ。
by TaekoLovesParis (2020-06-09 13:30) 

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